転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ

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09.結局誰が何を決めるって?(前編)

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 使用人に出迎えられながら、ルーファスに抱っこされている俺を見て、執事が俺の体調を心配していた。
 大丈夫なことを伝えて、ルーファスに降ろすように促しても自分が連れて行くの一点張りで離さない。兄として慕ってくれて、俺を立てたりするくせにこんな時ばかりは俺の言う事を聞いてくれない。
 
 なんとなく思い出してしまう。
 何度、大丈夫だと伝えても困った笑顔で返されて病院の外には出られない。
 あの時の俺の “大丈夫” は体調が大丈夫の意味じゃなくて、たとえ体調が悪くなっても「いいよ」という意味の“大丈夫” だったけど。
 
 外に出られるなら発作が起きたっていいって。
 天気が良くても、雨が降っていても、雪でも、雷雨でも窓から見るだけで部屋の中の天気は変わらない。
 看護師さん達が『こんな雨の中帰るの嫌ね。傘差しててもズブ濡れになっちゃう』なんて話を聞いても、傘を差していても濡れる雨を俺は知らない。
 雨が傘を突き破ってくるのかな?なんて思ったこともあった。よくよく考えたら傘を突き破るくらいの強さの雨で人が濡れるだけで済むなんてあり得ないって分かったけど。
 窓から見える景色は全てテレビの画面と一緒で体感はできなかったから。天気の悪い日ばかり外に出たいとごねる周りの大人はさぞかし困っただろうな。
 
 レイになってから初めて土砂降りの雨を見た時、外に出て雨に濡れる俺を見て使用人が慌ててた事を思い出す。
 ルーファスがすぐに外套を持ってきて着せられて、結局すぐに抱えられて家に戻されたっけ。あの時は頭がおかしくなった公爵家嫡男として見られてただろう。
 身体の中身が違う時点でおかしいから間違ってないけど。
 
 あの時すでに俺を抱えられるぐらいの体格差だったのか。

 自室に到着してソファに降ろされる。
 
 屈強な身体は俺を運んでも悠々としていて、汗一つない。比べて俺は降りたいが故にもぞもぞ動いてたから、ちょっと汗ばんでる。悔しい!なんて気持ちはとうの昔に捨ててるはずなんだけど……なんか胸あたりがムズムズする。むずがゆい?

 「何かありましたら、すぐに俺に言ってください。どんな事でも」
 
 生まれ変わっても看護されてるみたいで、それがちょっと気持ちが複雑でむず痒い。

 「俺……今回は迷惑かけちゃってるけど、他のことは一人でも大丈夫だよ。自分ではやってるつもりなんだけど……」
 
 なんせ自分でやってきた経験がないから分からない。できてるつもりで、できてないからルーファスも過保護にしてくれてるんだろう。
 
 どうせ意識を持って生まれ変わるなら、赤ちゃんの時だったら順番に学んで、この世界で普通に出来る事が出来ていたかもしれないのに。分からない事が当たり前の時期に転生しなかったのが難儀だ。

 「俺は兄上を信用してます。言い方が悪くて傷付けてしまったなら、すみません……」
 
 膝をついて目線を合わせてルーファスが謝ってきた。
 
 こうやって、すぐにフォローしてくれるのがルーファスなんだよな。このフォローでさえ、させてしまっている気分になるのは俺が何もできない情けないやつだからだ。でもそんな姿を見せたらきっとまた俺を庇ったり励ましたり、持ち上げてくれるから。

 「今度……雨降ったら一緒に散歩して」
 
 薮から棒の話だったのか、ルーファスは首を少し傾けた。

 「何かありましたらって言ってたから、俺からのお願い」

 「もちろんです。兄上は雨がお好きなのですか?」

 「好きか嫌いか分からないから、雨粒が落ちてきて肌に触れるのを感じたい」
 
 結局あの時はすぐに中に連れ戻されたし。わざわざ雨に濡れにいくなんて、あの時の周囲の目を考えると、とてもできる状況でない。でも、ルーファスなら否定しないし。

 「気温が暖かくなってからやりましょう」
 
 優しく微笑んで肯定してくれるルーファスに結局のところ甘えてしまっていて、弟がルーファスでなかったら、今の俺は家の中でも図書室のような場所を探し求めていたかもしれない。
 生きてるだけで幸せなんだけどね。
 
 むずがゆさはいつの間にかなくなっていて雨の日が楽しみになった。

 「早く暖かくならないかな」
 
 そうだよ。寒くても暖かくても外に出れるこの身体は最高じゃないか!

 気持ちが上向きになったところで立ち上がり、制服の上着を脱いでクローゼットに向かおうとするも、手から上着はいつの間にか消えていて、ルーファスが上着を持ってハンガーにかけていた。
 
 だから行動が早すぎるんだってば。

  仕方なく胸元のリボンをはずしていると、ドアがノックされた。返事をすると執事が入ってくる。

「レイ様、旦那様がお呼びですので着替えが終わりましたら執務室の方へいらしてください」
 
 要件を伝え終えると一礼して部屋を出ていった。

 執務室のドアをノックすると先ほどの執事が出迎えて、中に促される。

 「ああ、レイ来たか。そこに座りなさい。ルーファスも一緒か……」
 
 呼ばれたのは俺一人だったと思ったけど、当然のごとく一緒にやってきたルーファスに、さほど驚いていない様子の父。執事はお茶の準備をしてくれているようだった。
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