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2、未だチュートリアルのように、終わりと始まりの狭間に
9、兄と妹
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そしてイベント当日がやってきた。
太陽は燦燦として、風の気持ち良い晴れた空に雲がのんびり泳いでいる。
ネネツィカは兄ヒューバートを連れて会場に出陣した。
「いろいろな商品を売り買いするイベントですの」
という説明で。
執事ティミオスあたりは「それは詐欺では」と首をかしげていたし、なんならヒューバートにはバレているようにも思ったものだが、ヒューバートは意外にも、妹の誘いを断らなかった。スケジュールを調整し、他の予定を入れないようにして時間を確保してくれた。
――なんだかんだ言って、妹が好きなのだ、この兄は。
ティミオスは微笑ましく二人を見守った。
「人が多いな」
ヒューバートが護衛に目をやりながら、ネネツィカの手を握る。数人の護衛が緊張の面持ちで頭を下げた。
「ネネツィカ、はぐれないように」
「はい、お兄様」
見上げる妹は頬を紅潮させ、眼をきらきら輝かせていた。嬉しくて堪らないのだな、と兄は思った。
「そんなに嬉しいか」
「ええ! お兄様!」
妹の声には嬉しさが溢れている――。
(僕と手を繋げて嬉しいのか)
兄の耳がすこし赤くなった。
(ここが同志の集いですの!! お宝商品があっちにもこっちにもありますのぉぉぉおおお!!!)
ネネツィカの内心はこんなだが。
「ネネツィカ、はしゃぎすぎるなよ」
「あらお兄様。それは難しいですわ……、だって、嬉しくてじっとしていられませんもの!」
(僕と一緒にお出かけできるのがそんなに嬉しいのか)
兄はそう思った。
兄妹はそれぞれ幸せな時間を過ごしていた。
「うん? ネネツィカ、あの絵は見覚えがあるぞ」
「あっお兄様……」
ふとヒューバートが絵が並ぶコーナーへと近づいていく。そこには、ネネツィカが描いた兄の絵があった。1枚の絵が複製技師により何枚にも複製されて、安値で並べられている。
「ネネツィカ、これは……」
驚く兄。幸い、絵はひとりだけの絵であった。服も着ている。健全だ。
「あ、あの。アタクシが描いた絵ですわ」
「ネネツィカの絵が、商品になっているというのかい?」
ヒューバートは心底驚いたようだった。
「それも、僕の絵を」
「このマーケットは、そういう催しなのですわ。子どもでも誰でも、気軽に自分がつくったものを商品として出して参加できますの」
ネネツィカがドキドキしながら見守る。ヒューバートは無言で自分の絵を買い占めた。
「我が妹は天才だと常々思っていたが、確かに天才だ。将来は画聖にでもなるのだろうか……しかし、なぜ僕を?」
「それは、お兄様が美男子だからですわ」
「そ、そうか」
絵の売り子はやりとりをしらーっと聞きながら、売り切れたヒューバートの絵の在庫を箱から出して並べた。ヒューバートはさっとすべてを掴み、再び買い占めた。
「僕の妹の画力が金になるほど高いのはよくわかった」
しかし、この商売はどうなんだろう。
勝手に売られる側の立場とは――。
「ネネツィカ。こんな方法で僕を驚かせるとは思わなかったよ」
妹を見つめる兄の眼は、いつもより優しかった。絵の能力を認めてくれている気配だし、なにやら嬉しそうだ。とても機嫌が良い。こんな兄を視るのはいつぶりだろう? ネネツィカは目を丸くした。
「次からは、モデルにしていいか聞いてからにしてくれるともっと嬉しいかもしれないのだが」
――お兄様も、マーケットがお気に召したようでよかったですわ!!
「きいているかい、ネネツィカ」
「アタクシ、お兄様に気持ちが伝わってうれしいですわ」
――妹は僕の気を惹きたくて、好意を伝えたくて、こんなサプライズをしたのか!!
まったくの勘違いなのだが。
その勘違いゆえに兄妹はこの日、幸せな時間を過ごすのであった。
太陽は燦燦として、風の気持ち良い晴れた空に雲がのんびり泳いでいる。
ネネツィカは兄ヒューバートを連れて会場に出陣した。
「いろいろな商品を売り買いするイベントですの」
という説明で。
執事ティミオスあたりは「それは詐欺では」と首をかしげていたし、なんならヒューバートにはバレているようにも思ったものだが、ヒューバートは意外にも、妹の誘いを断らなかった。スケジュールを調整し、他の予定を入れないようにして時間を確保してくれた。
――なんだかんだ言って、妹が好きなのだ、この兄は。
ティミオスは微笑ましく二人を見守った。
「人が多いな」
ヒューバートが護衛に目をやりながら、ネネツィカの手を握る。数人の護衛が緊張の面持ちで頭を下げた。
「ネネツィカ、はぐれないように」
「はい、お兄様」
見上げる妹は頬を紅潮させ、眼をきらきら輝かせていた。嬉しくて堪らないのだな、と兄は思った。
「そんなに嬉しいか」
「ええ! お兄様!」
妹の声には嬉しさが溢れている――。
(僕と手を繋げて嬉しいのか)
兄の耳がすこし赤くなった。
(ここが同志の集いですの!! お宝商品があっちにもこっちにもありますのぉぉぉおおお!!!)
ネネツィカの内心はこんなだが。
「ネネツィカ、はしゃぎすぎるなよ」
「あらお兄様。それは難しいですわ……、だって、嬉しくてじっとしていられませんもの!」
(僕と一緒にお出かけできるのがそんなに嬉しいのか)
兄はそう思った。
兄妹はそれぞれ幸せな時間を過ごしていた。
「うん? ネネツィカ、あの絵は見覚えがあるぞ」
「あっお兄様……」
ふとヒューバートが絵が並ぶコーナーへと近づいていく。そこには、ネネツィカが描いた兄の絵があった。1枚の絵が複製技師により何枚にも複製されて、安値で並べられている。
「ネネツィカ、これは……」
驚く兄。幸い、絵はひとりだけの絵であった。服も着ている。健全だ。
「あ、あの。アタクシが描いた絵ですわ」
「ネネツィカの絵が、商品になっているというのかい?」
ヒューバートは心底驚いたようだった。
「それも、僕の絵を」
「このマーケットは、そういう催しなのですわ。子どもでも誰でも、気軽に自分がつくったものを商品として出して参加できますの」
ネネツィカがドキドキしながら見守る。ヒューバートは無言で自分の絵を買い占めた。
「我が妹は天才だと常々思っていたが、確かに天才だ。将来は画聖にでもなるのだろうか……しかし、なぜ僕を?」
「それは、お兄様が美男子だからですわ」
「そ、そうか」
絵の売り子はやりとりをしらーっと聞きながら、売り切れたヒューバートの絵の在庫を箱から出して並べた。ヒューバートはさっとすべてを掴み、再び買い占めた。
「僕の妹の画力が金になるほど高いのはよくわかった」
しかし、この商売はどうなんだろう。
勝手に売られる側の立場とは――。
「ネネツィカ。こんな方法で僕を驚かせるとは思わなかったよ」
妹を見つめる兄の眼は、いつもより優しかった。絵の能力を認めてくれている気配だし、なにやら嬉しそうだ。とても機嫌が良い。こんな兄を視るのはいつぶりだろう? ネネツィカは目を丸くした。
「次からは、モデルにしていいか聞いてからにしてくれるともっと嬉しいかもしれないのだが」
――お兄様も、マーケットがお気に召したようでよかったですわ!!
「きいているかい、ネネツィカ」
「アタクシ、お兄様に気持ちが伝わってうれしいですわ」
――妹は僕の気を惹きたくて、好意を伝えたくて、こんなサプライズをしたのか!!
まったくの勘違いなのだが。
その勘違いゆえに兄妹はこの日、幸せな時間を過ごすのであった。
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