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第75話 同業者の警告
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「て、てめえ!!離しやがれっ!?」
「ひいっ!?」
「ハルナ、邪魔しないで!!」
「もう、喧嘩は駄目だってば!!」
「はあっ……何なんだこの人達」
「ウォンッ」
ガイアとヒカゲは自分達を拘束したハルナとダインに怒鳴るが、そんな二人を見てレノはため息を吐き出す。ヒカゲの力ではハルナに敵わず、ガイアも巨人族といえどもダインの影魔法は力で振りほどけず、二人は文句を言うことしかできない。
喧嘩を止めたのはいいがここからが問題であり、このまま放しても二人は再び戦い始めるのは目に見えている。そこでレノは二人が抑えられている内に話を行う。
「ヒカゲさん、いい加減にしてください。ここに犯人が来ていたとしたら何か手がかりが残っているかもしれないのに、暴れられたら痕跡が消えちゃうかもしれないんですよ」
「むうっ……」
「そっちの貴方も乱暴な真似は辞めてください」
「何が乱暴だ!!喧嘩を売ってきたのはそのガキだろうがっ!!」
「でも先に挑発したのは貴方でしょう?」
「な、何だと!?」
レノは巨人族のガイアを前にしても怖気ずに言い返すと、ガイアは驚いた表情を浮かべた。大抵の一般人は彼に怒鳴られると体格差と彼の強面のせいで怖気づいて逃げ出してしまうが、レノは全く怯えた様子もなく言い返す。
「ヒカゲさんも急に斬りかかるなんて何を考えてるんですか?俺を捕まえた時も状況証拠だけで犯人と決めつけましたよね?まさか自分がすることが何でも正しいと思ってるんですか?」
「……私が動けないからって調子に乗ってる?」
「調子に乗ってるのはどっちですか!?」
「レ、レノ君!?」
ヒカゲは自分に説教をするレノに不満げな表情を浮かべるが、レノとしては怒らずにはいられなかった。最初に出会った時も犯人と疑われて散々な目に遭わされており、ヒカゲに大しては言いたいことはいくらでもあった。
「ともかく、今からここに警備兵呼んで調べて貰います!!犯人の手掛かりが残っているかもしれないのに現場を荒すような真似はしないでください!!そっちの貴方も分かりましたか?」
「お、おう……」
「……仕方ない」
「す、すげぇっ……」
「レノ君、格好いい……」
「ウォンッ!!」
レノの迫力にガイアとヒカゲは呆気に取られ、そんな彼にダインとハルナは感心した――
――その後、殺人現場を調べていた警備兵を呼び出してレノ達は犯人が居たと思われる場所の調査を頼む。ウルが殺された被害者の血の臭いを辿って辿り着いた場所なので有力な手掛かりが残っているかもしれず、兵士達が調べている間にレノはガイアと話をする。
「じゃあ、あの場所は本当にガイアさんが休憩場所に使ってたんですか?」
「ああ、それは嘘じゃねえ。俺はこんなガタイだから何処に行っても一般人に目を付けられるからな。だから人気のない場所でしか気が休まらないんだよ」
「なるほど……確かにあそこなら巨人族でも隠れられますからね」
「凄いなあいつ……普通に話してるぞ」
「……ダインこそハルナの後ろに隠れてないで話して来たら?」
「ぼ、僕は良いよ……」
「ウルちゃん、お腹空いてない?私のお菓子食べる?」
「クゥ~ンッ」
レノはガイアと普通に話している光景にダインはハルナの後ろに隠れながら様子を伺い、そのハルナはウルに自分のお菓子を分け与えていた。ヒカゲは現場を調べている警備兵の様子を伺いながら時々レノに視線を向けていた。
「それにしても坊主、俺が怖くないのか?見たところまだガキだろ?」
「別に……最初に見た時は驚きましたけど、怖いとは思いませんでしたよ」
「変わったガキだな……だが、根性がある奴は嫌いじゃねえ。気に入ったぜ!!」
「うわっ!?」
ガイアは自分に全く怖気づかないレノを気に入って彼の背中を叩く。体格と腕力に違いがあり過ぎてレノは危うく路地裏の壁に叩きつけられそうになったが、どうにか踏み止まる。
犯人が居たと思われる現場にガイアが現れたのは彼の話によると本当に偶然らしく、路地裏の奥の空き地は彼が普段から休憩所に利用していた。巨人族であるガイアは一人になりたい時はいつも空き地に訪れていたらしい。
「そっちのチビガキも悪かったな。そこの空き地は俺にとっては唯一心が休まる場所だったんだ。だから他の奴が居るのを見ると落ち着いて休めないから、つい冷たく当たっちまった」
「そ、そういう理由があるのなら俺達は気にしませんよ。なあ、ハルナ!?」
「え?あ、ごめん。何か話してた?」
「クゥ~ンッ」
「……私は別に気にしていない」
ガイアの謝罪にダインは冷や汗をかきながらハルナに話しかけるが、彼女はウルにお菓子を与えるのに夢中で話を聞いていなかった。その一方でヒカゲは振り向きもせずに言葉を返す。
(皆真面目に話聞いてなかったな……でも、この人は犯人とは思えないんだよな)
レノはガイアの外見を見てどう見ても殺人事件の犯人とは思えず、これだけ目立つ姿をしていれば殺人を犯した時に目撃者がいないはずがない。彼が犯人が最後に居たと思われる場所に来たのも偶然なのだろう。
「あの……ガイアさんは空き地によく来てたんですよね。何か変わった所はありますか?」
「変わった所?そんなもんはねえよ、この空き地は別に何もないからな……」
路地裏の奥の空き地にはガイアも頻繁に訪れていたが、彼によると空き地はいつも通りで何も変化はないらしい。そもそも空き地には何も物は置かれておらず、警備兵が調査しているが今の所は手掛かりが見つかりそうにない。
「申し訳ございません、隈なく調べてみましたが何も見つかりませんでした……」
「そう……なら仕方ない」
「結局ここには何もなかったのか……」
「ウルちゃんが折角見つけれくれたのにね~」
「クゥンッ……」
警備兵が空き地内を調べ回ったが結局は犯人の手掛かりは見つからず、仕方なく退散することになった。殺された被害者の血の臭いはここで途切れており、恐らく犯人がこの場所に来て殺しの痕跡を消してから逃げたことは間違いないが、その後の足取りが掴めない。
(くそっ、ここまでか……犯人はどうやってここから逃げたんだ?)
空き地に犯人が逃げ込んだのは間違いないが、その後に犯人はどうやって空き地を抜け出したのかレノは気になった。路地裏を通り抜けて犯人が逃げ出したのならばウルが臭いを辿れるはずだが、犯人の臭いは空き地で完全に途絶えていた。
「ウル、本当に臭いはここまでしか残っていないのか?」
「ウォンッ!!」
念のためにレノはウルにもう一度だけ空き地を調べてもらうが、彼は空き地の中央に移動すると犯人の臭いが消えていることを示す。犯人がこの場所で何らかの方法で臭いを消したのか、あるいは臭いが残らない方法で空き地を抜け出したのかもしれない。
犯人の臭いが途切れた場所にレノは立つと、周囲を見渡して状況の確認を行う。この時のレノは空き地を取り囲む建物の大きさを確認し、一番小さな建物でも地上から10メートル以上の高さはあった。
(もしかして犯人は屋根に逃げたのか?だとすると相当に身軽な人物だぞ……それとも何か道具を使って屋根の上に移動した?)
仮にレノが強化術を使用しても飛び上がれない程の建物の高さはあり、どうやって犯人は跳び越えたのかと考えていると、ここでレノは建物の壁を見てあることに気が付く。
「あれ?もしかして……ガイアさん!!ちょっと手伝ってくれますか!?」
「あん?」
壁を見て違和感を抱いたレノはガイアを呼び出し、彼の力を借りて壁を調べる方法を伝えた。
「ひいっ!?」
「ハルナ、邪魔しないで!!」
「もう、喧嘩は駄目だってば!!」
「はあっ……何なんだこの人達」
「ウォンッ」
ガイアとヒカゲは自分達を拘束したハルナとダインに怒鳴るが、そんな二人を見てレノはため息を吐き出す。ヒカゲの力ではハルナに敵わず、ガイアも巨人族といえどもダインの影魔法は力で振りほどけず、二人は文句を言うことしかできない。
喧嘩を止めたのはいいがここからが問題であり、このまま放しても二人は再び戦い始めるのは目に見えている。そこでレノは二人が抑えられている内に話を行う。
「ヒカゲさん、いい加減にしてください。ここに犯人が来ていたとしたら何か手がかりが残っているかもしれないのに、暴れられたら痕跡が消えちゃうかもしれないんですよ」
「むうっ……」
「そっちの貴方も乱暴な真似は辞めてください」
「何が乱暴だ!!喧嘩を売ってきたのはそのガキだろうがっ!!」
「でも先に挑発したのは貴方でしょう?」
「な、何だと!?」
レノは巨人族のガイアを前にしても怖気ずに言い返すと、ガイアは驚いた表情を浮かべた。大抵の一般人は彼に怒鳴られると体格差と彼の強面のせいで怖気づいて逃げ出してしまうが、レノは全く怯えた様子もなく言い返す。
「ヒカゲさんも急に斬りかかるなんて何を考えてるんですか?俺を捕まえた時も状況証拠だけで犯人と決めつけましたよね?まさか自分がすることが何でも正しいと思ってるんですか?」
「……私が動けないからって調子に乗ってる?」
「調子に乗ってるのはどっちですか!?」
「レ、レノ君!?」
ヒカゲは自分に説教をするレノに不満げな表情を浮かべるが、レノとしては怒らずにはいられなかった。最初に出会った時も犯人と疑われて散々な目に遭わされており、ヒカゲに大しては言いたいことはいくらでもあった。
「ともかく、今からここに警備兵呼んで調べて貰います!!犯人の手掛かりが残っているかもしれないのに現場を荒すような真似はしないでください!!そっちの貴方も分かりましたか?」
「お、おう……」
「……仕方ない」
「す、すげぇっ……」
「レノ君、格好いい……」
「ウォンッ!!」
レノの迫力にガイアとヒカゲは呆気に取られ、そんな彼にダインとハルナは感心した――
――その後、殺人現場を調べていた警備兵を呼び出してレノ達は犯人が居たと思われる場所の調査を頼む。ウルが殺された被害者の血の臭いを辿って辿り着いた場所なので有力な手掛かりが残っているかもしれず、兵士達が調べている間にレノはガイアと話をする。
「じゃあ、あの場所は本当にガイアさんが休憩場所に使ってたんですか?」
「ああ、それは嘘じゃねえ。俺はこんなガタイだから何処に行っても一般人に目を付けられるからな。だから人気のない場所でしか気が休まらないんだよ」
「なるほど……確かにあそこなら巨人族でも隠れられますからね」
「凄いなあいつ……普通に話してるぞ」
「……ダインこそハルナの後ろに隠れてないで話して来たら?」
「ぼ、僕は良いよ……」
「ウルちゃん、お腹空いてない?私のお菓子食べる?」
「クゥ~ンッ」
レノはガイアと普通に話している光景にダインはハルナの後ろに隠れながら様子を伺い、そのハルナはウルに自分のお菓子を分け与えていた。ヒカゲは現場を調べている警備兵の様子を伺いながら時々レノに視線を向けていた。
「それにしても坊主、俺が怖くないのか?見たところまだガキだろ?」
「別に……最初に見た時は驚きましたけど、怖いとは思いませんでしたよ」
「変わったガキだな……だが、根性がある奴は嫌いじゃねえ。気に入ったぜ!!」
「うわっ!?」
ガイアは自分に全く怖気づかないレノを気に入って彼の背中を叩く。体格と腕力に違いがあり過ぎてレノは危うく路地裏の壁に叩きつけられそうになったが、どうにか踏み止まる。
犯人が居たと思われる現場にガイアが現れたのは彼の話によると本当に偶然らしく、路地裏の奥の空き地は彼が普段から休憩所に利用していた。巨人族であるガイアは一人になりたい時はいつも空き地に訪れていたらしい。
「そっちのチビガキも悪かったな。そこの空き地は俺にとっては唯一心が休まる場所だったんだ。だから他の奴が居るのを見ると落ち着いて休めないから、つい冷たく当たっちまった」
「そ、そういう理由があるのなら俺達は気にしませんよ。なあ、ハルナ!?」
「え?あ、ごめん。何か話してた?」
「クゥ~ンッ」
「……私は別に気にしていない」
ガイアの謝罪にダインは冷や汗をかきながらハルナに話しかけるが、彼女はウルにお菓子を与えるのに夢中で話を聞いていなかった。その一方でヒカゲは振り向きもせずに言葉を返す。
(皆真面目に話聞いてなかったな……でも、この人は犯人とは思えないんだよな)
レノはガイアの外見を見てどう見ても殺人事件の犯人とは思えず、これだけ目立つ姿をしていれば殺人を犯した時に目撃者がいないはずがない。彼が犯人が最後に居たと思われる場所に来たのも偶然なのだろう。
「あの……ガイアさんは空き地によく来てたんですよね。何か変わった所はありますか?」
「変わった所?そんなもんはねえよ、この空き地は別に何もないからな……」
路地裏の奥の空き地にはガイアも頻繁に訪れていたが、彼によると空き地はいつも通りで何も変化はないらしい。そもそも空き地には何も物は置かれておらず、警備兵が調査しているが今の所は手掛かりが見つかりそうにない。
「申し訳ございません、隈なく調べてみましたが何も見つかりませんでした……」
「そう……なら仕方ない」
「結局ここには何もなかったのか……」
「ウルちゃんが折角見つけれくれたのにね~」
「クゥンッ……」
警備兵が空き地内を調べ回ったが結局は犯人の手掛かりは見つからず、仕方なく退散することになった。殺された被害者の血の臭いはここで途切れており、恐らく犯人がこの場所に来て殺しの痕跡を消してから逃げたことは間違いないが、その後の足取りが掴めない。
(くそっ、ここまでか……犯人はどうやってここから逃げたんだ?)
空き地に犯人が逃げ込んだのは間違いないが、その後に犯人はどうやって空き地を抜け出したのかレノは気になった。路地裏を通り抜けて犯人が逃げ出したのならばウルが臭いを辿れるはずだが、犯人の臭いは空き地で完全に途絶えていた。
「ウル、本当に臭いはここまでしか残っていないのか?」
「ウォンッ!!」
念のためにレノはウルにもう一度だけ空き地を調べてもらうが、彼は空き地の中央に移動すると犯人の臭いが消えていることを示す。犯人がこの場所で何らかの方法で臭いを消したのか、あるいは臭いが残らない方法で空き地を抜け出したのかもしれない。
犯人の臭いが途切れた場所にレノは立つと、周囲を見渡して状況の確認を行う。この時のレノは空き地を取り囲む建物の大きさを確認し、一番小さな建物でも地上から10メートル以上の高さはあった。
(もしかして犯人は屋根に逃げたのか?だとすると相当に身軽な人物だぞ……それとも何か道具を使って屋根の上に移動した?)
仮にレノが強化術を使用しても飛び上がれない程の建物の高さはあり、どうやって犯人は跳び越えたのかと考えていると、ここでレノは建物の壁を見てあることに気が付く。
「あれ?もしかして……ガイアさん!!ちょっと手伝ってくれますか!?」
「あん?」
壁を見て違和感を抱いたレノはガイアを呼び出し、彼の力を借りて壁を調べる方法を伝えた。
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