竜と王冠のサクリファイス~乙女ゲームの攻略キャラたちがお互いを攻略して王都炎上?

浅草ゆうひ

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11、三国同盟と魔王の時代

163、聖夜の報復合戦、火炎

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 夜空には、満天の星が小さな光を散りばめている。
「――これだけの光が輝くのに、それでもやはり夜というものは暗いのだ」
 
 北西、エインヘリアでは女帝ネスリンが翼を広げて夜空に飛び上がり、臣下を見下ろしていた。
「せっかくの聖夜だ。あの王子に挨拶してこよう」

 外交官のダスティンが地上で膝をついて見送っている。
「お前は良い子で傷を癒すように、ダスティン」
 風を巻き、長い髪を靡かせて凶暴に歯を剥いて笑うのは、ファーリズの『鮮血』が数日前の一戦にふらりと参戦してきて、後方で控えていたこの外交官に傷を付けたからだ。
「お前を傷付けた分、やり返してやらねばな」
 ヘルマンが「俺が瀕死の重症負っても『死ね』しか言わねえのに」とぼやきつつ、敬礼する。ファビアンはくすくす笑ってそんなヘルマンにがばりと抱きつき、「わたくしがその分悲しんで差し上げますよ!」とナイフをチクチクして歪んだ愛情表現をした。


 さても、教会の鐘が鳴る。

 厳かに、神聖に。
 派閥貴族の集まりの中にアイザールの将グリエルモが混ざっているのを見つけたクレイは、連れて来ていたテオドールにその姿を示した。

「テオドール、あれが『成り上がり』だ。最初は奴隷だったと聞く。それが、ネクシにより傭兵の身分を手に入れて、功績を重ねるうちに国を救いし英雄と呼ばれるに至り将の位を獲る……」
 少年の声には憧憬があった。
「乱世は、功績も立てやすい。お前はどうだ、あれに成れるか」
 未来の可能性に夢見るように、けしかけるのだ。
「アドルフ、お前は? ベルンハルトはどうか?」
 しかし、『歩兵』たちは顔を見合わせて肩をすくめた。
「俺らはせいぜい、子守りがお似合いってとこじゃないですかねえ」
「婚活パーティーで知り合った女を落とすのに忙しくてそれどころじゃねえや」
「坊ちゃん、ご自分がどんなに唆されても成り上がらねえのに他人を唆すのはいけませんや」
 口々に言えば、少年は現実に返ったような顔で「それもそうか」と言いつつ、テオドールを引っ張ってグリエルモのところに連れて行った。
「アイザールの英雄グリエルモ殿、僕の臣下の中で一番伸び代があり才能を待つこの者と手合わせ、ご指南を願えませんか」
 テオドールはこの時初めて、自分に伸び代とやらがあると思われている事を知ったのだった。

 夜空に星が流れていく。

 鐘がまた鳴り、人々が灯した蝋燭の灯りがいっそうあたたかに街並みと皆を照らす時間。

 ふいに、街の一角に火があがり、悲鳴があがった。
 夜に溶けるようなどんよりとした色の煙が燃焼の熱と臭いを伝えて、聖歌は途絶えて人々の悲鳴が世界の音を占領していく。

「あいつだ」
 パニック状態の人の波に乗って流れるように避難するエリックが夜空を見上げて呟いた。
「ネスリン。王都まで飛んで来られるのか」
 俺は長距離をずっと飛ぶのはしんどいのに。エリックは眉を寄せた。

「やあ王子。聖夜の挨拶に来たぞ」
 気安い調子で傲慢にネスリンが笑い、魔物を召喚する。すぐに消えたのは、エリックが消しているからだ。
「そんな軽いノリでホイホイ飛んでこられたら困るな」
 何か対策した方が良さそうだ、とオーガストに呟いて、エリックは翼を広げて飛び立った。

「すまない、あの物騒な彼女が俺と聖夜のデートを希望らしくてさ。ちょっとだけ行ってお断りしてくるよ」
 すぐに戻るね、と笑って飛び立ったエリックは剣を抜いて天翔けて、ネスリンに挨拶代わりの剣閃を見舞った。

「困るよ。デート中だったんだ」
 打ち合いの音が炎禍の騒声喧騒に混ざる。ネスリンは楽しそうに剣を繰り、高い金属音を続かせた。膂力はそう変わらぬように思われて、エリックはもう少し腕を鍛えようかと思ったものだ。

「『鮮血』が余の重臣に傷を付けたのだ。これは報復である」
「ヘルマンかあ……」
「ヘルマンは別にどうでもいい」
「あ、そうなんだ」
 あの人、可哀想……エリックはなんか扱いが軽い敵国の将に同情しつつ、「今夜はここまで」と終わりを告げてネスリンの髪をひとふさ斬り取った。

「ネスリンは俺の守る王都に火をかけ、人々の聖夜を台無しにした。これは報復だ」
「ははっ……」

 面白がるような顔をして、どうやら満足したらしきネスリンは大きく後ろに飛翔して距離を取った。

「良かろう。では、今宵はこれにて」
「うん。次は俺がそっちに行くから、こっちに来ないで待っててよ」

 ――声が届いたのやら、届いていないのやら。

 恐ろしい速さで遠くなる女帝の姿を見送って、エリックは燃える王都に舞い降りた。
「あれは帰って行った。消火活動を手伝うよ!」

 火災と消火活動のコンボに軽くトラウマを刺激されたネネツィカが、「暗殺者にはお気をつけて」と言いながら杖を取り出した。

「あ、君も手伝ってくれるの?」
「わたくし、魔法が得意ですから――前は、すっかり守られるだけでしたけれど……」
「前……?」

 不思議そうに首を傾げつつ、エリックが手を繋いで「それじゃ、一緒に」と言ってくれる。ネネツィカはセーブもロードもない現実の中、しっかりと頷きを返した。

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