転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。

星乃シキ

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11.難しいことは控えて欲しい

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 授業が終わると身支度を調える。いつもなら馬車乗り場に直行するが、今日は本でも借りて帰ろうかと思い立ち図書室に寄っていくことにした。
 
 神話あたりの本を端から、とりあえず読んでみるか。選ぶわけじゃないからルーファスの所にすぐ行けるかな。
 そう決めると、足早に図書室へ向かった。

 「レイ様、今日はお帰りの方向じゃないのですね」
 
 不意に声をかけられて振り向くとトマスだった。

 「あ……えっと図書室に行く所で……」

 「そうなのですね。私もご一緒してよろしいですか?」
 
 話しながらトマスが俺の横に並んだ。

 「……はい、馬車を待たせているので少し急ぎますが……」

 「でしたら私が担いで行って差し上げましょうか?」

 「……え?嫌です」

 「ふふ……冗談ですよ。さぁ向かいましょう」
 
 そのまま手を取られ歩き出す事になった。

 また……手を取られている……。会うたびに手を握られているけど、握り屋さんなのか?それか小さい子を相手する感覚なのか?

 「婚約者候補の件、お引き受けいただき感謝します」
 
 紳士的微笑みをするトマスに本当に今の身体のレイと同い年なのかと疑ってしまう。
 
 まぁ、ルーファスなんて自分より一つ下なのにフォローしてくれたり、抱っこされたりしてるけど。
 
 ルーファスの大人顔負けの腕力と、しっかりしているのに俺への懐き方が犬みたいなところは、やっぱり弟だなと思う。
 対してトマスは、父上に似た大人の落ち着きがあり、一つひとつの言動に貫禄が乗っている。
 
 表情かな?笑みに余裕を感じる。

 「えっと……こちらこそ?」

 「ふふ……」
 
 え?また笑われたんだけど……返し方間違えた?
 手を引かれて、優しい笑みを向けられると兄弟というより親子みたいな雰囲気になってるような。

 「レイ様は大人っぽい雰囲気をお持ちになりながら、ご自身が責められている場面でも落ち着いていて、飾らない御様子も印象的でした。先日の図書室の時と今は、あどけなさを感じますね」

 つまりは、子どもっぽいと言いたいんだな?
 口を開いたらまた子供っぽさを露呈しそうで、口をつぐむ。

 「どちらのあなたも、とても魅力的です」

 俺は一人だが?

 考えてみると、この体になってから俺はルーファス、最近ではアキラ以外とは、ちゃんと話してきた覚えがないので何を話していいか分からない。

 「……あの、どうかあまり緊張しないでいつものようにリラックスしてください」
 
 歩きが止まって少し困った笑顔で覗き込まれる。
 
 いつもと言われても……トマスの前でリラックスって。

 「弟さんも婚約者候補になられたとか……弟さんの前ではくだけた話し方をされてましたよね?」

 「弟ですので……貴族としての付き合い方とか考えなくても大丈夫なので……」

 「それでしたら、私は男爵家ですしそう固く考えずにお付き合いいただけると嬉しいです」

 「……でも……公爵家の人間として粗相をしたら迷惑を掛けてしまうのは家族ですし……俺は人付き合いの経験が少ないので」
 
 まずい。余計なことまで喋ってしまったかも。こういうとこだぞレイ……
 思わず自問自答してしまう。

 「レイ様、私は婚約者候補ではありますが、あなたとの結婚を視野に入れています。今はまだ願望ではありますが。結婚したら仲睦まじい家族になることが夢です。あまりレイ様に緊張されて距離を置かれてしまうと寂しく感じてしまいます」

 王子様ってこんな感じの人のことを言うんだろうな。
 それほどトマスは紳士的な動きでモテそうだと思う。

 「私の前でどんなレイ様でもそれであなたを貶めるような真似は絶対にいたしません。例え王族の方に命令されたとしても」
 
 トマスは跪いて俺の手の甲を額に近づけ頭を下げた。

 これは……忠誠のポーズでは?
 
 貴族の礼儀として知識では知っているが、向けられる側になるとは思っていなかった。
 漫画でも目にしたことのある、あれだ。

 「やっやめてください!お願いだから立ってください」

 トマスは顔だけ上げて俺の目をじっと見てくる。
 トマスが言ったことを受け入れなければやめないと目で訴えてきている。

 「ーーーっそ、それをされると……結局あなたが公爵家の俺とは対等になれないのでは?」

 俺の言葉に答えずにニコッと爽やかな笑顔を返してきた。
 この男はアキラとはまた違ったしたたかさがある。結局俺は折れるしかなかった。

 「……分かりました。トマス様の前だけは気にせず過ごすようにします……できるだけ」

 「それで十分です。……ありがとう、レイ様」
 
 そのままトマスは俺の手の甲に口を付けた。

 「……あの、まだそれ続けるんですか?俺が気にせず話すには、そういった事をされると余計に意識してしまいます」

 「これは、親愛の証です」

 忠誠ではなく親愛ってこと?分からん。

 トマスがようやく立ち上がり、また手を引かれる。

 「本来は、別の意識を向けていただければと思っていたのですが……今は図書室へ参りましょう」


 図書室では司書さんに場所だけ教えてもらって、予定通り一番端の物を借りていく。
 
 司書さんはトマスと一緒にいる俺の姿を見て心配そうな目を向けたが “大丈夫です” と目配せすると、目尻を少しだけ下げて一礼した。
 なんか凄い心配してもらってるな。業務以外のことに心を割いてしまわせて申し訳ない。

 そして気掛かりだった繋がれていた手は、図書室に着いて中にいた時には外れていた。
 さすが紳士はタイミングが自然!
 だからといって今後の参考になるかと言ったら、自然すぎていつの間にか離れていたので参考にはならなかった。

 予定外な事はありつつも、無事に本を借りるミッションを達成した。
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