竜と王冠のサクリファイス~乙女ゲームの攻略キャラたちがお互いを攻略して王都炎上?

浅草ゆうひ

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6、ゲームのスタート

47、「時間が止まってる受けに好き放題」な攻め技なるもの

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 ――ネネツィカによる前回のあらすじ「陰口男子をぱしーんしたらティミオスが湧きましたわ」。

「ねええ! あなた達はどう思います!? この執事――っ?」
 一緒に部屋に入ったエイヴンとひょろのっぽに話を振ろうとしたネネツィカは、ぎくりとした。2人は彫像ちょうぞうにでもなったみたいに瞬きひとつせず、動きを止めている。壁に架けられた時計も、時を刻むのを忘れたように沈黙していた。
「え、エイヴ……フィーリー先生?」
 椅子に座ろうとした中腰の姿勢で不自然にストップしているエイヴンのくすんだ緑の髪をわしゃわしゃして、頬をふにっとして、それでも反応がない事にネネツィカはびっくりした。
「やだ。薄い本でたまに見る『時間が止まってる受けに好き放題』みたいなシチュエーションになってますわ……」
 乙女心がトゥンクしたのは、ネネツィカだけの秘密だ。
「ティミオスの仕業ですの? こんな攻め技があったなら、アタクシ、アタクシ……ティミオスを攻めにしたくなっちゃいますわ」

「……お嬢様……」
 ティミオスがそっと目元を拭う仕草をした。涙は一滴も出ていないが。

 そんなティミオスに「でもやっぱり受け」と呟きかけて、ネネツィカはハッと状況を思い出した。
「アッ、そうそう、衝撃でなんか一瞬忘れちゃいましたわ。ティミオス、どうしてここにいますのよ。ここは学院――」
「申し上げましたように、わたくしはサポートキャラでございますので、ゲームの間は『お嬢様』の傍にいつでも姿を現すのでございます」
 ティミオスは整った顔に綺麗な微笑みを浮かべて、「さきほどのイベントはお疲れ様でございます。お嬢様の勇姿、この執事もしかと見届けました」とねぎらうような事を言った。
「むむっ、褒めてくれますの? ありがとうですわ。……御用はそれだけですの?」
 いつでも動けるような体勢でティミオスをじろりと見るネネツィカに、執事は淡々とした眼差しを向けた。
「お嬢様がゲームをお楽しみいただけるよう、わたくしはいつも控えております。過去のイベントの振り返りはもちろん、気になる方との現在の友好度をお教えすることもできますし、時を巻き戻してやり直しすることも」
 ティミオスの声はすらすらと淀みない。けれど、ネネツィカにはさっぱりだ。時を巻き戻すというのは物凄い事に聞こえるが。
「貴方、……本当に、なんだか変わってしまったみたい」
 ネネツィカはぽつりと呟いて、手を水平に振った。
「必要があれば呼びますわ。それでよくって? ――今は、引っ込んでなさい」
 執事は優雅に一礼して、「かしこまりました」という声を残して消えていった。

「はあ」
 ため息をふっと付く。その瞬間、周囲の時が動いた。
「二人とも、座りなさぁい」
 エイヴンが先生らしい声で席を示す。その様子は全く直前のネネツィカと執事のやりとりなんか見ていないといった風情で、ネネツィカは改めて事の異常さを思った。
「先生、ダメ元でききますけど……今の見てました?」
「え、なに?」
「あ、なんでもありませんの」
 これは、だめね。本当に知らない顔ですわ。
 ネネツィカは頭を振って椅子に座った。

(でも、あの神出鬼没なティミオスが他人に認識されないなら、それはそれでいいんじゃないかしら? だって、周りにいる人になんて言いますのよ)

『今のは……家からついてきちゃった変な執事ですわ。たまに湧きますの』
 ――ありのまま説明すると、こんな言い訳しかできませんわ。

「はあ――アタクシ、入学早々なんだか、たいへんですの」
 思わず愚痴るネネツィカの言葉をどう勘違いしたのか、エイヴンが先生顔でうん、と頷いた。
「まあまあ。二人ともまだ12歳じゃないか、そんなにたいへんなことにはならんって。お説教して、仲良くしようね、で終わりにするさ。君は念のため保健室にも行こうか?」
 先生スマイルを浮かべてひょろのっぽを見るエイヴン。
「簡単に、すぐ終わらせるよ。二人とも、自己紹介から始めようか。俺は――先生は、エイヴン・フィーリー。フィーリー君とは同じ姓だな。親近感が湧くね」
 とぼとぼと処刑台に連れていかれるような顔で連行されて、人生終わった感を出していたひょろのっぽは、そのスマイルに少し安心したようだった。
「アッシュ・フィーリーです」
 ひょろのっぽは、そう名乗った。
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