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五章 毎日、毎日、貴方を好きになる。
十九話 食欲の秋、あるいは友の襲来
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間抜けな形で披露してしまった、秘密のような、特に秘密でなかった話。
とはいえ、素人のニット作品とリッコ専属のニット作品では扱いが違って当然である……と。
そんな理由を付け、秋も終わりかけの時期に、店の半分を改装中の故郷に友人がやって来た。
「わー、本当にリッコだ、サイン下さい!」
「……伊都、この子誰」
律儀に手帳にサインしてやりながら、リッコは伊都へ聞く。
その格好はトーン抑えめのトレンチとボリュームのあるトップスに、明るめな青のスキニージーンズ、足下を革のレースシューズと、流行をところどころに取り入れて纏めている。極めてシンプルでありながらそのシルエットの美しさときたら際立っていて、一見して只者でないと分かる。
田舎町にそんな垢抜けて洗練された人が現れたのだから、伊都が駅から案内する道中、恐ろしく目立っていた。
「彼女は幼なじみの奈々よ。そして、こちらが白銀さん」
「初めまして、お噂はかねがね」
「ふーん。伊都が彼氏連れとは驚いた」
リッコは大して驚いたようでもない平板な声で呟き、紳士な笑みを浮かべ軽く頭を下げる白銀をジロジロと眺める。
そんな友人を伊都は窘める。
「ちょっと、リッコ。今日は友人を連れてくるって言ったでしょ」
「友人? 男嫌いのあんたが男の友人ね。まあ、それでもいいけど」
「リッコ」
いつもながら、この人物は扱いづらい。
奥の目立たない位置にロールカーテンをおろして席を作って貰い、四人が座る。
「伊都はいつも初動が遅いと自分は思う」
「やって来ていきなり何を言い出すの」
友人の言葉に、伊都は分かりやすく顔を顰めた。
「だって、伊都は二ヶ月以上ブログは更新しないし、この店の出品の事もなかなか自分に話さなかった。友達甲斐のない奴だ」
「それは、まあ悪かったと思うけれど……」
サングラスに中折れ帽子、そして高身長を引き立たせるトレンチコート。
一体、何処の探偵だというある意味分かりやすい変装道具を付けて故郷にやって来たのは、学生時代の友人でモデルのリッコだ。
その姿はすらりと背が高くスレンダーな、まさしくモデル体型の性別不明な美形。
「まあ兎に角。伊都と話し合う事が出来たから来た。こいつとは、これでも七年近い付き合いがある。昔から色々と注文付けて作らせていた関係?」
「ほう」
白銀が興味深そうにリッコを見る。
「自分の専属が話題になってた事は知っているが、伊都の事は、別に誰に隠してた訳でも何でもない。面倒だから言わなかっただけ」
「面倒! 理由がさりげなく酷いね」
「伊都の友人、正しい」
奈々の突っ込みにリッコは真顔で頷いた。
「えっ、この人素直に認めたよ?」
リッコの率直とも素直とも取れる言葉に、奈々は珍しく戸惑う様子を見せる。
とはいえ、素人のニット作品とリッコ専属のニット作品では扱いが違って当然である……と。
そんな理由を付け、秋も終わりかけの時期に、店の半分を改装中の故郷に友人がやって来た。
「わー、本当にリッコだ、サイン下さい!」
「……伊都、この子誰」
律儀に手帳にサインしてやりながら、リッコは伊都へ聞く。
その格好はトーン抑えめのトレンチとボリュームのあるトップスに、明るめな青のスキニージーンズ、足下を革のレースシューズと、流行をところどころに取り入れて纏めている。極めてシンプルでありながらそのシルエットの美しさときたら際立っていて、一見して只者でないと分かる。
田舎町にそんな垢抜けて洗練された人が現れたのだから、伊都が駅から案内する道中、恐ろしく目立っていた。
「彼女は幼なじみの奈々よ。そして、こちらが白銀さん」
「初めまして、お噂はかねがね」
「ふーん。伊都が彼氏連れとは驚いた」
リッコは大して驚いたようでもない平板な声で呟き、紳士な笑みを浮かべ軽く頭を下げる白銀をジロジロと眺める。
そんな友人を伊都は窘める。
「ちょっと、リッコ。今日は友人を連れてくるって言ったでしょ」
「友人? 男嫌いのあんたが男の友人ね。まあ、それでもいいけど」
「リッコ」
いつもながら、この人物は扱いづらい。
奥の目立たない位置にロールカーテンをおろして席を作って貰い、四人が座る。
「伊都はいつも初動が遅いと自分は思う」
「やって来ていきなり何を言い出すの」
友人の言葉に、伊都は分かりやすく顔を顰めた。
「だって、伊都は二ヶ月以上ブログは更新しないし、この店の出品の事もなかなか自分に話さなかった。友達甲斐のない奴だ」
「それは、まあ悪かったと思うけれど……」
サングラスに中折れ帽子、そして高身長を引き立たせるトレンチコート。
一体、何処の探偵だというある意味分かりやすい変装道具を付けて故郷にやって来たのは、学生時代の友人でモデルのリッコだ。
その姿はすらりと背が高くスレンダーな、まさしくモデル体型の性別不明な美形。
「まあ兎に角。伊都と話し合う事が出来たから来た。こいつとは、これでも七年近い付き合いがある。昔から色々と注文付けて作らせていた関係?」
「ほう」
白銀が興味深そうにリッコを見る。
「自分の専属が話題になってた事は知っているが、伊都の事は、別に誰に隠してた訳でも何でもない。面倒だから言わなかっただけ」
「面倒! 理由がさりげなく酷いね」
「伊都の友人、正しい」
奈々の突っ込みにリッコは真顔で頷いた。
「えっ、この人素直に認めたよ?」
リッコの率直とも素直とも取れる言葉に、奈々は珍しく戸惑う様子を見せる。
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