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3章、ハッピーエンドは譲れない。
56、全員集合!父が食べられた気がする。
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【尚山】――泰然の研究所は、人で賑わっていた。
「なぜ死者の時を戻す術の開発過程で男性を妊娠可能にする術が生まれるんです? 『疯狂』は本当に『疯狂』なんですねえ! この子は可愛いですが」
諸葛珪が泰然の赤子に指を差し出し、赤子に指をつかまれてはしゃいでいる。
「ウフフ、ちなみにその子は術で生まれたわけではないのですよ~」
兎耳をぴょこぴょこさせて、泰然は諸葛珪の頭を撫でた。
「こういう術がつくれるかもしれない~。そう思ったら~つくってみたくなるのが~研究者のサガというもの……おこちゃまにはその浪漫がわかりませんか~」
「寄り道って楽しいですよね、わかります! でも、諸葛家の予算を投入するからには無駄遣いは困りますね」
「おやおや~、諸葛家の世子様は浪漫大好き冒険ごっこ大好きでいつも護衛を困らせているときいていますけどね~」
微妙にギスギスした空気の二人の周りを、なぜか鍋がぴょこぴょこカランカランと跳ねまわっている。
「そういえばあの鍋、憂炎のだった?」
「いや、転がっているのを拾っただけなので私の所有物と言われるのも違う気がするのだが」
憂炎が首をかしげる。
音繰はそれを見て、「君の私物は時々なくなるだろう? 実は犯人私なんだ」と明かすべきか真剣に悩んだ。
狐の尻尾をふわふわと揺らしながら休憩処に料理を運ぶのは、妖狐兄弟の空燕と空燕だ。
「おやつにどうぞぉ」
「兄やんのお料理、美味しいで!」
「九山派は術では我らに及ばないだろう、専門外なのだから黙っておれ……ねじりんぼうか、頂こう」
「なんだと将山派、死霊に煽られて事件を起こしたくせに……この馬拉糕は美味いな」
ねじりんぼう――きつね色の香ばしい生地をよりあわせた麻花は小麦粉と砂糖を使ったお菓子は、さくさくした食感で、甘い。
木の実の曲奇はクコの実やクルミなどがぎゅうっと詰まっていて、味わい深くて栄養満点だ。
術式について喧々囂々と討論していた九山派と将山派は、お菓子を囲んで「これもいいぞ」「こっちも美味い」と雰囲気を和やかにさせた。
「副総帥、こちらの馬拉糕は、ふんわりした優しい食感の蒸しカステラです。美味しいですよ」
雪霧が九山派副総帥である劉生にお菓子を薦めている。
「うむ、ありがとう雪霧。そういえばそなた、最近二股をかけているそうではないか」
「ふ、二股っ……! そ、それは……」
「あそこにいる魔人、泰宇と泰軒であったか。どちらがよいか決められない、などと申しているらしいが?」
「……!!」
雪霧は真っ赤になっておろおろしている。
「お、お二人とも良い方なので。さ、三人で親しい友人として清い交際をいたしております……!」
「ほっほっほ、劉生殿。若者の恋愛にとやかく言うと馬に蹴られるぞ。うむ、茶が美味い」
音繰の祖父であり魔教の現香主である音洋は、隅にいるいかにも神仙然とした太祖老君をちらちらと気にしながら茶を啜っていた。
「当人である三者が不満なく付き合っているのなら、周囲が口出しすることもあるまいて」
白牡丹茶は、爽涼な香りを温かな湯気にのせている。
澄清な白茶はすっきりした味わいで、白い茶杯の内側で綺麗な湯色を揺らめかせているさまは風情がある。
「ああ、和みます。この休憩のひとときは黄金に勝りますよ」
博文が爺臭いことを言って、諸葛珪の爺やと一緒に日頃の苦労をねぎらい合っている。
【不思議ですね。こんな光景、あり得ないって思うのに……現実なんだなぁ】
りん、りんと鈴を鳴らして湊が呟いている。
音繰はゆるゆると頷いて、何気なく太祖老君を視た。
子供のキョンシーを我が子のように膝に乗せた太祖老君が、白く綺麗な手で空気をふわふわと搔き集めるような不思議な仕草をみせている。
ふわふわと透明な空気が手繰り寄せられるようにして――ほわりと黒い靄みたいなものが太祖老君の手のうちに姿をみせる。
(……んっ? あれ、父なのでは?)
見覚えがある黒い靄、その気配に音繰は目を瞬かせ、無言で魅入った。
「……音繰? 何か?」
耳元に口を寄せ、憂炎が恋人の温度感で甘く囁いている。
それは嬉しい。嬉しいが――
見つめる視界で、太祖老君は手のうちでふるふる震える黒い靄ににっこりと微笑んだ。
そして、ぱくりと自分の口に黒い靄を放り込み。
(ふぇっ!?)
……ごくりと呑み込んでしまった――?
「……!?」
(あれっ、父……? 今、ぱくって。ごくんって。父? 太祖老君? あれ? 今なんか変な光景を見たような?)
「……音繰? どうした?」
「……な、なんでもない」
――音繰は不思議な事件にどうリアクションして良いのかよくわからないまま、首を振ったのだった。
「なぜ死者の時を戻す術の開発過程で男性を妊娠可能にする術が生まれるんです? 『疯狂』は本当に『疯狂』なんですねえ! この子は可愛いですが」
諸葛珪が泰然の赤子に指を差し出し、赤子に指をつかまれてはしゃいでいる。
「ウフフ、ちなみにその子は術で生まれたわけではないのですよ~」
兎耳をぴょこぴょこさせて、泰然は諸葛珪の頭を撫でた。
「こういう術がつくれるかもしれない~。そう思ったら~つくってみたくなるのが~研究者のサガというもの……おこちゃまにはその浪漫がわかりませんか~」
「寄り道って楽しいですよね、わかります! でも、諸葛家の予算を投入するからには無駄遣いは困りますね」
「おやおや~、諸葛家の世子様は浪漫大好き冒険ごっこ大好きでいつも護衛を困らせているときいていますけどね~」
微妙にギスギスした空気の二人の周りを、なぜか鍋がぴょこぴょこカランカランと跳ねまわっている。
「そういえばあの鍋、憂炎のだった?」
「いや、転がっているのを拾っただけなので私の所有物と言われるのも違う気がするのだが」
憂炎が首をかしげる。
音繰はそれを見て、「君の私物は時々なくなるだろう? 実は犯人私なんだ」と明かすべきか真剣に悩んだ。
狐の尻尾をふわふわと揺らしながら休憩処に料理を運ぶのは、妖狐兄弟の空燕と空燕だ。
「おやつにどうぞぉ」
「兄やんのお料理、美味しいで!」
「九山派は術では我らに及ばないだろう、専門外なのだから黙っておれ……ねじりんぼうか、頂こう」
「なんだと将山派、死霊に煽られて事件を起こしたくせに……この馬拉糕は美味いな」
ねじりんぼう――きつね色の香ばしい生地をよりあわせた麻花は小麦粉と砂糖を使ったお菓子は、さくさくした食感で、甘い。
木の実の曲奇はクコの実やクルミなどがぎゅうっと詰まっていて、味わい深くて栄養満点だ。
術式について喧々囂々と討論していた九山派と将山派は、お菓子を囲んで「これもいいぞ」「こっちも美味い」と雰囲気を和やかにさせた。
「副総帥、こちらの馬拉糕は、ふんわりした優しい食感の蒸しカステラです。美味しいですよ」
雪霧が九山派副総帥である劉生にお菓子を薦めている。
「うむ、ありがとう雪霧。そういえばそなた、最近二股をかけているそうではないか」
「ふ、二股っ……! そ、それは……」
「あそこにいる魔人、泰宇と泰軒であったか。どちらがよいか決められない、などと申しているらしいが?」
「……!!」
雪霧は真っ赤になっておろおろしている。
「お、お二人とも良い方なので。さ、三人で親しい友人として清い交際をいたしております……!」
「ほっほっほ、劉生殿。若者の恋愛にとやかく言うと馬に蹴られるぞ。うむ、茶が美味い」
音繰の祖父であり魔教の現香主である音洋は、隅にいるいかにも神仙然とした太祖老君をちらちらと気にしながら茶を啜っていた。
「当人である三者が不満なく付き合っているのなら、周囲が口出しすることもあるまいて」
白牡丹茶は、爽涼な香りを温かな湯気にのせている。
澄清な白茶はすっきりした味わいで、白い茶杯の内側で綺麗な湯色を揺らめかせているさまは風情がある。
「ああ、和みます。この休憩のひとときは黄金に勝りますよ」
博文が爺臭いことを言って、諸葛珪の爺やと一緒に日頃の苦労をねぎらい合っている。
【不思議ですね。こんな光景、あり得ないって思うのに……現実なんだなぁ】
りん、りんと鈴を鳴らして湊が呟いている。
音繰はゆるゆると頷いて、何気なく太祖老君を視た。
子供のキョンシーを我が子のように膝に乗せた太祖老君が、白く綺麗な手で空気をふわふわと搔き集めるような不思議な仕草をみせている。
ふわふわと透明な空気が手繰り寄せられるようにして――ほわりと黒い靄みたいなものが太祖老君の手のうちに姿をみせる。
(……んっ? あれ、父なのでは?)
見覚えがある黒い靄、その気配に音繰は目を瞬かせ、無言で魅入った。
「……音繰? 何か?」
耳元に口を寄せ、憂炎が恋人の温度感で甘く囁いている。
それは嬉しい。嬉しいが――
見つめる視界で、太祖老君は手のうちでふるふる震える黒い靄ににっこりと微笑んだ。
そして、ぱくりと自分の口に黒い靄を放り込み。
(ふぇっ!?)
……ごくりと呑み込んでしまった――?
「……!?」
(あれっ、父……? 今、ぱくって。ごくんって。父? 太祖老君? あれ? 今なんか変な光景を見たような?)
「……音繰? どうした?」
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――音繰は不思議な事件にどうリアクションして良いのかよくわからないまま、首を振ったのだった。
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