抱きたい。抱かれたい。

Lopeared

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貴方が望むなら……

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 今頃ルーシーは誰と踊っているのだろう……。
何人の男が彼女の美しさに見とれて、声をかけるのか……。

 ベッドに横になりながら下唇を噛むセト。
誰よりも彼女を抱きたいと思っているのに、呪われた体では子供をつくれない。
女の幸せを、繁栄をルーシーに与えてやれない……そればかりを自身に言い聞かせ続ける。

 目を瞑り寝ようとするのだが、嫉妬心が涌き出て寝付けない……。
そんな時により目を覚まさせようとする激しく叩かれる店の扉。
とうに店じまいを終えて鍵をしめている。

『誰だこんな夜更けに……酔っぱらいか?』

 非常識な訪問時間に無視を決めこもうとしたが、あまりにも激しく叩くので急病人かもしれぬと体を起こし店の扉を開くとそこには意識朦朧のルーシーを抱えたディノッゾが額に汗を浮かべ青い顔をして立っていた。

「俺が付いていながら……すみません!」

「ーー!」

 ディノからルーシーを奪い額同士を当てて熱をはかろうとしたらセトの名前を聞こえるか聞こえないかの小さな声で呟きながらセトの首筋に口づけを繰り返すルーシー。
その行為から視線をそらすディノッゾ。

 ルーシーの部屋には専門書など無いのでセトの部屋に連れて行き彼のベッドに横たえ軽く検診する。
微熱があり、呼吸が荒く、酩酊のような状態。
吐き気、発疹、大きな外傷は無し……何が原因なんだ……。

 ディノから祭りでの話をきく。
屋台から出てしばらくして暑さと気だるさを訴えはじめたルーシー。
変な物を口にしたか、飲み物にアレルギーがあったのかもしれないと水を飲ませてから咽頭に指を入れて胃の中のものを吐き出させたのだが症状が良くならなかったらしい。

「知る限りで良い、何を口にしていた?」
「ブラッドオレンジのジュースぐらい……あ! ルーシーは屋台のおっさんからリンゴ飴貰ってました」
「……あっ!」

 何かに気づいたセトがルーシーの両の手のひらを見ると右手の親指と人差し指にみみず腫の痕。
その部分の匂いを嗅ぐとサンダルウッドと乳香、果実が合わさったような癖のある甘い香り。

「禁断の果実とか……聖なる書物に載っているだろう。あれと類似する物なんだが……」
「おまけのリンゴ飴が原因ですか? 吐き出せなかったのかな?」

 セトは本棚から前店主の樹木の記録を取り出して『祭り時期の警告』と記されたページを開きディノに見せる。

『リリスの樹の枝による強姦被害』
○リリスの樹……催淫作用、酩酊
特長として強芳香、接触によるかぶれ。

 ーー果実などの串に使われる事が多い。
毒味として男が口にし安心させた後に女性に串つきの食べ物を渡す。
体温で染み出た枝の樹液が皮膚浸透。
現段階で解毒薬は見つかっていない、体から薬効が抜けるまでひどい催淫に襲われ続ける。
酩酊状態の女性を幾人もの男が群がって強姦し、誰とも分からない子供を妊娠する女性が出ている。
成人前の親御にむやみやたらに祭り中に飲み食いしないように注意勧告せねばならない。ーー

 目にしていた記録なのに……注意を怠った。

「セ……ト……」

 朦朧とする意識で体を起こして歩くルーシーを抱き止めたディノ。

「おいおい、何処に行く……んぐ」

 ディノの言葉をルーシーは唇で塞ぐ、朦朧としてディノとセトの区別がついていないようだ。
ルーシーの行動に硬直するディノとセト。

「ディノッゾ君……ルーシーを愛しているかい?」
「えっ、いあ、あの……ルーシー離れて!」

 抱きついて重心をかけるルーシーのせいでよろめくディノ。

「このままではルーシーは街を彷徨って間違いを犯すかもしれない……この子を愛しているなら今夜一晩……」

 娘を託せる男……ディノッゾに対してのセトの評価。
 セトを愛する男ディノッゾ。

 強引にルーシーを引き剥がし再びベッドに横たわらせてから悪戯に毛布をルーシーの顔に投げつけて彼女の視界を暗くするディノ。
そして彼はセトに口づけて告白する。

「セトさんの願いならば俺はルーシーと結婚します。最低限の彼女の生活は守ります……ですが俺はルーシーを抱く事はありません。貴方を愛してるからです! 返事はまた今度! では俺は失礼します!」

 礼儀正しく一礼してディノは足早に店の扉の前に駆けて行って小さく胸の下でガッツポーズをし薬草屋を後にした。


「なんなんだ! 最近……なんで皆俺の心を掻き乱すんだ……」

 娘を託せると思っていた相手がまさか自分に熱い視線を送っていたなんて想像もしていなかったセト。
ここ最近の中で一番大きなため息をついて彼は膝を折り頭を抱えた。

「あつい! 暗い~、くるしいー」

 毛布を引き剥がしたい様なのだが上手くいかないようで手を毛布の中でばたつかせるルーシー。
ベッドから落ちてケガを負わせる訳にはいかないので毛布を除けてやると両手をあげてドレスを脱がせろと訴える。

「はい、はい、お姫様……」

 いくつかの留め具を外しドレスを脱がす。
吐いたものやら、土汚れ、一張羅のドレスが台無しだ。

「正気に戻ったら発狂するだろうか……苦労して縫ったのに」
「つぎっ」

 ベッドに寝そべり背中を向けるルーシー。
意図が分からないセト。

「コルセットとビスチェ……くるしひ……」
「女物の下着の脱がせ方なんて知らないぞ!」

 コルセットもビスチェも紐だらけ……キツく縛られて中々ほどけない。
面倒になったセトは剪定ハサミで紐を切りルーシーを締め付けていた下着と言う名の鎧を引き離した。

「はぁ~くるしかった……」

 ごろんと寝転がり仰向けになると豊な胸が動きとともにプルンと揺れる。
紐で結ばれたショーツ1枚のあられもない姿のヴィーナス。
潤んだ熱を帯びた瞳で男を誘う。

「リリスの枝……とは良く言ったものだな」

 少し這うような姿勢でセトに近づき彼の腕を掴んで上体を起こし腿の上にまたがる。
ショーツ1枚の恥部をセトの男性の部分に押し付けながら唇に貪りつく。

 ーー応じないと他の男にすり寄るかもしれない。
ディノのように信頼できる人間ならともかく、ルーシーの継父みたいなゲスに抱かれるのは我慢ならん。
何かで拘束するか……セトはギリギリの理性の中で知恵をめぐらす。

「あっ、はぁ……~ん」

 興奮し勃発したものがよりルーシーの女を刺激する。
何度も何度も擦られ続け理性が弾けとび、今にでもルーシーにねじ込んで熱を感じたい衝動。
それはルーシーも同じだった。

 ショーツの内から溢れ出ている彼女の愛液とセトの雄から漏れ出ている体液まみれのボトムに手をかけ脱がそうとするルーシーの手をセトが掴む。

「これが欲しいかい……ルーシー……」

 男根の先に触れさせる。
答えを口づけで返すルーシーを押し倒した……。

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