竜と王冠のサクリファイス~乙女ゲームの攻略キャラたちがお互いを攻略して王都炎上?

浅草ゆうひ

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7、春の学院生活

82、ティミオスの魔法

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「アタクシに必要なのは、情報だわ。とはいえ、今は時間があまりないから――まずは、現在の『攻略対象』の情報が欲しいかしら」
 
 ――微風と魔力に煽られてその髪がさらりと揺れて、先がすこし尖った耳が覗いていた。
 ティミオスは優秀な執事で、なんでもネネツィカのおねだりをきいてくれる。それは、サポートキャラだからじゃないわとネネツィカは決めつけるように声に出して言ってやった。そうすると青年は不思議と嬉しそうに笑うので、ネネツィカも嬉しくなった。
「ティミオスは、アタクシのことが好きでしょう! アタクシも、ティミオスが大好きよ!」
 不遜に傲慢に笑む――そうすると、執事は嬉しそうに頭を下げる。
「わたくしも、ネネツィカお嬢様が大好きですよ」
 澄ました青年の声でそう言って、呪術ではなく魔法の光を見せる。

 魔力の軌跡が空間に奔る。
 淡い光が神秘的に煌めいて、虚空に人物の映像を作り上げて並べていく。

「エリック・ティーリー・ファーリズ……14歳。生まれてからずっと周囲の求める振る舞い方や生き方を強く意識し、第二王子という偶像の生き方に従ってきた彼は、イレギュラーを愛し、周囲に定められたのとは違う道を選びたがる性質です。現在は、お嬢様に好意を寄せているように見えますが――その実はお嬢様が理想に掲げた何かに執着していらっしゃる。彼の本質は、負けず嫌いです。1番だと言われたいのでございます。
 お気をつけください。彼は、『ゲーム』が創造主の予定通り進行するよう守護している白竜ティーリーの近くにいて、その権能により――接し方を誤ると暴君に成り得ます。

 デミル・マジェス……年齢不詳。かつてこのファーリズの地で妖精たちの遊び場を統括していた、勇者に封印された古の大妖精です。現在本人の記憶と力の大半は封じられていますが、呪術の会得を目指しているようですね。わたくしはどちらかといえば妖精陣営の性質が強く、お嬢様も妖精と相性の良い生来の特質を持っていらっしゃいます。ゲームの聖女と比べれば、彼と親しくなるのは各段に容易いことでしょう。
 彼は可能性の塊です。封印を解き、呪術をマスターすれば竜の力を越えて世界の勢力図を一気に塗り替えたり、世界そのものを滅ぼすことも可能となりましょう。

 オスカー・ユンク……16歳。ユンク伯爵家の令息である彼は、理性より感情で動く少年――好奇心旺盛で奔放、活発な行動力を持っています。貴族の美徳にはあまり縛られる事なく、時にはアンモラルな行動を選ぶ事も。ユンク伯爵家は隣国アイザールにも太いパイプもあり、手札をコレクションしてそれを惜しまず使う性格。お嬢様は、あまり彼と関わっていらっしゃらないご様子ですね。それもあってか現在彼の興味は別の人物に向いているようです。隣国アイザールは元王太子シリル・ティーリー・ファーリズの亡命、潜伏先でもあることも付け足しておきましょう。

 ヴァルター・アンドルート……25歳。魔術の腕は高く知識も豊富な彼が求めているのは、妖精との共存という未来、その可能性。ある意味、この国では危険思想と言えるため、それは公言されることはありませんが。実は、この情報は本人は勿論、勇者もまだ知りませんが――彼は北のラーフルトンの血脈に連なる者でございます。言うならばとても遠いご親戚、といったところ……。妖精の血が混ざり、魔法を扱える天才は元々希少ですが、ラーフルトンの血は勇者にとっては特別な意味を持ちますので、この事実が使えるかはさておき、お嬢様が覚えておいて損はないかもしれません」

 滔々と続いた話が途切れ、風が吹く。

「以上でございます、お嬢様」

 ネネツィカは少し考えて、ティミオスが語らなかった名前の狭間で一瞬迷った。
「なぜ、それしかいないの」
「彼らが攻略対象から外された、もしくは外れたからでございます」
 
 まったく、知らないところで何が起きているのだか。

「ゲームじゃないわ。これは、現実なんだから」
 言い聞かせるように呟いて、ネネツィカは言葉を続けた。

「アタクシに、場所を教えて――ううん。やっぱり、いい。聞かなくてもわかるわ」
 ふわりと浮かんだその場所に向けて、ネネツィカは走り出した。
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