竜と王冠のサクリファイス~乙女ゲームの攻略キャラたちがお互いを攻略して王都炎上?

浅草ゆうひ

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9、裏切りの勇者と妖精王の復活

116、オスカー・ユンクの暴言劇場

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 オスカー・ユンクの声が快活にそれを語るのを、木陰で呪術師レネン・スゥームが聞いていた。何故って、ご主人様が「どうやって口説くの?」と、とても興味を抱いていたのと、万一のやらかしに備えてだ。
 しかし、この内容は酷すぎやしないか。
 
「クレイ様は、やはり特別な血統書付きだけあって、お高く留まってるわけですよ。サービス精神が最悪で加護を出し惜しむのなんの。初見でちょっと見知らぬ奴が頼んでも言う事きくわけないじゃあないですか」

 オスカーは、軽くドン引きしているフィニックスにニカニカと白い歯を見せて、全く悪びれずに続きをどんどん語る。
 
「ですが、中身は所詮ご友人に恵まれなくて寂しい『おこちゃま』ですよ――優しくすれば、意外とちょろい! お育ちがよろしいのでお人好しで、騙されやすい! 正直で、嘘がおへた! そのへんに落ちてるのをなんでもホイホイ拾われて、裏切られても怒らないで傍に置いちゃう! あれは駄目ですね!」

 ――なんてことを仰るんでしょう! あれだけ親し気に振る舞って置いて、これは許されませんよ!!
 レネンはよほど暗殺仕掛けてやろうかと思ったが。

「そして、傍に置いて身内感出てくると、加護をほいほい使ってくれます。何にでも。何にでもです。俺が喉乾いたって言っただけで加護で水をくれます」

 ――ああ、嘘じゃないですか。
 このあたりで一度落ち着いた。
 それにしたって、酷い。
 
「……それはさすがに嘘なのでは」

 フィニックスも、蒼褪めている。この騎士さんは常識的な方のようで――レネンは同情した。

「そして、ご自分が王様になろうなんて考えていませんっ。野心がないのですな。で、ありますから、貴方が身内になられて、シリル王子を王様にしたいなと言ったら、「うんわかった」って言って加護を使いまくって、王様にしてくれまぁす!!」

 オスカーははっきりと断言した。
 全力で「間違いない」という眼で保証した。
 
 ――これは酷い。うちの陣営をシリル王子を国王にするために利用しろって唆してるじゃ、ありませんか!?

「実は貴方が前にクレイ様にご依頼なさった時、クレイ様は第二王子とそれはもう親しい仲でいらして、第二王子のために加護を注ぎ込んでおられたんですよ! ですが、今はお二人は仲たがいなさり、お互いにバチバチと攻撃しあってるわけであります! さて、王様になろうなんて考えていないクレイ様は、『第二王子の代わりに尽くす主』がほしいわけですねっ!」
 揉み手をしながら語るオスカーに、フィニックスは呆然と頷いた。

「な、なるほど――なるほ、ど……?」

「ですからぁっ、貴方はシリル王子のために、一時的にクレイ様の陣営の『ナイト』としてお邪魔して、ちょろいクレイ様に懐かれて親しくなった上でクレイ様にシリル王子を主として加護を振る舞うよう売り込めば――」
 それにしても、とレネンは困り果てた。
 加護のあたりが嘘なのはわかるが、他の「ちょろい」やら「懐かれて親しくなった上で売り込めば」のあたりなどは、本心なのか嘘なのかわかったもんじゃない。
 事実、この貴公子は「懐かれて親しくなった上で自分と伯爵家を売り込んだ」のだ。
 
 その姿がふと驚愕に見開かれ、一点を見つめた。
 釣られて見たオスカーが減らず口をぽかんと開けたままにして、レネンはぎょっとして尻餅をついた。

 そこには、第二王子と白い守護竜、眼を瞑ったティーリーがいたからだ。

「……あいつに『ナイト』なんて、渡すもんか!!」
 第二王子の声と共に竜が目を見開いて、『鮮血』の二つ名を持つ青年が、がくりと意識を失った様子で項垂れ――その全身が、浮いた。

「えっ」
 
「この騎士はオレが城に連れ帰って、オレの騎士にする。これの友人も、オレの護衛だしね」
 竜が頷いて、第二王子が騎士をその背に荷物のように置いて自分も騎乗した。どこかで誰かが『神はありのままを……』と怯え切った声で唱えるのが聞こえたが、第二王子は「今消え去るから黙っててくれないか!」と言って睨んだ。

 レネンもよく知る伯爵令嬢がいつの間にか飛び立つ竜の下にいて、何かを言っていた。

「それくらいで嫌われると思ってるんですか? エリック様は、前から思っていましたけど――」

 ――言い終わるより先に、竜は王城の方角に疾風のように天翔けて消えた。

「……ずるくないですかねえ? あれ」
 オスカーが自分の方を見て言うので、レネンは姿を現した。
 あの暴言の数々を自分が聞いていると知った上でやっていたのだと理解すると、もはや竜や王子より目の前の公子への怒りが勝った。

「な、なんと、なんという……全部言いつけてやりますよ!!」
「あっ、それはまずいですって――」
 伯爵令嬢はさておき。
 オスカーの耳を引っ張って、レネンは主のもとに帰還したのであった。
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