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被害者とその保護者
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自警団が在中する建物は、そこから五分ほどの場所にあった。古いが頑丈そうなそこには、帯剣した自警団員が詰めていて、冒険者に取り押さえられていた誘拐犯達は、自警団にそのまま別室に連れていかれた。取り押さえた冒険者たちが、自警団の人達に事情を話していた。これから彼らは取り調べが行われるのだろう。
理緒はダニーと幼児と共にまた違う部屋に通された。ダニーは何かと不慣れな理緒を気遣ってか、同行を申し出てくれたのだ。世事に疎い理緒はダニーの申し出を有難く受けた。通されたのは装飾がなく、応接室を少し、いや、かなり簡素にしたような部屋だった。一応ソファの様なものもあるので、来客対応用の部屋なのだろう。
理緒はそこでダニーと幼児と共に待たされたが、その間にダニーは手にしていたナイフで幼児の猿ぐつわを外した。ナイフを手にしたダニーを幼児は恐怖を込めて見上げていたが、ダニーが直ぐに終わると言い、実際にあっという間に猿ぐつわを外すと、少しだけ警戒を弱めたらしかった。既に泣きすぎて疲れたのか、うとうとし始めているようにも見えた。手が熱いので、もしかしたら眠いのかもしれない。
よくよく見ると、幼児はとても綺麗で可愛らしい容姿だった。お日様の色をした見事な金髪はくるんとカールを描き、目は泣きはらして赤いものの、瞳は晴れ渡った青空の色をそのまま宝石にしたような色だ。目はパッチリ二重だし、鼻も小さいながらもツンと高めで、桜色の唇も賢そうに見える。日本じゃ絶対にお目にかかれない金髪碧眼の、しかもお人形のように可愛らしい姿に、どんな美形になるだろう…と、理緒ですらも将来が楽しみになるほどだった。
そんな子が、理緒にべったりくっ付いて離れないのだ。可愛い小さな手で理緒の服をしっかり握っている様も、子供好きの理緒の庇護欲をそそる。滑らかでぷにぷにのほっぺが腫れて赤くなっているのが痛々しい。今医者も一緒に呼んでいると言うが、泣きもせずにいるところを見ると大きな怪我はなさそうで、理緒は幼児をあやしながら密かに安堵した。
暫く待つ覚悟をしていた理緒だったが、五分と経たずにドアが開いて、三人が部屋に入ってきた。一人は先ほど対応してくれた自警団の男性で、もう一人は身なりがそこそこにいい中年の男性、そしてもう一人はふくよかな年配の女性だった。
「ルイ様!」
部屋に入った途端、身なりのいい男性が声を上げた。幼児の姿を見て目を見開いた後、ホッとした表情を浮かべた。様付で呼んだという事は、この子に仕える人なのだろうか。理緒は幼児に向かい、おうちの人が迎えに来てくれたよ、よかったね、と話しかけたが、幼児は相手の姿を認めた途端、なぜか理緒にぎゅっと抱き付いてきた。幼児のくせに中々に力が強く、理緒の口からは思わずぐぇ!と変な声が出てしまった。
「ル…ルイ様…?」
驚いたのは男性の方だった。よく見ると四十代中ごろくらいで、男性としては小柄な方だろうか?焦げ茶色の髪を短く切りそろえ、灰色がかった青い瞳を大きく見開いて理緒たちの様子を見つめていた。姿勢がいいところから、使用人の中でも上の立場のように見えた。怪しい人には見えないし、幼児への態度も本気でよかったと思っているように見える。
「ほ、ほら…おうちの人だよ?」
「…」
「お迎え…でしょ?」
「…」
幼児が抱き付いて動こうとしないため、理緒が声をかけたが、幼児は一層腕に力を籠めるだけで男性の方を見ようともしなかった。理緒が何回か同じように声をかけたが、幼児は一向に男性の方を向こうともしなかった。
「あんた…本当にこの子の保護者か?」
さすがに二人の様子に不信感を抱いたらしく、ダニーが声をかけた。もしこの子に仕える使用人なら喜んで飛びつくところだろうし、理緒も想像していた再会シーンとはあまりにも差があり戸惑った。こんな小さな子なのだ、まだ親や世話をしてくれる人にべったりな年頃の筈だ。
「は…はい。この方は、辺境伯様の次期後継者に当たられる方です。私は辺境伯様からルイ様の養育を任せられた者で、辺境伯様の家令のマシューと申します」
「へ、辺境伯様?」
「へんきょうはく、様?」
聞き慣れない単語に、理緒が訝し気に繰り返した。
「ああ、リオは知らないのか。まぁ、世間知らずだもんなぁ…でも、辺境伯様は知っておかなきゃまずいぞ。なんせこの辺りを治める領主様だからな」
「領主様?」
「そう、領主様。リオ、お前もここに住むなら領主様のことくらいは知っておけよ」
「は、はぁ…」
そう言われても理緒はピンと来なかった。下っ端で平民の中でも底辺の生活をしている自分は、領主などと言う御大層な人物とは無縁でしかなかったからだ。この先もそんな人達と会う事もないだろう。この国は貴族と平民に分かれていて、その差は歴然なのだ。そんな雲の上の存在の後継者と言われても、理緒はあまり現実味がなかった。
理緒はダニーと幼児と共にまた違う部屋に通された。ダニーは何かと不慣れな理緒を気遣ってか、同行を申し出てくれたのだ。世事に疎い理緒はダニーの申し出を有難く受けた。通されたのは装飾がなく、応接室を少し、いや、かなり簡素にしたような部屋だった。一応ソファの様なものもあるので、来客対応用の部屋なのだろう。
理緒はそこでダニーと幼児と共に待たされたが、その間にダニーは手にしていたナイフで幼児の猿ぐつわを外した。ナイフを手にしたダニーを幼児は恐怖を込めて見上げていたが、ダニーが直ぐに終わると言い、実際にあっという間に猿ぐつわを外すと、少しだけ警戒を弱めたらしかった。既に泣きすぎて疲れたのか、うとうとし始めているようにも見えた。手が熱いので、もしかしたら眠いのかもしれない。
よくよく見ると、幼児はとても綺麗で可愛らしい容姿だった。お日様の色をした見事な金髪はくるんとカールを描き、目は泣きはらして赤いものの、瞳は晴れ渡った青空の色をそのまま宝石にしたような色だ。目はパッチリ二重だし、鼻も小さいながらもツンと高めで、桜色の唇も賢そうに見える。日本じゃ絶対にお目にかかれない金髪碧眼の、しかもお人形のように可愛らしい姿に、どんな美形になるだろう…と、理緒ですらも将来が楽しみになるほどだった。
そんな子が、理緒にべったりくっ付いて離れないのだ。可愛い小さな手で理緒の服をしっかり握っている様も、子供好きの理緒の庇護欲をそそる。滑らかでぷにぷにのほっぺが腫れて赤くなっているのが痛々しい。今医者も一緒に呼んでいると言うが、泣きもせずにいるところを見ると大きな怪我はなさそうで、理緒は幼児をあやしながら密かに安堵した。
暫く待つ覚悟をしていた理緒だったが、五分と経たずにドアが開いて、三人が部屋に入ってきた。一人は先ほど対応してくれた自警団の男性で、もう一人は身なりがそこそこにいい中年の男性、そしてもう一人はふくよかな年配の女性だった。
「ルイ様!」
部屋に入った途端、身なりのいい男性が声を上げた。幼児の姿を見て目を見開いた後、ホッとした表情を浮かべた。様付で呼んだという事は、この子に仕える人なのだろうか。理緒は幼児に向かい、おうちの人が迎えに来てくれたよ、よかったね、と話しかけたが、幼児は相手の姿を認めた途端、なぜか理緒にぎゅっと抱き付いてきた。幼児のくせに中々に力が強く、理緒の口からは思わずぐぇ!と変な声が出てしまった。
「ル…ルイ様…?」
驚いたのは男性の方だった。よく見ると四十代中ごろくらいで、男性としては小柄な方だろうか?焦げ茶色の髪を短く切りそろえ、灰色がかった青い瞳を大きく見開いて理緒たちの様子を見つめていた。姿勢がいいところから、使用人の中でも上の立場のように見えた。怪しい人には見えないし、幼児への態度も本気でよかったと思っているように見える。
「ほ、ほら…おうちの人だよ?」
「…」
「お迎え…でしょ?」
「…」
幼児が抱き付いて動こうとしないため、理緒が声をかけたが、幼児は一層腕に力を籠めるだけで男性の方を見ようともしなかった。理緒が何回か同じように声をかけたが、幼児は一向に男性の方を向こうともしなかった。
「あんた…本当にこの子の保護者か?」
さすがに二人の様子に不信感を抱いたらしく、ダニーが声をかけた。もしこの子に仕える使用人なら喜んで飛びつくところだろうし、理緒も想像していた再会シーンとはあまりにも差があり戸惑った。こんな小さな子なのだ、まだ親や世話をしてくれる人にべったりな年頃の筈だ。
「は…はい。この方は、辺境伯様の次期後継者に当たられる方です。私は辺境伯様からルイ様の養育を任せられた者で、辺境伯様の家令のマシューと申します」
「へ、辺境伯様?」
「へんきょうはく、様?」
聞き慣れない単語に、理緒が訝し気に繰り返した。
「ああ、リオは知らないのか。まぁ、世間知らずだもんなぁ…でも、辺境伯様は知っておかなきゃまずいぞ。なんせこの辺りを治める領主様だからな」
「領主様?」
「そう、領主様。リオ、お前もここに住むなら領主様のことくらいは知っておけよ」
「は、はぁ…」
そう言われても理緒はピンと来なかった。下っ端で平民の中でも底辺の生活をしている自分は、領主などと言う御大層な人物とは無縁でしかなかったからだ。この先もそんな人達と会う事もないだろう。この国は貴族と平民に分かれていて、その差は歴然なのだ。そんな雲の上の存在の後継者と言われても、理緒はあまり現実味がなかった。
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