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第7話 ときめくって大事ですよね
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「紫紋さん、休憩の時間ですよね、チョコと紅茶はいかがでしょう」
「ああ……声掛けありがとう、どうも仕事が多いと、忘れてしまうんですよね」
お菓子とお茶を差し出して、なぜか二人揃って黙り込む。
紫紋が何を考えているか、さすがに当人でないので想像がつかないところもあるが
千夏は紫紋に会うたびに、正確には目を合わす度に、思うのだ……
恋人ってなんなんだろと……
というのも、そもそも紫紋と千夏は、恋人になってからするようなこと……ようはキスとか、それ以上を先にしており……正直、恋人になって恋をしようと言い出してる……はっきりいえば、順序がめちゃくちゃで、何をすればいいのか分からないのだ。
なんとなく紫紋もどうしようと思っているんじゃないかと千夏は感じていた。
家事を進めているとこの家の猫、まる太がすりすりと足にすり寄ってきた。寂しがりで甘えん坊なのだろう、紫紋が忙しいとすぐに千夏に甘えてくる。
「まる太、今日はおやつないんだよ……今度買ってくるからね」
みぃみぃと鳴いてくる、まる太の背中を撫でると、まる太は愛らしい瞳でこちらを見てきた。
紫紋との距離より、まる太の距離が近づいてるってそれもそれでどうなんだ……と思う。
そこに部屋から出てきた紫紋が通りがかった。カウンセリングの時間が近づくと、部屋から出てきて、もろもろの準備をしだすのだ。紫紋はまる太と戯れる千夏を見ると
「おや、仲良しでいいですね」と言って通り過ぎた。
そんな人の良さそうな声と顔で……もっと関わってくれればいいのに……
そんなふうに思ってしまう自分がいて、じれったい気持ちになった。恋人になる前のほうが、もっと距離が近かったような気がして……変な気分だ。
紫紋は悪魔といえど、ほとんどその片鱗を見せないゆえに、できすぎた人に見える。
けれど恋を知らないという矛盾。紫紋とはいったいどんな人なのだろう……
大学の学食っておいしいところはおいしいらしいが、千夏の大学はそんなに学食に力をいれてないのだろう。安さに比例したような味をしている。ただお腹を満たすことはできるので、よくちゅるちゅるとうどんを食べていた。
そこに慎太郎がやってきた。やたらでかでかとクマのキャラクターのイラストが書かれたシャツを着ている。え、そんなシャツ、着てたっけ……と思いつつ声をかける。
「あれ、慎太郎……香奈はどうしたの」
「あいつは今日授業ないからって……休みだよ休み」
「なんか四六時中、一緒かと」
頭を捻る千夏に慎太郎は苦笑いする。
「んなわけないだろ……お互いの時間があるんだかろ」
急に思い出した。慎太郎の着ているクマのキャラクターどこかで見たことあると思ったけど……香奈が好きなアニメのキャラクターじゃないか……
なるほど……相手の好きなものを身につける……なるほど、そんなに、好きなのか……なるほど……誰かを好きになる影響ってすごい……本気の恋って感じがする。
同じ恋人同士なのに、慎太郎と香奈と紫紋と自分との差異はなんなんだと、肩をすくめそうになるくらいだ。
千夏は何も考えずに言っていた。
「慎太郎って、どういうとき香奈を彼女だなって思うの……?」
「は、何を言ってんの……千夏……」
質問内容に意味不明さを覚えたのだろう。動揺を隠せない慎太郎がいた。
「いや、二人は付き合ってるんでしょ。どういう時、恋人だなって思うの?」
「えーなんか、うまく言えないって感じ……」
「まあ、そうよね」
千夏の疑問に答えようと、慎太郎は真面目な顔で視線をあちらこちらへと向けたが、やがて何か思いついたのか、独り言のように言った。
「なんだろなー、まあ、見てて、こんな胸がキュンとするやついないなって、はは、何を言ってんだが」
慎太郎は自分の言った言葉が照れくさくなったのか、はずかしそうに笑った。そして今の言葉はなかったかのように、次の言葉を吐こうとして、千夏がそれを止めた。
「いや、それ……すごい大事かも」
恋人に、ときめくって……千夏は何かを噛みしめるように呟いた。
「ああ……声掛けありがとう、どうも仕事が多いと、忘れてしまうんですよね」
お菓子とお茶を差し出して、なぜか二人揃って黙り込む。
紫紋が何を考えているか、さすがに当人でないので想像がつかないところもあるが
千夏は紫紋に会うたびに、正確には目を合わす度に、思うのだ……
恋人ってなんなんだろと……
というのも、そもそも紫紋と千夏は、恋人になってからするようなこと……ようはキスとか、それ以上を先にしており……正直、恋人になって恋をしようと言い出してる……はっきりいえば、順序がめちゃくちゃで、何をすればいいのか分からないのだ。
なんとなく紫紋もどうしようと思っているんじゃないかと千夏は感じていた。
家事を進めているとこの家の猫、まる太がすりすりと足にすり寄ってきた。寂しがりで甘えん坊なのだろう、紫紋が忙しいとすぐに千夏に甘えてくる。
「まる太、今日はおやつないんだよ……今度買ってくるからね」
みぃみぃと鳴いてくる、まる太の背中を撫でると、まる太は愛らしい瞳でこちらを見てきた。
紫紋との距離より、まる太の距離が近づいてるってそれもそれでどうなんだ……と思う。
そこに部屋から出てきた紫紋が通りがかった。カウンセリングの時間が近づくと、部屋から出てきて、もろもろの準備をしだすのだ。紫紋はまる太と戯れる千夏を見ると
「おや、仲良しでいいですね」と言って通り過ぎた。
そんな人の良さそうな声と顔で……もっと関わってくれればいいのに……
そんなふうに思ってしまう自分がいて、じれったい気持ちになった。恋人になる前のほうが、もっと距離が近かったような気がして……変な気分だ。
紫紋は悪魔といえど、ほとんどその片鱗を見せないゆえに、できすぎた人に見える。
けれど恋を知らないという矛盾。紫紋とはいったいどんな人なのだろう……
大学の学食っておいしいところはおいしいらしいが、千夏の大学はそんなに学食に力をいれてないのだろう。安さに比例したような味をしている。ただお腹を満たすことはできるので、よくちゅるちゅるとうどんを食べていた。
そこに慎太郎がやってきた。やたらでかでかとクマのキャラクターのイラストが書かれたシャツを着ている。え、そんなシャツ、着てたっけ……と思いつつ声をかける。
「あれ、慎太郎……香奈はどうしたの」
「あいつは今日授業ないからって……休みだよ休み」
「なんか四六時中、一緒かと」
頭を捻る千夏に慎太郎は苦笑いする。
「んなわけないだろ……お互いの時間があるんだかろ」
急に思い出した。慎太郎の着ているクマのキャラクターどこかで見たことあると思ったけど……香奈が好きなアニメのキャラクターじゃないか……
なるほど……相手の好きなものを身につける……なるほど、そんなに、好きなのか……なるほど……誰かを好きになる影響ってすごい……本気の恋って感じがする。
同じ恋人同士なのに、慎太郎と香奈と紫紋と自分との差異はなんなんだと、肩をすくめそうになるくらいだ。
千夏は何も考えずに言っていた。
「慎太郎って、どういうとき香奈を彼女だなって思うの……?」
「は、何を言ってんの……千夏……」
質問内容に意味不明さを覚えたのだろう。動揺を隠せない慎太郎がいた。
「いや、二人は付き合ってるんでしょ。どういう時、恋人だなって思うの?」
「えーなんか、うまく言えないって感じ……」
「まあ、そうよね」
千夏の疑問に答えようと、慎太郎は真面目な顔で視線をあちらこちらへと向けたが、やがて何か思いついたのか、独り言のように言った。
「なんだろなー、まあ、見てて、こんな胸がキュンとするやついないなって、はは、何を言ってんだが」
慎太郎は自分の言った言葉が照れくさくなったのか、はずかしそうに笑った。そして今の言葉はなかったかのように、次の言葉を吐こうとして、千夏がそれを止めた。
「いや、それ……すごい大事かも」
恋人に、ときめくって……千夏は何かを噛みしめるように呟いた。
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