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7、春の学院生活
78、エリック王子のハーレムへの道乗り
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エリック王子が無駄にキラキラした目で王子様スマイルを浪費している。
「ハーレム……ですか」
「そう、ハーレム……だ」
男に二言はない。言ったからには撤回しない。そんな感じの自信満々な顔――なんだかおかしい事を言った気がするけど、彼が堂々とそう言うならおかしいと思う自分がおかしいのかもしれない。
居合わせた誰もがそんな錯覚を覚えてしまいそうになった、そんな時。
取り巻きたちがキープアウトのテープを手に持って広げて、余人が入り込めない立ち入り禁止の空間を二人の周囲に作っている。腕に『キープアウト班』の腕章を付けて。薔薇を巻いているのは、『薔薇班』だ。
学年も様々な少年たちは、「この国の将来を背負うのは自分だ」という顔で崇高な仕事(と本人は思っている)に努めていた。王子は特別な存在。そして特別な王子の取り巻きでいられる自分たちも、やはり特別! 王子のために尽くし、王子に喜んでもらう。それは特別な彼らにしかできない、崇高で特別な役割なのだ……!
「薔薇班、少し薔薇が足りないです。どうぞ」
糸電話をそれっぽく使って薔薇班の班長が真剣な顔で連絡するのは、補給班だ。
「補給班より薔薇班へ。5分後に新しい薔薇が現地に到着予定。どうぞ」
王子のため、自分たちのため――阿呆っぽく見えても彼らは真剣なのだ。
「あっ、マジェス君。さすがにヤバいよ、今邪魔したら……」
静止するアッシュをスルーして、デミルが二人の世界に入っていく。キープアウト班が騒然となった。
「キープアウトに押し入ろうとする少年が! 応援求む!」
「止めろ! 王子の邪魔をさせるな!」
馬鹿らしいそんな騒ぎがほんの3歩ほどの距離で展開されている。
「これ、何の遊び?」
デミルはあっさりと親指程の幅の紙製キープアウトテープを破り、一歩だけ距離を詰めた。それだけの距離しかないのに、紙のテープで仕切っただけで二人の世界ができるわけがないじゃないか。そんな至極当然なツッコミを目に浮かべ、全く遠慮せずにエリック王子の腕を掴んだ。
「講義に遅れちゃうってさ。放してあげなよ」
アッシュが「マジェス君!」と悲鳴をあげている。
眼鏡の奥の瞳が不思議そうに瞬いて、エリック王子を映した。
「今、大切な話をしてたんだ。邪魔をしないでほしいな」
エリック王子が眉を寄せた。入学したての時、寮で交わしたやりとりを思い出しながら。
――こんな目で、あの時も邪魔をした。
その瞳に映る自分は、ティーリーや先生が言ったような『特別な王子』のおくるみをはがされたようで、落ち着かない。せっかく用意された金ぴかの階段にのぼって高い所から気持ちよく皆の求める王子を演じていたのに、階段を全て壊されて「お前はただの子どもだ」と言われたような心地になるのだ。
「大切な話? ハーレムをつくるのが大切なの?」
デミルがとろりと笑った。
「夏に、海に行こうってだけだ。ハーレムは……冗談みたいなものだよ」
口ごもるエリック王子に、皆が「冗談だったんだ」と胸をなでおろした。
「ハーレム、いいと思いますわ」
意外な事にネネツィカが二人の間にそんな声を響かせた。
「え?」
「ん?」
二人が少女を視る。少女はドヤった顔になり、妙案を思い付いたとでも言いたそうに胸を張った。
「みんなで海に行きましょう。アタクシ、他にも予定がありますから、日程は調整が必要だと思いますけど――デミルもアッシュも、エリック様のご友人もアタクシの友達も、みんなで海に行くのですわ!」
賑やかで楽しいと思いますの!
そう笑って、そうそうとネネツィカは大切な事を付けたした。
「もちろん、クレイも一緒に行くのですわ! そして、クレイはエリック様がお誘いしてね!」
この後の講義が美術、数学、呪術と続く予定のネネツィカは、自分が次にクレイに会うのは呪術の講義の予定なのだと告げて。
「それまでにお誘いしてくださる? それができましたら、海でハーレムですわ! 楽しみですわね!!」
なかなかの無茶ぶりをしたので、エリック王子は笑顔を崩してこの世の終わりみたいな顔をした。
「ハーレム……ですか」
「そう、ハーレム……だ」
男に二言はない。言ったからには撤回しない。そんな感じの自信満々な顔――なんだかおかしい事を言った気がするけど、彼が堂々とそう言うならおかしいと思う自分がおかしいのかもしれない。
居合わせた誰もがそんな錯覚を覚えてしまいそうになった、そんな時。
取り巻きたちがキープアウトのテープを手に持って広げて、余人が入り込めない立ち入り禁止の空間を二人の周囲に作っている。腕に『キープアウト班』の腕章を付けて。薔薇を巻いているのは、『薔薇班』だ。
学年も様々な少年たちは、「この国の将来を背負うのは自分だ」という顔で崇高な仕事(と本人は思っている)に努めていた。王子は特別な存在。そして特別な王子の取り巻きでいられる自分たちも、やはり特別! 王子のために尽くし、王子に喜んでもらう。それは特別な彼らにしかできない、崇高で特別な役割なのだ……!
「薔薇班、少し薔薇が足りないです。どうぞ」
糸電話をそれっぽく使って薔薇班の班長が真剣な顔で連絡するのは、補給班だ。
「補給班より薔薇班へ。5分後に新しい薔薇が現地に到着予定。どうぞ」
王子のため、自分たちのため――阿呆っぽく見えても彼らは真剣なのだ。
「あっ、マジェス君。さすがにヤバいよ、今邪魔したら……」
静止するアッシュをスルーして、デミルが二人の世界に入っていく。キープアウト班が騒然となった。
「キープアウトに押し入ろうとする少年が! 応援求む!」
「止めろ! 王子の邪魔をさせるな!」
馬鹿らしいそんな騒ぎがほんの3歩ほどの距離で展開されている。
「これ、何の遊び?」
デミルはあっさりと親指程の幅の紙製キープアウトテープを破り、一歩だけ距離を詰めた。それだけの距離しかないのに、紙のテープで仕切っただけで二人の世界ができるわけがないじゃないか。そんな至極当然なツッコミを目に浮かべ、全く遠慮せずにエリック王子の腕を掴んだ。
「講義に遅れちゃうってさ。放してあげなよ」
アッシュが「マジェス君!」と悲鳴をあげている。
眼鏡の奥の瞳が不思議そうに瞬いて、エリック王子を映した。
「今、大切な話をしてたんだ。邪魔をしないでほしいな」
エリック王子が眉を寄せた。入学したての時、寮で交わしたやりとりを思い出しながら。
――こんな目で、あの時も邪魔をした。
その瞳に映る自分は、ティーリーや先生が言ったような『特別な王子』のおくるみをはがされたようで、落ち着かない。せっかく用意された金ぴかの階段にのぼって高い所から気持ちよく皆の求める王子を演じていたのに、階段を全て壊されて「お前はただの子どもだ」と言われたような心地になるのだ。
「大切な話? ハーレムをつくるのが大切なの?」
デミルがとろりと笑った。
「夏に、海に行こうってだけだ。ハーレムは……冗談みたいなものだよ」
口ごもるエリック王子に、皆が「冗談だったんだ」と胸をなでおろした。
「ハーレム、いいと思いますわ」
意外な事にネネツィカが二人の間にそんな声を響かせた。
「え?」
「ん?」
二人が少女を視る。少女はドヤった顔になり、妙案を思い付いたとでも言いたそうに胸を張った。
「みんなで海に行きましょう。アタクシ、他にも予定がありますから、日程は調整が必要だと思いますけど――デミルもアッシュも、エリック様のご友人もアタクシの友達も、みんなで海に行くのですわ!」
賑やかで楽しいと思いますの!
そう笑って、そうそうとネネツィカは大切な事を付けたした。
「もちろん、クレイも一緒に行くのですわ! そして、クレイはエリック様がお誘いしてね!」
この後の講義が美術、数学、呪術と続く予定のネネツィカは、自分が次にクレイに会うのは呪術の講義の予定なのだと告げて。
「それまでにお誘いしてくださる? それができましたら、海でハーレムですわ! 楽しみですわね!!」
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