竜と王冠のサクリファイス~乙女ゲームの攻略キャラたちがお互いを攻略して王都炎上?

浅草ゆうひ

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9、裏切りの勇者と妖精王の復活

117、今オレ、衝動的にお前の友人攫ってきちゃったんだけど

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 王城に帰還したエリックは、留守を任せていた、自分の兄貴分ともいえるお気に入りの騎士オーガスト・ウィンザーが出迎えてくるのを何とも言えない思いで見つめた。

 いや、どうしたらいい?
 今オレ、お前の友人攫ってきちゃったんだけど。
 つい、衝動的に。

「おかえりなさいませ、殿下――そ、その、そちらは」
「ウィンザー卿……オーガスト」
 いつかそうしていたように、名前で呼び直す。そうすると、オーガストは少し懐かしそうな顔をして少しだけ緊迫した表情を緩めてくれた。

 赤毛の騎士に手を伸ばす事はせず、オーガストはその場で膝をついてエリックの顔を見上げた。ちょっと困ってる顔だ。そうだろう、オレが君の立場でも大いに反応に困ると思うんだよ、とエリックは困り顔に向けて内心で語り掛けた。
「この騎士は、いかがなさいましたか、エリック殿下」
 弟に語り掛けるみたいに温かに聞いてくれる。
 ああ、何を言っても聞いてくれるけど、結構すれ違いがちなんだよな。たぶん、伝え方が悪いんだ。わかってる!
 よし今回も言っちゃうぞ。

「オーガスト、落ち着いて聞いてほしい」
「は」

 エリックはオーガストをたっぷり見つめた。
 笑顔をつくる余裕がなかった。きっと、気付かれている――気付いてほしいのかもしれなかった。
 
 そうだ。
 気付いてくれてもいいじゃないか。
 オレはいつも、演じてたんだぞ……いつも、気付かないじゃないか?
 だから、だから、本音みたいなものがずっと奥に隠れていっちゃって、よくわからなくなるんだよ。

 そのまま、ぶつけてやるよ、もう。
 エリックは子どもっぽく唇を尖らせて、迷子みたいに言った。
 
「いや、どうしたらいい?
 今オレ、お前の友人攫ってきちゃったんだけど。
 つい、衝動的に」

 オーガストは、もうなんかこれまでのあれこれで耐性ができたのだろうか。
 静かな眼をしていた。

「まず……あれです。いつも思っておりましたが、もうすこし言葉をおききしたいですね」
 保護者然とした顔が、そう言った。
 それは多分、子どもっぽく振る舞ったからなのだろう。

 『キミはまだ大人じゃないよ』――先生の言葉が思い出された。
 
「お部屋でお茶でも飲みつつ、ご事情を聞かせていただいても、よろしいでしょうか……?」
「うん」
 エリックは頷いて、騎士にその友人を託した。

「まあ、一言で言うと、……」
「一言で言わなくていいですよ。むしろ、一言で言おうとしないでください?」

 ほかほかのお茶を前に言葉を交わしていると人間らしさが戻ってくるような心地がした。
 
「うん」
 だから、エリックは素直に頷いた。ずっとずっと小さな子どもに戻ったみたいな気分で。


「まあ、一言で……」
「一言で言わなくていいと――」
「言おうとしても、一言でまとめられないや」

 それからエリックは、自分の『ナイト』と長い長い話をした。
 その時間はあの少女に会うよりも前に何度もあった時間だったと思いだせば、なんだかすごく懐かしかった。

 そして、思い出すのだった。

「そうだ。ハーブティーを淹れた時、クレイにもこんな風に全部相談しようと思ってたんだ」

 なのに、あいつは倒れちゃったんだ。

 だから――話せなくなった……。
 
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