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記念ショートストーリー
SS1−4 ぽちの優雅(?)な一日(漫画一巻発売記念)
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◆夕刻、閉店作業の闖入者
「よし、お客さんもいなくなったし閉店っと」
小さなカウンターにクローズドの立て札を置いて、ようやくとベルは肩の力を抜く。
「ぽち、今日も警備ごくろうさま。すっごく心強かったよ!」
「わん」
ベルによしよしと頭を撫でられたぽちは、尻尾をぶんぶんと元気に振る。
さてと、と腕まくりしたベルは、店内を見回し忘れ物などないかを確認してから、椅子を上げてざっと石床をモップがけする。
いざ閉店と言っても、作業は残っているものだ。
洗い切れていない食器やカトラリーの洗浄と、在庫チェック、店内清掃に火元の確認に、今日の売り上げのざっくり勘定など。
大金を持っていても不用心なので、本日の売り上げを簡単に記したメモと共に直属の上司であるヴィボに渡すまでが、毎回のルーチンである。
なにせ、甘味処はベルの店でなく、あくまで食事処のおまけ扱いでしかなかったのだ。
「あれ、もう閉店なの? 早くない」
そんな声と共に、ふわふわ緑髪の魔術師が閉店間もない甘味処にやってくる。
掃除の邪魔にならないようにと隅で寝ていたぽちは、ぴくりと耳を動かし、次いで目を見開いて、魔術師の姿を認めると爪音を立てながらベルの横へと歩いてきた。
理由はこの緑髪の愉快犯的魔術師に対しての監視である。
「あ、オーラフさん。そうなんですよー。なんだかどんどん閉店時間が早くなっちゃって。一応、それなりに量は作ってるんですけどね」
モップで床を拭く手を休め、ベルがそう言うと彼はぶーぶーと文句を言いはじめた。
「えー、どうせ試作中のとか魔法袋にあるでしょ? それ頂戴よお金払うし。あ、レインの分もね」
と言う彼の投げかけた視線を追うと、そこには青髪を肩口で切り揃えたクールな表情の青年魔術師の姿があった。
「そうやって巻き込むな。私まで意地汚いようじゃないか」
「まあまあー。レインもダンジョン巡りで疲れてるし、甘いものほしいでしょー?」
「それは……まあ、そうだが。ベル殿が困るだろう」
いつも、へらへらしているようで鋭いオーラフ。レインはクールな表情を珍しくしかめ顔にする。
そんな二人を見て困ったような顔をするベルは、とりなすように魔法袋から焼き菓子を取り出した。
「ええと、今試作中のドライフルーツ入り硬焼きクッキーならば……お代は結構ですので、お二人とも、酒場の方でゆっくりお話なさってはいかがですか」
控えめに言って、閉店作業の邪魔だ。言外にそう言い放つとオーラフが笑う。
「あはは、流石はベルちゃん。魔術師相手でも言うねー。はいはい分かりました、お兄さん達はあっちでお話するねー。ところで、お茶は」
「でません」
「ですよねー」
「ほら、邪魔をするんじゃない。ベル殿、いつもオーラフが無理を言って済まない」
「いえいえ、レインさん「は」 良いお客様ですから」
「えー酷くないその扱い」
と、二人分のドライフルーツ入りクッキーを受け取ったオーラフは、レインに背を押されて甘味処を去っていく。
ぽちは騒がしい二人が出て行ったことでようやく警戒を解く。
この二人組、レインは別にいいのだ。ベルを丁寧に扱うし常に一線を保ってこちらに深く触れようとしない。彼はとても良い隣人だ。
だが、オーラフは別だ。彼はベルの魔力コントロールの教師としてベル特別扱いするのだが、時にベルを試すような素振りもする。正直いって、ぽちは彼の事をどう扱うべきか測りかねていた。怪しいような、良い人のような……。
「はあ……ようやく閉店作業を続けられる……王都のお偉いさんとなると、やっぱり緊張するよね、ぽち」
「わふん?」
ぽちはベルの言葉に首を傾げ青い目を瞬かせる。王都の偉い人と言われても、ぽちには良く分からないからだ。
ところでオーラフ曰く、王都の魔術師というものは、単独では動かないのだという。
魔力を持つ者が極端に減った現代。魔術師は国の宝とも言える存在ゆえに、無法者からは時に人身売買の対象とされるのだと。そこで、二人以上で行動する事が義務づけられているそうだ。
そして、離せない間柄の主従は当然組まされるものだろうとも。
確かに、魔術師二人を相手して、まず勝てる者はいないだろうとベルは感心したのだった。魔力膜というバリアーに、風や水、炎といった超常的な魔術に魔力のない人が打ち勝てる訳もない。片方が魔力回復している間にもう片方が魔術で対抗すればいいわけで、とても理にかなっている。
「よーし、片づけ終わり。さあ、ヴィボさんに報告してから帰ろっか、ぽち」
「わん!」
ぽちはベルの言葉に大きく尻尾を振った。
「よし、お客さんもいなくなったし閉店っと」
小さなカウンターにクローズドの立て札を置いて、ようやくとベルは肩の力を抜く。
「ぽち、今日も警備ごくろうさま。すっごく心強かったよ!」
「わん」
ベルによしよしと頭を撫でられたぽちは、尻尾をぶんぶんと元気に振る。
さてと、と腕まくりしたベルは、店内を見回し忘れ物などないかを確認してから、椅子を上げてざっと石床をモップがけする。
いざ閉店と言っても、作業は残っているものだ。
洗い切れていない食器やカトラリーの洗浄と、在庫チェック、店内清掃に火元の確認に、今日の売り上げのざっくり勘定など。
大金を持っていても不用心なので、本日の売り上げを簡単に記したメモと共に直属の上司であるヴィボに渡すまでが、毎回のルーチンである。
なにせ、甘味処はベルの店でなく、あくまで食事処のおまけ扱いでしかなかったのだ。
「あれ、もう閉店なの? 早くない」
そんな声と共に、ふわふわ緑髪の魔術師が閉店間もない甘味処にやってくる。
掃除の邪魔にならないようにと隅で寝ていたぽちは、ぴくりと耳を動かし、次いで目を見開いて、魔術師の姿を認めると爪音を立てながらベルの横へと歩いてきた。
理由はこの緑髪の愉快犯的魔術師に対しての監視である。
「あ、オーラフさん。そうなんですよー。なんだかどんどん閉店時間が早くなっちゃって。一応、それなりに量は作ってるんですけどね」
モップで床を拭く手を休め、ベルがそう言うと彼はぶーぶーと文句を言いはじめた。
「えー、どうせ試作中のとか魔法袋にあるでしょ? それ頂戴よお金払うし。あ、レインの分もね」
と言う彼の投げかけた視線を追うと、そこには青髪を肩口で切り揃えたクールな表情の青年魔術師の姿があった。
「そうやって巻き込むな。私まで意地汚いようじゃないか」
「まあまあー。レインもダンジョン巡りで疲れてるし、甘いものほしいでしょー?」
「それは……まあ、そうだが。ベル殿が困るだろう」
いつも、へらへらしているようで鋭いオーラフ。レインはクールな表情を珍しくしかめ顔にする。
そんな二人を見て困ったような顔をするベルは、とりなすように魔法袋から焼き菓子を取り出した。
「ええと、今試作中のドライフルーツ入り硬焼きクッキーならば……お代は結構ですので、お二人とも、酒場の方でゆっくりお話なさってはいかがですか」
控えめに言って、閉店作業の邪魔だ。言外にそう言い放つとオーラフが笑う。
「あはは、流石はベルちゃん。魔術師相手でも言うねー。はいはい分かりました、お兄さん達はあっちでお話するねー。ところで、お茶は」
「でません」
「ですよねー」
「ほら、邪魔をするんじゃない。ベル殿、いつもオーラフが無理を言って済まない」
「いえいえ、レインさん「は」 良いお客様ですから」
「えー酷くないその扱い」
と、二人分のドライフルーツ入りクッキーを受け取ったオーラフは、レインに背を押されて甘味処を去っていく。
ぽちは騒がしい二人が出て行ったことでようやく警戒を解く。
この二人組、レインは別にいいのだ。ベルを丁寧に扱うし常に一線を保ってこちらに深く触れようとしない。彼はとても良い隣人だ。
だが、オーラフは別だ。彼はベルの魔力コントロールの教師としてベル特別扱いするのだが、時にベルを試すような素振りもする。正直いって、ぽちは彼の事をどう扱うべきか測りかねていた。怪しいような、良い人のような……。
「はあ……ようやく閉店作業を続けられる……王都のお偉いさんとなると、やっぱり緊張するよね、ぽち」
「わふん?」
ぽちはベルの言葉に首を傾げ青い目を瞬かせる。王都の偉い人と言われても、ぽちには良く分からないからだ。
ところでオーラフ曰く、王都の魔術師というものは、単独では動かないのだという。
魔力を持つ者が極端に減った現代。魔術師は国の宝とも言える存在ゆえに、無法者からは時に人身売買の対象とされるのだと。そこで、二人以上で行動する事が義務づけられているそうだ。
そして、離せない間柄の主従は当然組まされるものだろうとも。
確かに、魔術師二人を相手して、まず勝てる者はいないだろうとベルは感心したのだった。魔力膜というバリアーに、風や水、炎といった超常的な魔術に魔力のない人が打ち勝てる訳もない。片方が魔力回復している間にもう片方が魔術で対抗すればいいわけで、とても理にかなっている。
「よーし、片づけ終わり。さあ、ヴィボさんに報告してから帰ろっか、ぽち」
「わん!」
ぽちはベルの言葉に大きく尻尾を振った。
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