その悪魔、優しいけれど、恋を知りません

雨宮澪

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第27話 嗚咽

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「何を、アル君……」

 驚愕のあまり声の出ない千夏に、アルベルトは追い打ちのように言葉をかける。

「聞いてるんだ、紫紋さんから……堕天使は天から落ちたときに莫大なエネルギーを内包してやってくる。魔界で悪魔よりは数少ないが際立った生命力がある……」

 アルベルトの腕に力がこもる。

「本当に好きなんだ……まだ、力が取り戻しきってないけど、俺、本気で千夏さんを……!」

 どうしようと思った。
千夏には紫紋がいる。紫紋は自分のことを思ってくれるし、自分も紫紋のことが大好きだ。
だからアルベルトの告白は拒否しないといけない。
 だけど自分の不調に紫紋が関与してていると知った今、千夏は自分の立ち位置がわからなくなっていた。
命に関わる恋愛をしているんじゃないかという、自分に危険を及ばす事態に動揺しているのだ。

「アル君……」

 自分の声が思った以上に弱々しくて驚いた。
アルベルトの勢いに飲み込まれそうになっているとわかっていたが、目の端に涙が滲んだ。

「ごめん、急にそんなことを言われても、私、その……」

 頭が回らず言葉がうまく出てこない。
息を整えようとする。頑張っているのに、動揺が収まらない。
そんな千夏に、アルベルトは悲しそうに笑いながら、ぽんと頭をなでた。

「いいよ、すぐに返答しなくていいから……だけど俺、諦めないから」

 アルベルトの真剣な声に千夏は目を伏せる。
こんなにまっすぐと自分に向き合う彼に、自分も誠実に対応しなきゃいけないのに。
ただ、いろいろな事態が重なって胸が苦しくて……千夏は嗚咽を漏らした。
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