竜と王冠のサクリファイス~乙女ゲームの攻略キャラたちがお互いを攻略して王都炎上?

浅草ゆうひ

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11、三国同盟と魔王の時代

175、ライブダンジョンのお誘いと反乙女ゲーム同盟

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 暑気に植物と動物の匂いがむわりとする昼下がり、陽光がしたたかに地上を照らしている。苛烈な太陽は、まるで地上で起きる全てを監視して、ひとつも見逃さぬと言うような眩さで青空に君臨していた。

 シリルが家畜の世話をしている。黒髪に汗を煌めかせ、泥まみれになって、日にさらされて。

「ヘイヘーイ忠犬『鮮血』~、今どんな気持ち? 今どんな気持ち?」
 犬小屋の隣に座り込んで、夢の中に迷い込んだみたいにおぼつかない様子で主人を見つめるフィニックスをグリエルモが突っついている。
「ご主人様に捨てられて悲しいかー! ご主人様に会えて嬉しいかー! 俺とバトってスッキリするかー?」
 よしやろう今やろう、そんな風に肩を揺らしたり剣の鞘を叩く相手を完全に無視して、フィニックスは立ち上がる。
「シリル様、手伝わせてください……!」
 赤毛が燦々と注ぐ日差しにきらきら艶を放つ。背を見送り、『成り上がり』は息を吐いた。
「おーい、大切なご主人様のお世話してくれた友好国に礼もないのか。そんなんだから副団長止まりなんだぜ」
 俺がもう少し若かったらキレてるかも、と苦笑する声に、フィニックスはハッとした顔で振り返って頭を下げた。
「失礼致しました……我が主君をお守りくださったアイザール政権に心より感謝申し上げます」
「おう。これからよろしくな、フィニックス」
 よかったよかった、とグリエルモはからりと笑う。
「これから……」
「そ。俺たちは、今日より同じ陣営になろうぞ」
 その笑顔は不遜で、傲慢で、太陽のもとで己こそが光なりと雄叫びをあげるようだった。

「私に、アイザールにくだれと?」
 フィニックスが眉を寄せる。
「シリル王子の平穏を守るため、アイザール所属の騎士となる――忠犬にはそれだけでも十分か。しかし、これはそんなちっぽけな話にはとどまらない」
 犬小屋の隣でゆらりと立ち上がり、『成り上がり』は剣を抜いて高く翳した。
「お前さんはシリル王子から聞いてはいないだろうが……」
 剣身が陽を反射して光る。
「ここは創造多神『株式会社ハッピーSエンターテインメント』の箱庭であるファーリズの外つ国――アイザール共和国。俺たちは『反乙女ゲーム同盟』。この世界の自由なる『その他大勢モブ』として、神の代行者を騙る守護竜に管理統制される不自然な国家体制を否定する!」
「ワン、ワン!」
 戻ってきたわんこが「ここは僕のお家だぞ」って感じで吠え立てた。
「……」
 わんこが賑々しく騒ぐ中、グリエルモがそっと移動するのをフィニックスがしらっとした眼で見ていた。
「『鮮血』、……そんな目で俺を見るな」
 ――格好つけたんだけどなあ。
 そう言って、グリエルモは剣をおさめて笑うのだった。
「貴殿が何を仰るのか、私には分かりかねます」
「シリル王子に話してもらおうかね。おじさんも一緒に家畜の世話してやるよ」

 ――呪術の鳥がパタパタと高い空を飛んでいく。

 家の中では、女性たちが和やかな時間を過ごしていた。

「私達の生活はアイザール政権により秘匿され、守られています」
 皇女ディアナがほんのりと微笑み、冷えた麦茶を注いでくれる。ヘレナは姉と母国語で積もる話に花を咲かせ、時折ネネツィカに話を通訳してくれた。
 家の外で馬のいななきが聞こえると、ディアナが扉の方を見た。
「お姉さま!」
 ミハイがパタパタと戸を開けて家の中に飛び込んでくる。
「アルマお姉さま! こっちに先に来たんだね? ディナーは食べられる? お城に行くよね?」
 子犬のようにきゃらきゃらと騒いで狭い室内を飛び回るミハイに、ヘレナはにっこりした。
「ええ、ミハイ。もうちょっとしたらお城に行くわ」
 ネネツィカはミハイのために持ってきた果実飴の小瓶を差し出して、「多分、わたくしもお邪魔しますの」とそっと確認した。ヘレナに誘われて来たものの、果たして団欒の中に混ざっていて良いのか自信がなくなって来たので。
「一緒に来てよ……お願い」
 ヘレナはそう言って、ネネツィカの手を握る。
「1人だと怖いわ」
「ええ、ええ」

 お姉さまたちは、仲良しなんだね! そんな風にあどけなく言ったミハイは、「あのね、ディナーの時に魔道具を用意してもらうから、みんなで魔王を観ようね!」と誘う。

「魔王を観る……?」
 不思議な言葉を聞いた。そんな目で『お姉さま方』が視線を交差させる。
「これ」
 ミハイがチラシのようなものを見せてくれた。どれどれ、と読んでみると、多国籍な言語にて「魔王、再び!? ライブダンジョンのお誘い~ぷるぷる、ぼくこわい魔王じゃないよ~」という文言と映像投影魔道具の使用のお願い、映像投影魔道具を発動させた時の魔王からの布告映像を受信するための専用の術式が書いてある。

「なんです、これは」
「なんだろう……」
 お姉さま方は、困惑を深めるばかりであった。
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