竜と王冠のサクリファイス~乙女ゲームの攻略キャラたちがお互いを攻略して王都炎上?

浅草ゆうひ

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9、裏切りの勇者と妖精王の復活

119、13歳、学院の2年目

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 第二王子は『鮮血』を攫っていってから、しばらく学院を休んでいた。ネネツィカは手紙を何度か送ったけれど、エリックからの返事はなかった。そのまま冬季休暇に入り、年度が代わり、ネネツィカは今日から学院の2年生になる。王都では、妖精サーカスや演劇が定期的に話題になるようになっている。
 父に相談してみたところ、情勢不安もあるので、定期的にお手紙を差し上げつつ、相手から何かアクションがあるまでは気にしないで学院生活の2年目を過ごしなさいとのことだった。

「わたくしの立ち位置も、微妙極まりないのですわ。だって、婚約は破棄されて、恋人と仰っていたけれど破局みたいな形で放置されてしまってますもの」
 若干淑やかさを意識するようになった13歳のネネツィカは、執事が淹れてくれたお茶を飲みながら未だ黒塗りが目立つ新聞を手に取った。
 執事はそんな令嬢に「どんな立ち位置でも、お嬢様が大切な『わたくしのお嬢様』という点については変わりません」と優しく微笑む。こちらは、全く変化がない。

「我が家は、一応中立の立場でしばらく様子を見る。学院内部とはいえ、気を付けて振る舞うように」
 兄のヒューバートは、最近婚約をした。相手は、内務系男爵家のご令嬢だ。第二王子の派閥と内務系派閥は第三王子の件でどうしても敵対カラーがある。しかも、2年前には公爵家の支援にもお世話になっている。第二王子の出方次第では第二王子派閥の色がつくのは避けられまいが、放置されて立場が中途半端なうちは中立でいたい、というのがラーフルトン伯爵家の内々の希望だった。

 新聞には、『コルトリッセン公爵家が守護竜アスライトをシャジャル第二妃の警護に貸出』という大きな記事が掲載されていたので、ネネツィカは二度見した。
「ティミオス、わたくしの眼がおかしいのかしら」
 ――加護は、ないのでは?
 執事はそんな令嬢に涼しい顔で「お嬢様の眼は正常でございますよ」と保証してくれた。そして、事情通な顔でそおっと「こちらは、公爵家のはったりでございます」と教えてくれた。
「はったり……」
 ――公爵家は、加護詐欺に磨きをかけてしまわれたのね。
 ネネツィカは微妙な顔をしながら、言葉を呑み込んだのだった。

「あら、今日はエリック様がいらっしゃりゅのね」
 久しぶりに噛みつつ、学院についたネネツィカは、きらきら王子モードのエリックの取り巻きグループに新入生たちが加わっていくのを見守った。とても大きな取り巻きの輪の中、エリックはこちらを見ようともしないのだが、その隣にちゃっかりクレイがいるのでネネツィカは死ぬほど驚いた。
(えっ、なぜ……仲直りなさいましたの? あんなに……)
 もう、わけがわからない。
 けれど、ぽかんと見つめているとクレイがふっとこちらに気付いて、ふわりと微笑んでエリックの袖を引き、ネネツィカの存在を知らせてくれたようだった。

「エリック、君の恋人が来てるよ」
 それが、如何にも距離感の近い友人といった話し方なのだ。
「ありがとう、クレイ」
 にっこりと笑い、エリックがちょっとおろおろと視線を彷徨わせてから、ネネツィカに挨拶をした。

「おはよう。久しぶりだね。手紙をたくさん送ってくれていたのに、返事が書けなくてすまなかった。俺は、ちょっと取り込んでいた……ほら、ティーリーが暴走気味なものだから」
 エリックがそう言えば、周囲は同情的な視線を送った。守護竜ティーリーが王子の言う事もあまり聞かなくなっている、という噂は本当なのだ、と。
「『神がありのままを望まれる』」
 例の文言が取り巻きたちから次々と上がるのは、少し気味が悪かった。
「おはようございます、お二人とも、お久しぶりでございますわ。わたくしは、ご心配申し上げておりましたわ。お健やかそうで、なによりですの」
 ネネツィカがリーガンを理想にして優雅な令嬢然とした声で応えてみると、くすくすと悪戯っぽく笑ったクレイが「うんうん、久しぶりだね」と言葉を添えて鞄からパンフレットとチケットらしきものを取り出し、エリックに渡す。
「君の大好きな先生が、この演劇を観たがっているという噂を聞いたんだ。もしよかったら、いつもお世話になっているお礼にプレゼントしたらどうかな?」
「ああ、フィーリー先生が? ありがとう。枚数が多いけど」
「好きな子を誘ったらいいじゃないか、そこにいることだし」

 本当に、仲がよさそう。
 お休み中に仲直りなさったの? あんな事を仰って、わたくしをほったらかしにして、騎士を攫って行って――あの騎士はどうなりましたの? 薄い本ですの?
 ネネツィカはどきどきした。色々な意味で。
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