竜と王冠のサクリファイス~乙女ゲームの攻略キャラたちがお互いを攻略して王都炎上?

浅草ゆうひ

文字の大きさ
126 / 260
9、裏切りの勇者と妖精王の復活

118、今日から始まるキング・サクリファイスへの道

しおりを挟む
「いいですか、ありのまま話しますよ! ありのままですからね!」
 公爵家では、レネンが一部始終を本当にありのまま話したので、室内の『盗賊上がり』たちは呆然として主の反応を見守った。

 やらかしたオスカーはといえば、見た目は殊勝に膝をついて、まるで反省するかのように首を垂らしている。

「『鮮血』については……他国に流れなかったなら、良いんじゃないかな」
 読みかけの勇者の本を傍らに伏せて、クレイは首を傾げてレネンとオスカーを見比べた。

 ――レネンが怒るのも無理のない内容なのは確かで、ぼくは怒ってもいい。

 しかし、その内容が結構面白いのだ。

(ぼくが第二王子のために加護を使っていた。
 王様になる気がないから、代わりの主に尽くしたい、と)

 ふむふむ、と思案気に睫毛を伏せる少年を取り巻く従者たちは、妙に長い沈黙に重苦しく黙り込んで反応を待つしかなかった。

 従者の存在を忘れたように、少年の中で思考が巡る。
(第三王子は加護があったけれど、守護竜がエリックを守ったから、守られずに亡くなった。
 ……ぼくは、『別の誰かをアスライトに守らせているから不在なんだ』と言い張れば、自分に加護がない言い訳に使えるのでは)

 公爵家が『クレイが暗殺された時や事故に遭った時』に頭を悩ませていた理由の一つがそれだった。
 加護を与えし守護竜は守ってくれなかったのか、と言われてしまうのだ。
 けれど、第三王子の例ができたので、少なくともそれを回避できる。
 ――尤も、『加護があるから襲っても無駄ですよ』という視えない盾がこれまで水面下で多少は機能していたのだろうから、『今他人に貸していて無防備ですよ』と言ってしまったら暗殺者が増える事間違いなしだろうけど。

「ショックが大きすぎたのでは」
 壁際で護衛たちが囁きを交わしている。この護衛たち、暗殺者が増えたら大丈夫だろうか? レネンなんか過労死してしまうんじゃないだろうか。クレイはそっと心配した。心配しつつ、ずっと言葉を待っているらしき白頭を視た。
(ぼくが王様になる気がなくて、主に尽くしたい……というのも、とても良い発想だね)

 考えてみれば、いつからか自分をキングの駒として防衛をしていた、と思い返せば恥ずかしくなってくる。
(ぼくは、母の子かわからなくて、下手すると父の子でもなくて、ユージェニーみたいに孤児院かどこかで拾われてきたルーツ不明のどこぞの馬の骨かもしれないのだ)
 そんな自分が『キング』など、考えれば考えるほど思い上がっているではないか。

 ――しかし、キングだと思って守っていた駒がキングではないと発想を変えると、戦い方はがらりと変わるのだ。
(守っていた『偽キング』を捨ててしまうんだ。獲らせてやる。そして、『偽キング』に釣られた『女王ティーリー』を獲る)
 ティーリーを釣るのは、もはやとても簡単な事のように思えた。
 もちろん問題点がないわけでは、ない。けれど、加護の貸し出しと合わせてそれをすれば、その些細な問題点の他はとても綺麗に抑えられるんじゃないかな? キング・サクリファイスだ。今日から始まるキング・サクリファイスへの道だ。とても、めでたい。目指すゴールが策定できたぞ。
 
「坊ちゃん、坊ちゃん? 大丈夫ですか?」
 レネンが「そろそろ、なにか反応を」と促している。
 
「うん、大丈夫だよ」
 室内中から視線が集中している。ひとりだけ、置物になったみたいなのがいるが。
「うまくいかなかったようだけど、苦労をしたのは間違いない。ご苦労だったね、オスカー。その労力と費やしてくれた時間をぼくは労うべきだと思う」
 献身とか忠誠という言葉は使わないでおいたが、それでもレネンは「労わなくていいですよ!?」と目を剥いた。
「ぼくにはどう口説いたものかわからなかったので、とても興味深く、参考になる話だった。ぼくにはない新鮮な発想だった。レネンもありがとう」
 
 おかげでぼくはエリックが予想しないような手で『女王ティーリー』を狙えるよ。
 とても参考になった――クレイが心からそう唱えれば、オスカーが顔をあげた。
「おお、おお。寛容な仰りよう、さすがでございますな!」
 
 ――どうも、調子が戻ってきたらしい。良い事だ。
 
「商人は信頼関係を大事にするのだろう。外面を綺麗にしていても嘘吐きや陰湿な足の引っ張り合いばかりの貴族より、ぼくは好きだな」
「商人とは?」
 ほんわかと言ってやればオスカーが不思議そうな顔をしたので、クレイは「商人じゃないの?」と聞き返した。
「俺は一応、貴族ですよ。まさか今までずっと俺を……まさか、いくらなんでも」
 クレイは水差しを手に取った。
「ところで、ぼくが『ちょろい』やらなにやらは、お前の本心なの? 必要に迫られて用いた方便なの?」
 問えば、部屋中の視線を浴びつつもオスカーは全く悪びれずに「その点は本心ですな。クレイ様は、ちょろくていらっしゃる!!」と肩をそびやかしたのでクレイは水差しの水をとくとくと頭から賜ってやった。
「ぼくの加護だ、お飲み」
 これくらいで済ませようというのは、やっぱりぼくはちょろいのだろうか――水差しを引いて神妙に思い悩む暴言被害者に向けて、オスカーはケロリとして「これはこれはご馳走様です! なんなら、おかわりをくださっても構いませんぞ!」と言い放ったので、クレイは思わず一歩引いてしまったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。

前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい

夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが…… ◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。 ◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。 ◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。

限界オタクだった俺が異世界に転生して王様になったら、何故か聖剣を抜いて勇者にクラスチェンジした元近衛騎士に娶られました。

篠崎笙
BL
限界ヲタクだった来栖翔太はトラックに撥ねられ、肌色の本を撒き散らして無惨に死んだ。だが、異世界で美少年のクリスティアン王子として転生する。ヲタクな自分を捨て、立派な王様になるべく努力した王子だったが。近衛騎士のアルベルトが勇者にクラスチェンジし、竜を退治した褒美として結婚するように脅され……。 

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。

異世界に勇者として召喚された俺、ラスボスの魔王に敗北したら城に囚われ執着と独占欲まみれの甘い生活が始まりました

水凪しおん
BL
ごく普通の日本人だった俺、ハルキは、事故であっけなく死んだ――と思ったら、剣と魔法の異世界で『勇者』として目覚めた。 世界の命運を背負い、魔王討伐へと向かった俺を待っていたのは、圧倒的な力を持つ美しき魔王ゼノン。 「見つけた、俺の運命」 敗北した俺に彼が告げたのは、死の宣告ではなく、甘い所有宣言だった。 冷徹なはずの魔王は、俺を城に囚え、身も心も蕩けるほどに溺愛し始める。 食事も、着替えも、眠る時でさえ彼の腕の中。 その執着と独占欲に戸惑いながらも、時折見せる彼の孤独な瞳に、俺の心は抗いがたく惹かれていく。 敵同士から始まる、歪で甘い主従関係。 世界を敵に回しても手に入れたい、唯一の愛の物語。

処理中です...