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11、三国同盟と魔王の時代
165、三学年、14歳
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紅薔薇の派閥などはお通夜状態であったが、リーン砦へは、だいたいいつものメンバーがのほほんとした雰囲気で付いてきた。
「せっかくゴールイン間近まで愛を育てたのに、こりゃ破局かな」
アドルフはぼやきながらも付いてきて、ベルンハルトは「こっちは新婚なんだが」と言いつつ残る選択は頭に無いようだった。テオドールは「手柄を立てるチャンスじゃ無いですか」と前向きな事を言い、レネンはいつも通りで。
クレイ本人はというと、ルーファスから「せっせと買収してきたエインヘリアの冒険者ギルドを全て手放す事になった」と報告を受けて「残念だなあ」とショックを受けていた。
「僕の玩具箱が……」
「坊ちゃん、俺の遠距離恋愛の方を残念がってくださいよ」
「こっちは新婚ですよ? 子供だって生まれるんだ」
「お前、それは残れよ……」
砦は祖父にもらった城よりは立派で、飾り気は無かった。寄せ集めみたいな募集勇士が烏合の衆と言った風情でひしめいていて、「さすがに子供に任せるには」と進言してくれたセト・バード卿の部下のローデル・マクベス卿が実際の監督指揮を担当するようなので、『昇格する歩兵』たちは暇そうな坊ちゃん貴族とのらくら時間潰しをしたり、時折来るエインヘリア軍や魔物相手に適当に応戦してやる気のあるふりをしたり、たまに手柄を立てたりしていた。
「ヘルマンが来たら俺が相手するわ」
「いやいや俺が」
「お前今月何ヘルマン撃退した?」
「俺は2ヘルマンかな」
どうもヘルマンという将軍は負けるのが得意なのか、その割に女帝に許されるのか、勝つ気がなさそうに攻めてきてはあっさり撃退されるのがお約束みたいな奴だった。
「可愛がられてるんだろうな……」
実力主義のエインヘリアで負け続きが許されるのだから、きっとそうなのだろう。クレイは妙に愛嬌があって憎めないヘタレな敵将に愛着を持ちつつ、新生活をのんびりと満喫した。
一方でエリックはというと、幽閉とは名ばかりでいつもの騎士と医師、さらに神殿からの神官まで囲いに追加した状態でのんびりと治療生活を過ごしていた。
日中も夜も特に禁止されていないので、ちょっと変装は必要なものの何処にでも行けるし、翼を広げて空の散歩も楽しめる。
「やあ、ネスリン。遊びに来たよ!」
呪術を併せて使い、ネスリンの城まで飛んでいくこともできるようになった。
だいたいは剣をかちあわせながらの語らいになるが。
夜空の流星めいて螺旋を描き添わせ、剣をぶつけ合うのは正直良い気分転換――ストレス発散みたいになって、楽しかった。
「あそこで間抜けな口を開けているのがヘルマン。奴は坊主の時からダメな奴だった……仕方なく余が陣営の隅に置いていたら、奴め悪運は強いようで、古株がどんどん死んでいくのにしぶとく生き残って1番の古株になったのだ」
掬い上げるように剣を振り上げて、迸る紫電一閃を防ぐ。腕に重い手応えが伝わり、空中の頼りなさに足が泳ぎ、羽が震えて高揚した。
「ファビアンは、メイドだった。毒味をよくさせていた。ヘルマンに惚れていたな……今もか? ヘルマンの婚約者であった姉が継承戦争でヘルマンを庇って死んだ時に、どうも気を変じてああなってしまった。歪んでいるな」
浅く頬を切っ先が通り過ぎ、血の筋がぷくりと生まれて雫が流れる。引きそうになる心を叱咤して、エリックは前傾になり続く刃の下に飛び込んで突きを放った。
「ッ――」
ネスリンが回転しながら後ろに飛翔し、回避する。遠く地上で心配そうに見守る青年が、いつもいる。
「彼は?」
言葉を紡ぎ、互いの過去を交わしてはいるが、あくまでも二人のそれは生命を賭けた死線のダンスだった。どちらかが受け損ね、避け損ねれば即その命を散華させる――そんな戦いだった。
「ダスティンは、余の……、」
女の目をして、女帝は息を吐いて笑む。
「今宵は、ここまでにしよう」
「うん、いいよ。またね」
エリックは当たり前のように再戦を誓い、空を飛翔して自分の帰る場所へと戻った。
またね、がお決まりの挨拶になっていて、この時のエリックは『彼女をいつか倒すのは自分なのだ』と思っていた。
冬はそうして過ぎていき、王立学院に再び春が訪れた。
ネネツィカは三学年、14歳になっていた。学院の風景は変わらぬようでいて、突然魔物が湧いたり、同盟国からの留学生がやってきたり、何かと話題や人を集めていた第二王子や公爵令息が不在だったりと、やはり去年までとは違っていて、春色のうららかな花景色と暖気の中、なんとなく寂しくて、物悲しい春学期スタートとなったのだった。
「せっかくゴールイン間近まで愛を育てたのに、こりゃ破局かな」
アドルフはぼやきながらも付いてきて、ベルンハルトは「こっちは新婚なんだが」と言いつつ残る選択は頭に無いようだった。テオドールは「手柄を立てるチャンスじゃ無いですか」と前向きな事を言い、レネンはいつも通りで。
クレイ本人はというと、ルーファスから「せっせと買収してきたエインヘリアの冒険者ギルドを全て手放す事になった」と報告を受けて「残念だなあ」とショックを受けていた。
「僕の玩具箱が……」
「坊ちゃん、俺の遠距離恋愛の方を残念がってくださいよ」
「こっちは新婚ですよ? 子供だって生まれるんだ」
「お前、それは残れよ……」
砦は祖父にもらった城よりは立派で、飾り気は無かった。寄せ集めみたいな募集勇士が烏合の衆と言った風情でひしめいていて、「さすがに子供に任せるには」と進言してくれたセト・バード卿の部下のローデル・マクベス卿が実際の監督指揮を担当するようなので、『昇格する歩兵』たちは暇そうな坊ちゃん貴族とのらくら時間潰しをしたり、時折来るエインヘリア軍や魔物相手に適当に応戦してやる気のあるふりをしたり、たまに手柄を立てたりしていた。
「ヘルマンが来たら俺が相手するわ」
「いやいや俺が」
「お前今月何ヘルマン撃退した?」
「俺は2ヘルマンかな」
どうもヘルマンという将軍は負けるのが得意なのか、その割に女帝に許されるのか、勝つ気がなさそうに攻めてきてはあっさり撃退されるのがお約束みたいな奴だった。
「可愛がられてるんだろうな……」
実力主義のエインヘリアで負け続きが許されるのだから、きっとそうなのだろう。クレイは妙に愛嬌があって憎めないヘタレな敵将に愛着を持ちつつ、新生活をのんびりと満喫した。
一方でエリックはというと、幽閉とは名ばかりでいつもの騎士と医師、さらに神殿からの神官まで囲いに追加した状態でのんびりと治療生活を過ごしていた。
日中も夜も特に禁止されていないので、ちょっと変装は必要なものの何処にでも行けるし、翼を広げて空の散歩も楽しめる。
「やあ、ネスリン。遊びに来たよ!」
呪術を併せて使い、ネスリンの城まで飛んでいくこともできるようになった。
だいたいは剣をかちあわせながらの語らいになるが。
夜空の流星めいて螺旋を描き添わせ、剣をぶつけ合うのは正直良い気分転換――ストレス発散みたいになって、楽しかった。
「あそこで間抜けな口を開けているのがヘルマン。奴は坊主の時からダメな奴だった……仕方なく余が陣営の隅に置いていたら、奴め悪運は強いようで、古株がどんどん死んでいくのにしぶとく生き残って1番の古株になったのだ」
掬い上げるように剣を振り上げて、迸る紫電一閃を防ぐ。腕に重い手応えが伝わり、空中の頼りなさに足が泳ぎ、羽が震えて高揚した。
「ファビアンは、メイドだった。毒味をよくさせていた。ヘルマンに惚れていたな……今もか? ヘルマンの婚約者であった姉が継承戦争でヘルマンを庇って死んだ時に、どうも気を変じてああなってしまった。歪んでいるな」
浅く頬を切っ先が通り過ぎ、血の筋がぷくりと生まれて雫が流れる。引きそうになる心を叱咤して、エリックは前傾になり続く刃の下に飛び込んで突きを放った。
「ッ――」
ネスリンが回転しながら後ろに飛翔し、回避する。遠く地上で心配そうに見守る青年が、いつもいる。
「彼は?」
言葉を紡ぎ、互いの過去を交わしてはいるが、あくまでも二人のそれは生命を賭けた死線のダンスだった。どちらかが受け損ね、避け損ねれば即その命を散華させる――そんな戦いだった。
「ダスティンは、余の……、」
女の目をして、女帝は息を吐いて笑む。
「今宵は、ここまでにしよう」
「うん、いいよ。またね」
エリックは当たり前のように再戦を誓い、空を飛翔して自分の帰る場所へと戻った。
またね、がお決まりの挨拶になっていて、この時のエリックは『彼女をいつか倒すのは自分なのだ』と思っていた。
冬はそうして過ぎていき、王立学院に再び春が訪れた。
ネネツィカは三学年、14歳になっていた。学院の風景は変わらぬようでいて、突然魔物が湧いたり、同盟国からの留学生がやってきたり、何かと話題や人を集めていた第二王子や公爵令息が不在だったりと、やはり去年までとは違っていて、春色のうららかな花景色と暖気の中、なんとなく寂しくて、物悲しい春学期スタートとなったのだった。
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