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12.三人寄ればエイエイオー
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元の世界へ戻る方法が本に載っていれば苦労はしないだろうけど……そう簡単にことは運ばないだろうな。聖女が異世界の人って聞いたことないし。そもそも、人にも情報にも疎いから知らないだけかもしれないけど。
召喚うんぬんの話を初めて聞いた時、アキラは声を潜めていたし、第二王子殿下といる時も異世界の話をすることはなかった。
アキラではなくディーンって名乗っていることも。あえて話をしていないんだろう。
俺が知っていることもバレちゃいけないんだろうな。
今日アキラと話したことを思い出す。
結局、俺の話になっちゃってアキラの気になっていたことを少ししか聞けなかった。サロンの間だけだと時間足りないなぁ。
本を借りる手続きをしながらそんなことを考え、無事に借りられた本を片手に抱えて図書室のドアへ向かう。
そういえば、図書室に着いてから静かだな。
そう思って後ろを振り向くと、トマスと目が合い爽やかに口角を上げて微笑まれる。
この間、司書さんに注意されたから気を遣っているのかも。
俺の図書室での居心地が悪くならないようにとか?初対面の時も第二王子殿下に意見したり、サクッと司書さん達を呼んでくれていたり父上が感心するように悪い人じゃないんだろう。……これは漫画やアニメだったら好感度高いキャラになるだろうな。
ドアにたどり着き手をかけようとした時、ドアが勢い良くスライドし驚きと共に、何かがぶつかった。ぶつかった勢いのまま後ろにひっくり返りそうになったが、ひっくり返ることはなかった。
「大丈夫ですか?レイ様」
衝撃に構えて目をつぶっていたので、声をかけられた方向に顔を上げると、後ろにいたトマスに受け止められ、倒れずに済んだようだった。
「あ、ありがとう」
「兄上!」
ほぼ俺のセリフと被るように聞こえた声は誰かすぐ分かった。
「あ、ルーファス」
名前を呼んでから、トマスと図書室の道中で会って話をしていたから、馬車乗り場に行く時間がけっこう経ってしまっていたか?と頭をよぎる。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
俺の声は聞こえていないのか、ルーファスはすぐさまトマスに鋭い視線を向けた。
「兄上から離れていただけますか?」
ルーファスの言葉に、ようやく気付いた。
トマスは本を抱えた俺の腕ごと本を押さえ、もう片方の腕で今も腰を支えてくれている。
このまま、足が浮いてもおかしくないくらいにはトマスが全俺を支えている。
どいつもこいつも逞しく育ちやがって。
「トマス、ありがとう。もう大丈夫だよ」
「はい、顔などはぶつけておりませんか?」
体を離さぬまま、トマスが上から顔を覗き込んでくる。
大丈夫と答えようとした瞬間、今度は本を持っていない方の腕がぐいっと引かれた。
見ると、ルーファスが俺の腕をつかんでいた。
「離せ!」
ルーファスが感情のまま怒るところを初めて見たので、あまりの怒りっぷりに驚いてしまう。
すっと腰から手が離されると、トマスはルーファスとは正反対にとても落ち着いた声を出した。
「レイ様が驚いていますし、図書室にも迷惑がかかるので部屋の外に出ましょうか」
図書室から出てもルーファスは俺の手を引っ張ったまま、歩いていく。
「ルーファス、ごめん!すぐ本を借りて行くつもりだったんだけど待たせちゃったよな?」
俺の声にルーファスの顔が振り返ったが、その顔はすぐに険しい表情に変わった。
俺の手をつかんでいるルーファスの手をトマスが更に上から重ねてきたから。
「あまり引っ張るとレイ様の手が痛くなってしまいますよ」
ナニコレ?
三人で手を重ねて傍から見たら、なんかの儀式してるっぽく見えない?それこそ召喚儀式ですか?それか試合前の気合い入れる掛け声をする時みたいな。
『エイエイオー!』って。
けっこう憧れていた場面だけど……憧れていたのはコレジャナイ感!
「……男爵子息が軽々しく触れないでいただきたい」
ルーファスが目だけ動かしてトマスに低い声を出した。
「家格を出されると困ってしまいますが、今は私とあなたは婚約者候補同士。レイ様の前では一緒の立場ですよ」
対してトマスはずっと落ち着いた口調で話しているため、トマスとルーファスの方が兄と弟と言ってもいい位に上が下を諭しているように見える。
普段見ることのない、このルーファスのピリッとした空気に俺は居たたまれない……。
人のピリピリしたムードは苦手かも……得意って人のほうが少ないとは思うけど。病院では子ども同士の喧嘩位しか見たことはないし。子ども同士の喧嘩なんてワーワー言ってピエーンと泣いて可愛いもんだよね。
そもそも俺が時間がかかったせいだし、馬車乗り場に行って伝えてから図書室に行けば良かったかも。反対方向で図書室のほうが距離が近かったからって失敗しちゃったかな……。
「ルーファス?あの……ごめんなさい」
やっとルーファスと目が合った。
掴んでいた手が離されたけど、険しい顔のルーファスの瞳が静かに揺れたように見えた。
「兄上が謝る必要はありません……。すみません、手に痛みはありませんか?先ほどぶつかった所は痛めてないですか?」
「……どこも大丈夫」
本を両手で抱えると、ルーファスが持っていた本に視線を移した。
「本を借りに行っていたんですね」
「うん、先に伝えてから行けば良かったね。迎えに来てくれてるのに迷惑かけてごめんね」
「あにっ……」
「レイ様、迷惑とは弟君も思ってないですよ」
ルーファスの言葉を遮ってトマスが俺の肩に優しく手を触れた。
「レイ様のことを心配していたんですよ」
「心配……」
俺は結局どこにいても心配を掛けることしか出来ないのだろうか。
肩に触れているトマスの手が小さく撫でるように動く。
「そのように……身体に力を入れると折角の本が傷んでしまいますよ」
言われて初めて本を持つ手に力が入っていることに気付く。
借り物なのにまずい。
端が折れたりしてないか確認してから本をよしよしと撫でる。幸い本は丈夫なようで無事だった。
こっちの本って製本が重厚だよな。
「レイ様を心配するのは弟君の性ですので気になさらないでいいと思います。仲の良い兄弟で羨ましいです。私がレイ様に話しかけたせいなので、レイ様を怒らないでくださいね」
「兄上に怒る所などありません」
「私は怒られてしまいそうですね。腕力では敵わないと思いますのでお手柔らかにお願いしますよ」
「腕の方が手っ取り早く勝敗が決まりやすいと思いませんか?男爵子息」
「自分の得意分野のみで勝負しようとなさるなんて、他は自信がないと言っているようなものですね」
またもや、ピリッとした空気が流れる。
今度はルーファスだけでなく笑顔のトマスからも感じるのは気の所為だと思いたい……。
「ああ、ほら、そんな顔をされますとレイ様が心配されてますよ」
トマスの言葉にルーファスの顔が勢い良く俺の方に振り向いた。
骨を投げられた犬みたいに振り向くじゃん。これは、もしやトマスが優勢なのか?何のかは分からないけど。ルーファスが操られたように見える。
「レイ様、今日はお話できて楽しかったです。では、また明日」
挨拶を済ませるとトマスは颯爽とこの場から去って行った。
ルーファスは威嚇している犬のようにトマスの後ろ姿を睨んでいた。
犬だったら逆毛を立てて、尻尾立てて『フーーーーッ!!』ってなってそう。……ん?犬の威嚇ってこうだっけ?猫?
そんなことより俺の知らないところで、二人の間に何かあったのだろうか……?
「兄上、お荷物持ちます」
トマスがいなくなって視線が俺へと戻ってくるといつものルーファスの表情になっていた。
「……自分で持てるから平気」
でもなんとなく、いつもとは違った空気を感じたまま二人で馬車乗り場へと向かった。
馬車に乗る俺にルーファスが手を添えて違和感の正体に気付いた。
そうだ、いつもだったら俺が断っても『持ちます!』って荷物が取られていたな。
そうぼんやりと思いながら帰路に就いた。
召喚うんぬんの話を初めて聞いた時、アキラは声を潜めていたし、第二王子殿下といる時も異世界の話をすることはなかった。
アキラではなくディーンって名乗っていることも。あえて話をしていないんだろう。
俺が知っていることもバレちゃいけないんだろうな。
今日アキラと話したことを思い出す。
結局、俺の話になっちゃってアキラの気になっていたことを少ししか聞けなかった。サロンの間だけだと時間足りないなぁ。
本を借りる手続きをしながらそんなことを考え、無事に借りられた本を片手に抱えて図書室のドアへ向かう。
そういえば、図書室に着いてから静かだな。
そう思って後ろを振り向くと、トマスと目が合い爽やかに口角を上げて微笑まれる。
この間、司書さんに注意されたから気を遣っているのかも。
俺の図書室での居心地が悪くならないようにとか?初対面の時も第二王子殿下に意見したり、サクッと司書さん達を呼んでくれていたり父上が感心するように悪い人じゃないんだろう。……これは漫画やアニメだったら好感度高いキャラになるだろうな。
ドアにたどり着き手をかけようとした時、ドアが勢い良くスライドし驚きと共に、何かがぶつかった。ぶつかった勢いのまま後ろにひっくり返りそうになったが、ひっくり返ることはなかった。
「大丈夫ですか?レイ様」
衝撃に構えて目をつぶっていたので、声をかけられた方向に顔を上げると、後ろにいたトマスに受け止められ、倒れずに済んだようだった。
「あ、ありがとう」
「兄上!」
ほぼ俺のセリフと被るように聞こえた声は誰かすぐ分かった。
「あ、ルーファス」
名前を呼んでから、トマスと図書室の道中で会って話をしていたから、馬車乗り場に行く時間がけっこう経ってしまっていたか?と頭をよぎる。
「ごめん、待たせちゃったかな?」
俺の声は聞こえていないのか、ルーファスはすぐさまトマスに鋭い視線を向けた。
「兄上から離れていただけますか?」
ルーファスの言葉に、ようやく気付いた。
トマスは本を抱えた俺の腕ごと本を押さえ、もう片方の腕で今も腰を支えてくれている。
このまま、足が浮いてもおかしくないくらいにはトマスが全俺を支えている。
どいつもこいつも逞しく育ちやがって。
「トマス、ありがとう。もう大丈夫だよ」
「はい、顔などはぶつけておりませんか?」
体を離さぬまま、トマスが上から顔を覗き込んでくる。
大丈夫と答えようとした瞬間、今度は本を持っていない方の腕がぐいっと引かれた。
見ると、ルーファスが俺の腕をつかんでいた。
「離せ!」
ルーファスが感情のまま怒るところを初めて見たので、あまりの怒りっぷりに驚いてしまう。
すっと腰から手が離されると、トマスはルーファスとは正反対にとても落ち着いた声を出した。
「レイ様が驚いていますし、図書室にも迷惑がかかるので部屋の外に出ましょうか」
図書室から出てもルーファスは俺の手を引っ張ったまま、歩いていく。
「ルーファス、ごめん!すぐ本を借りて行くつもりだったんだけど待たせちゃったよな?」
俺の声にルーファスの顔が振り返ったが、その顔はすぐに険しい表情に変わった。
俺の手をつかんでいるルーファスの手をトマスが更に上から重ねてきたから。
「あまり引っ張るとレイ様の手が痛くなってしまいますよ」
ナニコレ?
三人で手を重ねて傍から見たら、なんかの儀式してるっぽく見えない?それこそ召喚儀式ですか?それか試合前の気合い入れる掛け声をする時みたいな。
『エイエイオー!』って。
けっこう憧れていた場面だけど……憧れていたのはコレジャナイ感!
「……男爵子息が軽々しく触れないでいただきたい」
ルーファスが目だけ動かしてトマスに低い声を出した。
「家格を出されると困ってしまいますが、今は私とあなたは婚約者候補同士。レイ様の前では一緒の立場ですよ」
対してトマスはずっと落ち着いた口調で話しているため、トマスとルーファスの方が兄と弟と言ってもいい位に上が下を諭しているように見える。
普段見ることのない、このルーファスのピリッとした空気に俺は居たたまれない……。
人のピリピリしたムードは苦手かも……得意って人のほうが少ないとは思うけど。病院では子ども同士の喧嘩位しか見たことはないし。子ども同士の喧嘩なんてワーワー言ってピエーンと泣いて可愛いもんだよね。
そもそも俺が時間がかかったせいだし、馬車乗り場に行って伝えてから図書室に行けば良かったかも。反対方向で図書室のほうが距離が近かったからって失敗しちゃったかな……。
「ルーファス?あの……ごめんなさい」
やっとルーファスと目が合った。
掴んでいた手が離されたけど、険しい顔のルーファスの瞳が静かに揺れたように見えた。
「兄上が謝る必要はありません……。すみません、手に痛みはありませんか?先ほどぶつかった所は痛めてないですか?」
「……どこも大丈夫」
本を両手で抱えると、ルーファスが持っていた本に視線を移した。
「本を借りに行っていたんですね」
「うん、先に伝えてから行けば良かったね。迎えに来てくれてるのに迷惑かけてごめんね」
「あにっ……」
「レイ様、迷惑とは弟君も思ってないですよ」
ルーファスの言葉を遮ってトマスが俺の肩に優しく手を触れた。
「レイ様のことを心配していたんですよ」
「心配……」
俺は結局どこにいても心配を掛けることしか出来ないのだろうか。
肩に触れているトマスの手が小さく撫でるように動く。
「そのように……身体に力を入れると折角の本が傷んでしまいますよ」
言われて初めて本を持つ手に力が入っていることに気付く。
借り物なのにまずい。
端が折れたりしてないか確認してから本をよしよしと撫でる。幸い本は丈夫なようで無事だった。
こっちの本って製本が重厚だよな。
「レイ様を心配するのは弟君の性ですので気になさらないでいいと思います。仲の良い兄弟で羨ましいです。私がレイ様に話しかけたせいなので、レイ様を怒らないでくださいね」
「兄上に怒る所などありません」
「私は怒られてしまいそうですね。腕力では敵わないと思いますのでお手柔らかにお願いしますよ」
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またもや、ピリッとした空気が流れる。
今度はルーファスだけでなく笑顔のトマスからも感じるのは気の所為だと思いたい……。
「ああ、ほら、そんな顔をされますとレイ様が心配されてますよ」
トマスの言葉にルーファスの顔が勢い良く俺の方に振り向いた。
骨を投げられた犬みたいに振り向くじゃん。これは、もしやトマスが優勢なのか?何のかは分からないけど。ルーファスが操られたように見える。
「レイ様、今日はお話できて楽しかったです。では、また明日」
挨拶を済ませるとトマスは颯爽とこの場から去って行った。
ルーファスは威嚇している犬のようにトマスの後ろ姿を睨んでいた。
犬だったら逆毛を立てて、尻尾立てて『フーーーーッ!!』ってなってそう。……ん?犬の威嚇ってこうだっけ?猫?
そんなことより俺の知らないところで、二人の間に何かあったのだろうか……?
「兄上、お荷物持ちます」
トマスがいなくなって視線が俺へと戻ってくるといつものルーファスの表情になっていた。
「……自分で持てるから平気」
でもなんとなく、いつもとは違った空気を感じたまま二人で馬車乗り場へと向かった。
馬車に乗る俺にルーファスが手を添えて違和感の正体に気付いた。
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