編み物魔女は、狼に恋する。〜編み物好きOLがスパダリ狼さんに夢と現実で食べられる話。

兎希メグ/megu

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七章 間章 目を覚ませば、そこは見慣れた。

十七話 目を覚ませば、そこは見慣れた。

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 おかしな人……いやフクロウに会い、散々だった散歩を終えて、巣穴に帰ってきた。
 細々とした用事を終えてベッドに入ると、伊都は今日の事を考える。

(何だか全然よく分からなかったけれど、彼が白銀さんの言う悪友、なのよね?)
 確かに、凄い個性的な人だったなと思う。
 大好きな絵本の作者だと、喜ぶ間もなかった。
(また会おう、とは言われたけれど、正直会いたくはないわ)
 何せ、伊都はアクの強い人が苦手だ。本人が大人しい性格ということもあってか、基本的に穏やかで素朴な性格の人といる方がほっとする。
 その割には、白銀も含め、周りには個性的な人物が多いが。

(現実で、あんな風にインタビューなんて受けたら、逃げるわよ私)
 ベッドの上でころりと転がりながら、伊都は小さくため息を吐く。
 あの調子で現実でも根ほり葉ほりとやられたら、とてつもないストレスになりそうだ。

(それにしても……世界の真実、か)
 何やら壮大すぎる話だ。
 絵本の作者だからこそ、彼は何か、この共有する夢の事を知っている、ということなのだろうか。
(いいえ。私が想像したところで当たらないに決まってるわ。何せ、SFもファンタジーも全然知識がないし)
 普段は地元のフリーペーパーを読んで新しい店を開拓するのと、献立の参考にレシピが載っているような生活情報誌を購読するような、基本的に生活感溢れる読書体験が主の人間だ。
 絵本はというのは現実的な伊都にとっては特別な創作物で、日々の癒し、夢の塊のようなものなのである。
(うーん、やっぱり全然、想像力のない私では彼の言うことが分からない)
 唐突に現れたフクロウの言葉に惑わされ、伊都は煩悶する。

(まあ、それはそれとして、随分こちら側に長く居すぎたわ。初めの時のように、数時間のうたた寝のうちに起きられたならいいけど……きっと、そうではないのよね?)
 フクロウが意味ありげに言った、現実逃避はやめろ、というヒント。
(うん、やっぱり、起きる努力はすべきだわ)
 伊都は、あの風変わりなフクロウの忠告に、真面目に向き合う事にした。


 起きよう、起きようと念じて巣穴のベッドで寝た伊都は、翌日の朝、見慣れた天井を見上げて自室のベッドから起きあがった。

「……ここって、実家、よね?」

 どういうこと? と、首を傾げていたら。
「あら良かったわ。おはよう、お寝坊さん」
 と、ドアの方から声がした。
「お母さん」
 伊都か呼びかけると、その人はにこりと笑みを浮かべる。
「私、どうしてここに?」
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