転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ

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10.二人寄れば文殊の?

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 「弟くんとあの時に口添えしてくれた人が婚約者候補?」

 ランチを食べながら目を丸くするディーン。今はサロンで二人だからアキラと呼んでいる。
 
 こんな頻度で第二王子殿下と昼休みが別ってことあるのかと思ったら、今は新入生歓迎会を目的とした大規模なお茶会イベントを控えている為、忙しいんだとか。
 俺はこのイベントに参加したことないから内情がよく分からないけど。
 そもそも事件があった進級パーティーも初めての参加だった。最後の学年だから、せっかくだから参加しておいでと両親に言われて。
 それがあんな事に……勧めた両親は大層落ち込んでいた。怒りも凄かったけど。
 
 トマスとルーファスが俺の婚約者候補となった?のか疑問はあるが、あれから三日、俺の生活が変わったかと言うとそうでもない、と思う。
 何もかもが疑問形で当の本人の事なんですか?って思う。

 「なんか急な展開だね……おめでとう?なの?」
 
 アキラも疑問形だ。
 
 「え?めでたいの?そもそも男同士ってところは?」

 「……それは……僕も婚約者が男だし、よく分かんない」
 
 元日本人同士で答えが出るわけがなかった。

 「弟くんが本当の兄弟じゃなかったのはレイは大丈夫だったの?」

 「うん。両親ですら、こっちの世界で目が覚めたときに初めて会ったようなもんだからな。こうなると、血の繋がりってどこで感じるんだ?って感じ」

 「……そっか……そうだよね。生まれたときから一緒の記憶があるわけじゃないもんね」
 
 少し申し訳無さそうに俯いたアキラに、気にする必要はない事を伝える。

 また泣かれて痛そうな目で見られるのはキツいしね。

 「それより、アキラの話を聞かせてよ」
 
 この間から気になることばっかり溜まっていって発散したいんだが。

 「僕の話?……良いけど何から何を話せばいいのか、まとまりにくいからレイから質問して」
 
 俺の方に手を差し向けて笑みを向けてきた。

 何でもござれって事と受け取ります。

 「アキラは日本人って言ってたけど、その目の色は元々なの?カラコンじゃないでしょ?」
 
 アキラの目の色は桃色をしているから、日本人と言われてもピンと来なかった。

 「カラコン?」
 
 アキラがカラコンを知らないと思わなかったので沈黙が流れる。

 「え?カラーコンタクトの事だよ」

 「コンタクトレンズ?」

 「うん」

 「コンタクトレンズはつけてないよ。目は元々は普通の日本人に多い色だったけど、こっちに召喚された時に変わったみたい」
 
 サラッと衝撃の事実を言うので面食らってしまう。 
 え?目の色が変わる?中身が変わってる自分が驚くのも何だけど。

 「なんかね、神に愛される聖女は桃色の目を持つらしくって。召喚された時に桃色になってたみたい。後から知って鏡見た時は僕も驚いた。前の聖女も桃色の目をしてたらしいよ」

 「……すっごい。俺今一番、異世界を実感してるかも」

 「ははっ三年いて今が一番なの?」
 
 ケラケラ笑うアキラ。

 「前の聖女も異世界から召喚された人?」

 「ううん、この世界の人。前王弟殿下の息子の奥さんだったって」

 「前の王弟殿下の息子?の奥さん?」

 長い、長いよ。

 「うん。聖女は代々、王族関係者と結婚するらしいよ」

 「それでアキラと第二王子殿下が婚約って事?」

 「俺は予想外に男だったらしいけど……。聖女は王族の近くにいないとダメらしくて、だから僕と第二王子殿下が婚約することになったんだ」
 
 淡々と説明するアキラに違和感を覚える。

 「……アキラはそれでいいの?アキラの意見は?」

 「何言ったって、無駄なんだよ。それに元いた場所に戻れないならどこにいたって同じだもん」
 
 目線を外して、外の景色を見つめるアキラ。
 
 あの事件の日に第二王子殿下が側近と話している横で、アキラの目は二人の方を向いておらず、心はそこにないように見えた。
 受け入れても受け入れられなくても状況は変わらない。心の持ちようなんて何の意味もなさない。だったら考えるだけ無駄だ。なんだか前の身体の自分と重なった。
 
 重なるくせに何て言葉をかけていいか分からないなんて何の意味もない。

 「……探すんでしょ?俺と一緒に。」
 
 驚いた顔で景色から視線が戻ってくる。
 
 「戻る方法を」
 
 「……うん」
 
 アキラは少しだけ寂しげな表情で笑ってから

 「それに衣食住が保証されてるならその方が良いし、王宮はご飯がすごく豪華で戻ったら舌が肥えててヤバいかも」

 と表情を一瞬で変えてニコリと笑った。

 「それにね、僕はレイに会えてから諦めてたけど、第二王子殿下にも少し意見言うようになったんだよ。だからこうして一緒にご飯食べられてるし。レイに会えて良かった。じゃなかったら……ただの人形みたいに過ごしていたかも」

 自分に会えたことを良かったと言ってもらえて、けっこう嬉しくなってしまった。

 「あっ照れてる?顔が赤い」
 
 人を指さして笑ってからアキラは続けた。

 「でも、僕よりレイじゃない?意見言えてないの。婚約者候補の話、レイの話聞いてたら自分の事なのに疑問形ばっかりだったよ?」
 
 痛い所をついてきた。

 「俺に判断を求められても分からないから、混乱してる間に話が進んで終わってるし……公爵家の事とか本当に分からないから下手な判断できないし、父上とルーファスに任せておこうと思って」
 
 言いながら、我ながら軟弱すぎるか?と思ったけど分からないもんは分からない。

 「うーん。確かに僕も貴族の事は分からないから何とも言えないけど……弟くんがレイを好きって事はビックリした。でもあの日の弟くんの様子を思い出すと納得かも」

 「え?」

 「え?」
 
 俺のびっくり顔にアキラもびっくり顔で返してくる。

 「……えっと、レイが好きだから婚約者候補になったってことでしょ?」

 「ん?」

 「え?違うの?」
 
 俺たちの会話って、お互いに疑問ばっかりだな。
 
 「ルーファスが俺を好きってのは違うと思う。きっと公爵家としての事を考えていて、トマス様をまだよく知らない相手だからルーファスも婚約者候補になってトマス様の人となりとか判断するって事じゃないかな?トマス様を断ることになっても、ルーファスと婚約となれば相手もそれ以上何も言ってこられなくなるとか……そういったことだと思うんだけど」

 「だって、最終的にはレイが選ぶんでしょ?どっちも選ばなくていいみたいな話も出てたのは?」

 「トマス様もルーファスも断るなら、それはそれでルーファスも婚約者にならないなら仕方ないって相手も諦めやすいからとかじゃない?」

 「ええ?そうなの?」

 「貴族の考え方って難しいよな」
 
 アキラの顔が難解なクイズを解いている時みたいな顔になっている。たぶん俺も。

 結局、俺ら二人だと答えなんて出ないから一旦保留みたいな顔になった。

 「レイ……って考えてるんだか考えてないんだか分からないね」

 「実質何も考えてない。だって周りも俺も生きていければそれでいいし」

 「うーん……?じゃあトマス様との結婚も、弟くんとの結婚も嫌じゃないってこと?」

 「嫌かどうか……平和に生きられれば嫌じゃないよ。その平和に過ごせる判断が俺には貴族社会は難しいからルーファスが継いでくれればいいのにって思ってる」
 
 だから、あの時に回避できないなら受け入れて罰を軽くしてもらえれば少なくとも死刑は免れる。
 家族を巻き込まないようにすれば公爵家からは追い出される形になるだろうから、公爵家はルーファスが継げるようになって公爵家も丸く収まるのでは?と考えてもいたんだけど。
 
 俺が公爵家から出て、野たれ死ぬ可能性もあるけど体が動くなら、どうにか生きていけるかなって思っていたんだけどな……

 「えっ!?公爵家から出ていくつもりだったの!?」
 
 どうやら、口に出してしまっていたらしい。
 アキラが心配そうに顔を覗いてくる。

 「甘い考えだとは思うけど、出て行ったら丸く収まりそうかなって思っただけだよ。たとえばの話」

 「本当に?思っただけ?いなくなるつもりじゃない?」
 
 泣きそうな顔をさせてしまった。

 「そうだな、アキラを置いてはいけないな」

 「僕がいるからやめるってのもなんか困る。気分的に僕のせいみたい」

 「アキラって結構ズバッと言うよね」

 「それほどでも」

 「褒めてないし!」
 
 二人で吹き出して、しばらく笑いが止まらなかった。

 こんなに笑ったのは久しぶりってお互いに言い合っているとノックの音がする。

 「あっもう時間?まだ話足りないのに……」
 
 渋々とドアを開けにいくアキラは今日は泣いていないし、今笑い合っていたので今日は睨まれることはないだろうと内心ホッとする。
 
 だが、そうは問屋が卸さなかった。卸せよ第二王子殿下!
 
 泣いていた時の睨み方とは違うが、ジトっとした目で散々見られて

 「楽しそうだな。何の話をしていたのだ?」

 といった問いに対してアキラは

 「あ、色々です」

 と雑に答えたもんで……

 結局二人と離れるまで肩身が狭かった。
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