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11、三国同盟と魔王の時代
172 、望みと姉弟
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12歳のミハイが猫を膝に乗せた姿勢で妖精に手を伸ばしている。妖精はくるくると回り、皇子を揶揄うように逃げて回った。
店の奥では、コソコソと身を潜める14歳の姉、アルマ――ネネツィカの親友ヘレナが皿洗いしたり料理をしたりしてくれている。
「とてもお気に召したご様子で、寛いでいらっしゃいますわ」
ネネツィカがオムライスのプレートを取り知らせると、エプロンをつけて手伝ってくれていた執事のティミオスが二人に忍びやかに教えてくれた。
「堂々となさっていても、それほどバレる危険はございません……おそらく」
青年は、意味ありげにヘレナに視線を向けた。
「ティミオスさんは私があの時に何を望んだのか知っているのね」
「ええ」
青年の春色の瞳と少女の緑色の瞳が絡み合うと、ネネツィカは少しだけムスッとして間に割り込んだ。
「わたくしにもわかるように」
あの時とは? そう問い掛ければ、ティミオスからは返答より先に客のいるフロアを示される。
「まずはオムライスを彼らに、お嬢様。お仕事優先でございます」
「みゃあー」
「おっ、ミハイ、鳴き真似がうまいぞ」
妖精猫カフェのオープンフロアでは、なんとなく休日のおじさまと親戚のお子さんみたいな雰囲気のある二人がのほほんとしている。
「オムライスです」
「みゃー!」
ミハイがヘレナとよく似た彩の目をキラキラさせてプレートに寄ってくる。グリエルモはケチャップのチューブを取り、「おじさんがネコチャン描いてやろう」と前衛的なケチャップアートを施した。
「ワー! ニャオ!」
「ニャオイルネコチャン」
「ネコチャン!」
おじさまはミハイにネコチャンという言葉を教えて、新聞をのんびりと広げた。
「へ、平和……」
ネネツィカは癒し空間に心を和ませつつ、床に散らばる食べ残しの餌を掃いて妖精から「お疲れ様」のキャンディを貰った。
苺味のキャンディは包み紙も可愛らしくて、一瞬だけ2年前の夏にユンク伯爵領を訪れた日々を思い出す。今日という日も数年後には懐かしく思い出されるに違いない――そう思うと、この時間が輝きを増すよう。
「それで、先ほどのお話はなんでしたか」
厨房にそろりと戻ると、執事がヘレナと仲良く皿洗いしていたのでネネツィカは軽く嫉妬した。
「ああ、お嬢様」
この執事はそんな主人を見て、悪戯に微笑むのだ。
「嫉妬してくださったのですね」
その瞳が悪戯な光の中になんとなく嬉しそうな色を混ぜているから、ネネツィカは「わたくしのティミオスは可愛いらしいですわね」と手を伸ばして、頭を撫でてやった。
「私も撫でたい」
「少しだけならよろしくてよ!」
ヘレナと二人で遊んでいると、青年は令嬢方が戯れやすいように膝をついてから「ゲームが終わる際に神の声が望みを問いまして」とその日の事を語るのだった。
「アスライトが途中で妨害しましたが、世界に受理された望みは強引であれ不自然であれ、ある程度叶えられるような気配がございます」
ネネツィカは背筋を震わせた。
やはり、この世界はそういうところがあるのだ。
「わたくしも望む機会が与えられていれば……世界中から美男子を集めてティミオスのためのハーレムを作ることもできましたのね」
「お嬢様?」
「冗談ですわ」
くすくすと笑いつつ、ヘレナとネネツィカは「みんなはどんな望みを唱えたのかしら」と話し合った。
「おぉい、店員サン」
陽気を集めたような髪をふり、グリエルモが会計を申し出る。
「あっ、すみません!」
試しに、とヘレナが会計を担当してみると、ソファで猫を抱っこして足をぷらぷら遊ばせていたミハイが顔をパァッと明るくした。
「お姉さま!」
ボクにはわかる。
お姉さまだよ!
そんな風に語るミハイに、グリエルモはちょっと驚いてからヘレナの前に膝をつく。
「ティミオス? 大丈夫じゃないじゃない?」
――少女二人の視線を浴びて、執事は「おや?」という顔でのんびりと首を傾げたのだった。
「叶えられていると思しき望みがいくつかございましたので、てっきり」
そう弁明する顔は、あまり悪びれることがなく「大したことではございません」とでも言いたげなので、ヘレナはいとけなく嬉しそうに抱きついてくる弟の体温を感じながら、困り顔で微笑んだのだった。
店の奥では、コソコソと身を潜める14歳の姉、アルマ――ネネツィカの親友ヘレナが皿洗いしたり料理をしたりしてくれている。
「とてもお気に召したご様子で、寛いでいらっしゃいますわ」
ネネツィカがオムライスのプレートを取り知らせると、エプロンをつけて手伝ってくれていた執事のティミオスが二人に忍びやかに教えてくれた。
「堂々となさっていても、それほどバレる危険はございません……おそらく」
青年は、意味ありげにヘレナに視線を向けた。
「ティミオスさんは私があの時に何を望んだのか知っているのね」
「ええ」
青年の春色の瞳と少女の緑色の瞳が絡み合うと、ネネツィカは少しだけムスッとして間に割り込んだ。
「わたくしにもわかるように」
あの時とは? そう問い掛ければ、ティミオスからは返答より先に客のいるフロアを示される。
「まずはオムライスを彼らに、お嬢様。お仕事優先でございます」
「みゃあー」
「おっ、ミハイ、鳴き真似がうまいぞ」
妖精猫カフェのオープンフロアでは、なんとなく休日のおじさまと親戚のお子さんみたいな雰囲気のある二人がのほほんとしている。
「オムライスです」
「みゃー!」
ミハイがヘレナとよく似た彩の目をキラキラさせてプレートに寄ってくる。グリエルモはケチャップのチューブを取り、「おじさんがネコチャン描いてやろう」と前衛的なケチャップアートを施した。
「ワー! ニャオ!」
「ニャオイルネコチャン」
「ネコチャン!」
おじさまはミハイにネコチャンという言葉を教えて、新聞をのんびりと広げた。
「へ、平和……」
ネネツィカは癒し空間に心を和ませつつ、床に散らばる食べ残しの餌を掃いて妖精から「お疲れ様」のキャンディを貰った。
苺味のキャンディは包み紙も可愛らしくて、一瞬だけ2年前の夏にユンク伯爵領を訪れた日々を思い出す。今日という日も数年後には懐かしく思い出されるに違いない――そう思うと、この時間が輝きを増すよう。
「それで、先ほどのお話はなんでしたか」
厨房にそろりと戻ると、執事がヘレナと仲良く皿洗いしていたのでネネツィカは軽く嫉妬した。
「ああ、お嬢様」
この執事はそんな主人を見て、悪戯に微笑むのだ。
「嫉妬してくださったのですね」
その瞳が悪戯な光の中になんとなく嬉しそうな色を混ぜているから、ネネツィカは「わたくしのティミオスは可愛いらしいですわね」と手を伸ばして、頭を撫でてやった。
「私も撫でたい」
「少しだけならよろしくてよ!」
ヘレナと二人で遊んでいると、青年は令嬢方が戯れやすいように膝をついてから「ゲームが終わる際に神の声が望みを問いまして」とその日の事を語るのだった。
「アスライトが途中で妨害しましたが、世界に受理された望みは強引であれ不自然であれ、ある程度叶えられるような気配がございます」
ネネツィカは背筋を震わせた。
やはり、この世界はそういうところがあるのだ。
「わたくしも望む機会が与えられていれば……世界中から美男子を集めてティミオスのためのハーレムを作ることもできましたのね」
「お嬢様?」
「冗談ですわ」
くすくすと笑いつつ、ヘレナとネネツィカは「みんなはどんな望みを唱えたのかしら」と話し合った。
「おぉい、店員サン」
陽気を集めたような髪をふり、グリエルモが会計を申し出る。
「あっ、すみません!」
試しに、とヘレナが会計を担当してみると、ソファで猫を抱っこして足をぷらぷら遊ばせていたミハイが顔をパァッと明るくした。
「お姉さま!」
ボクにはわかる。
お姉さまだよ!
そんな風に語るミハイに、グリエルモはちょっと驚いてからヘレナの前に膝をつく。
「ティミオス? 大丈夫じゃないじゃない?」
――少女二人の視線を浴びて、執事は「おや?」という顔でのんびりと首を傾げたのだった。
「叶えられていると思しき望みがいくつかございましたので、てっきり」
そう弁明する顔は、あまり悪びれることがなく「大したことではございません」とでも言いたげなので、ヘレナはいとけなく嬉しそうに抱きついてくる弟の体温を感じながら、困り顔で微笑んだのだった。
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