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第11章 Side 珠喜
第19話 大胆な彼女 その2 *
しおりを挟む朝、布団の中に潜り込んでいると、玄関の扉が閉まる音がした。賢弥さんが仕事に行ったのだ。とっくに目は覚めていた。でも、どんな顔をして会えばいいのか分からなかった。
ゆっくりと起き上がり、寝室を出る。キッチンへ行くとテーブルの上にラップが掛けられた朝食が置いてあった。五穀米、キノコの味噌汁、だし巻き卵、焼き鮭。メモはないけど、どれも手の込んだ手料理だということが一目で分かって、何だか切なくなった。
顔を洗って身支度を整えて、賢弥さんが作ってくれた朝食を食べた。彼に断られたのはもちろんショックだった。でも、こうなるんじゃないかと薄々思っていた。
「こんなギクシャクした状態じゃ気まずいよね……よしっ!」
アタシは両頬を叩くと気合を入れた。賢弥さんが帰ってきたらいつも通り振舞うのだ。でも、諦め切れない。
本当に賢弥さんはアタシのことを何とも思っていないんだろうか?男は恋愛感情がなくても女を抱ける生き物。それはアタシもよく知っている。でも、彼は果たしてそんな人だろうか?何とも思っていない相手にキスをしたり、触ったりするような人なんだろうか?
彼について知らないことはまだまだある。でも、そんな軽いノリで女に手を出すような人にはとても思えない。例えお酒に酔い潰れていたとしても……。そこでふと気づいた。彼は「お酒を飲むと気が大きくなる」と言っていたけど、実際は「本音が出てしまう」ということじゃないかと。
酔った賢弥さんは、仕事の愚痴をアタシにぶちまけた。アタシのことを「可愛い顔してる」とか「いつも頑張ってる」とか「偉い」と褒めてくれた。気持ち悪いくらいに。こんなこといつもは絶対に言わない。でも、お酒を飲むと本音が出てしまうと考えるとしっくり来る。
彼はアタシのことをいつもきちんと見てくれていて、心の中で頑張りを認めてくれているのだ。口に出せないだけ。そう思うととても嬉しかった。
「じゃあ、お酒を飲めば聞き出せるかもしれない。ホントはアタシのことをどう思ってるのか」
すぐに立ち上がり、冷蔵庫を開けた。お酒は……ない。
「買いに行くしかない……!」
急いで残りの朝食を平らげて家を飛び出したのだった。
――――――
その夜、賢弥さんはアタシが作ったチキンのトマト煮込みを嬉しそうに頬張った。
「美味しい?」
「ああ、凄く美味い」
「良かった!赤ワインとも合うんだよ。ほら飲んでみて」
でも、彼はワイングラスに手を伸ばそうとしない。アタシはわざと自分のグラスにたっぷりワインを注いでせっせと口に運んだ。彼と違ってアタシはお酒に強い方だ。ワインは度数が高くて少ない量ですぐに酔ってしまう人が多いけど、アタシは酔ったことがない。
「おいおい、そんなに飲んで平気か?」
「大丈夫だよ。だってアタシ、お酒強いから」
「そうか。ここに来てからは飲んでないよな?」
「うん。賢弥さんが飲まないって言ったから」
「遠慮してたのか?」
「うん」
しばらく沈黙が続いた。賢弥さんはチキンのトマト煮を平らげると、水を一杯だけ飲んだ。すぐ隣にあるグラスにはワインがなみなみに入ったまま。
「ねえ、ワイン飲まないの?遠慮しなくていいのに」
「いや、いらない」
「何で?」
彼は目を逸らした。固く口を閉ざしたまま何も答えない。彼が頑なにワインを拒否しているのは、またアタシに何かしてしまったら申し訳ない、そう思っているからだ。彼の態度からはそれが痛いほど伝わってくる。
(もう……っ!)
痺れを切らして立ち上がった。びっくりした様子で賢弥さんがアタシの顔を見る。
「どうしても飲まないって言うならアタシが飲ませてあげる」
彼のワイングラスを持ち、口に含んだ。彼の顎をクイと持ち上げ、自身の唇を彼の唇に押し当てた。そっと口を開いて、彼の口の中にワインを注ぎ入れると唇の隙間から一筋、ワインが零れ落ちた。
彼は抵抗する暇もなく、アタシが口移ししたワインをゴクリと飲み込んだ。唖然とした顔でアタシを見つめる彼。言葉を失って固まっている。唇についたワインをペロッと舐めて、賢弥さんの膝の上に跨った。
「お、おい……!」
彼は慌てふためき、アタシを下ろそうと腰に手を回した。片方の手で彼の手を制止して、もう片方の手でもう一度グラスを持った。
「足りないの?じゃあ、もっとあげる」
もう一度ワインを口に含んで、上から彼の唇を塞ぐ。今度は彼自ら唇を開き、アタシの口から注がれるワインを飲み込んだ。アタシを膝から下ろそうと腰に回されていた手が後ろに回り、ぎゅっと抱き締められた。堪らなくなって、彼の口の中に舌先を滑り込ませた。ワインの濃厚な味が絡み合って、少しだけクラっとした。
「はぁっ、んんっ……」
彼の頬や髪の毛を撫でながら、彼の唇を何度も貪った。彼も目を瞑ってワインが混ざる濃厚なキスに酔いしれていた。その頬は徐々に赤く染まり、少しづつ酔いが回ってきたのが分かった。
「んっ……ねえ……賢弥さん……」
唇を離してそう呼びかけると、彼はアタシの頬に優しく触れながら、トロンとした眼差しでこちらをじっと見つめた。
「……なんだ、珠喜」
「賢弥さんのホントの気持ち。教えて?」
彼はしばらく黙り込んでいたけど、やがて口を開いた。
「何の話だ?」
「とぼけないでよ。どうして話をはぐらかすの?」
彼は気まずそうに目を逸らし、思いついたようにこう言った。
「ああ、そうだ。帰りにケーキ買って来た。ほら、この間俺の愚痴を聞いてくれただろう?そのお礼だ。冷蔵庫から取って来てもらえるか?」
思い切り話を逸らされてしまい、肩を落とした。賢弥さんの膝の上からゆっくりと降りると「分かった」と返事をして、冷蔵庫へケーキを取りに行った。箱を取り出し、扉を閉めた。
その時、背後に気配を感じた。咄嗟に振り向くと真後ろに賢弥さんがいた。トロンとした目でアタシのことを見下ろしている。びっくりして箱を持ったまま固まってしまった。
「け、賢弥さん……?」
彼は何も言わずに箱をそっと取り上げ、キッチンカウンターの上に置いた。彼がアタシの顔のすぐ隣に手を突いた。背中を冷蔵庫の扉に押し付けられてしまったのだ。
(えっ……待って?何これ壁ドン?いや、違う。冷蔵庫ドン?!……って、それじゃあ太〇の達人みたいじゃん!)
動揺し過ぎて全く面白くない冗談が脳裏を過ぎる。狼狽えていると、彼が顔を覗き込んできた。その目には熱が宿っていた。この間、体を触ってきた時と全く同じ目……射抜かれたように全く体が動かなかった。
彼はアタシの頬に優しく触れると、唇にキスをした。さっきの濃厚なキスとは打って変わって、唇を重ねるだけの軽いキス。
「んんっ……」
彼の腰に腕を回してされるがままに何度もキスをした。その内にアタシはまた自分の体が熱くなっていくのを感じた。彼はやがて唇を離すと、満足そうに微笑みを浮かべてアタシのことを見つめてきた。彼がこんな風に笑うのを初めて見た気がする。
その次に彼はアタシの首筋にキスを落とし、ニットの上から膨らみに触れた。優しく撫でながらニットをはだけさせ、露になった肩にもキスを落とした。込み上げる快感を堪えながらアタシは必死に声を絞り出した。
「やっ……ま、待って!どうしてこんなこと……あぁん」
でも、彼は答えない。夢中でアタシの肌を愛撫している。
「んん……け、賢弥さんも……アタシのこと……好きなんでしょ……?」
「……分からん」
「ハ、ハァ?分からんって……意味分かんない……やぁん」
「悪いな、そうとしか言えなくて。でも、俺は今無性にお前に触りたい。だから触ってる……っ」
彼はアタシのニットをまくり上げた。
「な、何よそれ……アタシの気持ち知ってるくせに……ズルい……んんっ」
ブラのホックを外し、膨らみを直に揉みしだく。その内、彼の指先が先端の突起に触れ、アタシは思わず体を震わせた。
(……触りたいって好きってことじゃないの?どうして言ってくれないの?)
それなのに、彼に触れられるのが嬉しくて仕方がなくて体が勝手に反応してしまう。突起を摘まんだり、挟んだりと愛撫される度に疼きが大きくなっていく。
「はぁん……んんっ、ダメ、気持ちイイ……っ」
「珠喜……お前、そんな顔すんのか……堪んねえな」
愛撫を続けながら、賢弥さんは喘ぐアタシの顔を覗き込み、嬉しそうに言った。彼はテーブルに置きっぱなしになっていた飲みかけのワイングラスを取って来て舌先を湿らせると、突起を唇に含んだ。途端に甘い刺激が体中に広がり、体がピクンと反応した。
「あぁんっ!」
湿り気を帯びた舌の感触、赤ワインの濃厚な香り……。あまりにも大胆で濃厚な彼の愛撫に我を忘れて快感に喘いだ。その時、腿の付け根に違和感を覚え、ハッとした。
(あ、ヤ、ヤバい……あそこ、めちゃくちゃ疼いてる。大変な事になってるかも……)
両足を擦り寄せたのを彼は見逃さなかった。フレアスカート越しにそっと内腿に触れ、耳元で甘く囁いた。
「……どうした?ここ、触って欲しいのか?」
吐息を漏らしながら頷くと、甘えるように彼に抱き付いた。がっしりとした逞しい腰に腕を回すと、耳元に唇を寄せた。
「賢弥さん……お願い……アタシをイカせて……っ」
「……分かった」
彼はフレアスカートの内側に手を入れ、大事な場所に下着越しに触れた。
「ああ……ここ、凄いことになってんぞ」
意地悪そうにそう言いながら下着の上から何度も指先でなぞった。
「あっ、あぁん、いや、直接触って……早く……っ」
すると、彼は「分かった、分かった」と言って下着の中に手を突っ込んだ。彼の指先が敏感な場所を何度もなぞる。波のような快感が押し寄せる。
「んんっ、はあっ」
彼は指先の動きを早めた。溢れ出る蜜を絡めながら隠れている突起や秘部を激しく愛撫する。アタシは彼の体にしがみついて波のような快感に全身を預けた。
「あっ、ダ、ダメェ……!」
「……珠喜、思い切りイっていい」
低く優しい声でそう言われ、アタシは体を仰け反らせた。
「いやぁ、んんん~~~!!」
肩で息をしながら、彼を見上げる。彼も熱い眼差しでアタシを見つめる。
「珠喜……」
そう呟いて、アタシの唇に自身の唇を重ねた。おもむろに彼の両足の付け根に手を伸ばしてみると、大きくなっているのが分かった。優しく撫でると、彼は唇を離して小さく吐息を漏らし、アタシの首筋に顔を埋めた。そこで、急に彼の動きが止まった。
「……賢弥さん?」
彼は寝息を立てていた。アタシの体を抱き締めて首筋に顔を埋めたまま。何となくそんな予感はしていた。
「もう……何でこれからって時に寝ちゃうのよ……っ」
さっき彼の指で感じた熱がまだ体に残っている。その熱を愛おしく感じながらアタシは眠ってしまった彼の髪を優しく撫でたのだった。
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