17 / 65
17話 婚約破棄してくれませんか?
しおりを挟む部屋に入ると、国王、王妃、ギルバートお兄様、アルベルトお兄様が既にいた。
そしてルイス王子も·····
ルイス王子は私を見ると笑顔で私の元へ向かってきた。
「アリア!久しぶりだね!会いたかったよ!」
「ルイス殿下、はるばると遠い我が国にお越しくださいましてありがとうございます。」
私はドレスの裾を持ち上げ軽くお辞儀をした。
うん?いつもなら何か言葉がかかるはずなんだけれど。
チラッと上目遣いで見るとルイス王子は私の胸に釘付けだった。
·····ちょっと大胆過ぎたかしら····
周りを見るとアルベルトお兄様もギルバートお兄様も見ていた。
屈んだ状態だから見えちゃうのね!
私はすぐ姿勢を正し
「いつもはもっと先にサマヌーンに来られるのに何かありましたの?」
私は笑顔で聞いた。
私の問いに我に返ったのかルイス王子はコホンと咳払いをしてから応えた。
「いや、メンデル国王にも言ったのたが、アリアに会いにきただけだよ。」
「え?」
「最近、手紙の返事もこなくなったし、体調もあまり良くないと聞いて····いてもたってもいられなくて来てしまったよ。」
来てしまったよ、って·····
私はちょっと引いてしまった。
ルイス王子はお父様の方に向き
「メンデル国王、本当に今回は急に来て申し訳なかった。急で悪いが滞在は3日ほどさせて貰おうかと思うんだが。」
「それは大丈夫ですぞ。ゆっくりしていって欲しい。次からは来るときには一言あると助かる。」
「それは申し訳なかった。次回からは必ずいつも通りに書簡を送らせてもらう。」
「では既に夕刻だ。夕食の用意も出来ておるのでご一緒に。」
「ありがとうございます。」
お父様の声で食堂に皆で向かう。
私はルイス王子に腰を引かれて一緒に向かった。
正直、あまり触れて欲しくないわ。
そんな風に思われていると知らないで、ルイス王子はニコニコしながら私を見ている。
食堂に着き、私はルイス王子の向かい側に座る。
いつもは末端の席に座るが、ルイス王子が来たときには国王と王妃の隣に座ることになる。ちょっと気持ちがいい。
国王の言葉で食事が始まった。ルイス王子は主にお父様とお兄様達との談話をしているので、たまにルイス王子に話しを振られると笑顔で相づちを打つだけで済んでいる。
たまにルイス王子とお兄様、お父様まで私の胸にチラチラと視線を送るのは止めて欲しいですわ。
食事も終わり、私とルイス王子は中庭へ向かった。
中庭にある椅子に座り、ライトアップされている庭を見ながらお茶をした。
「アリア、最近はあまり手紙の返事がこないから心配してたんだよ。」
「······ごめんなさい」
「だから心配で寂しくて来ちゃったよ!」
来ちゃったよ!って笑顔で言われましても······。
「ご心配おかけして申し訳ありません。」
一応謝っておく。
「そのドレスは·····」
「はい。ルイス殿下に頂いたプレゼントの一つのドレスですわ。少しキツくて手直しをしたのでデザインが変わってますが」
「そうか。その青色のドレスは君に似合うと思って贈ったんだ。だがそんなデザインだったか疑問に思ってたんだよ。とても良く似合ってるよ。」
ルイス王子は私の手を取りキスをした。
それからは「愛してる。君だけだ。」など、いつもの言葉を言ってきたが私の心の中にはもう入ってこなかった。
私は自分で婚約破棄のことを聞いてみることにした。だけど、率直にいうのも躊躇われるので濁しながら。
「ねえ、ルイス王子」
「なんだい?」
ルイス王子は笑顔で応えてくれる。
「例えばなんですが、例えばですよ?私が婚約破棄をしたいと言ったらしてくれますか?」
ルイス王子は真顔になり低い声で返してくる。
「それはどういうことかな·····私よりも好きな人でも出来とか?」
あっ、何か勘違いしてる。
「違いますわ!やはり私に皇太子妃なんて荷が重いと思いまして·····」
「何を言ってるんだい!アリアなら大丈夫だよ!こちらに家庭教師にきている者からアリアは大変優秀で頑張ってると報告を受けているぞ!」
優秀って·····ちょっと話しを盛ってますね先生·····。
「私には自信がないのです。身分も低いですし····それにルイス殿下にはもっと相応しい方がいらっしゃると思います。」
チラッとルイス王子の様子を伺うと、かなり不機嫌そうな顔をしていた。
「アリア、何故そんなことを言うのだ。貴女は十分に皇太子妃に相応しい。私は貴女に私の横に居て欲しいんだ。」
······やはり無理かしら·····。
一層のこと側妃のことを言ってみるべきかしら。
私が考え込んでいると、
「本当に好きな人が出来た訳ではないんだな?」
ルイス王子はまた確認してくるので私も冗談で答えた。
「もしそうだと答えたらどうしますか?」
本当に軽い気持ちで言ってみたのに、ルイス王子の顔が急変して、今まで見たことないような冷たい瞳になり私を見据えた。
えっ?えっ?
「それが本当なら私は嫉妬して相手を殺してしまうでしょう。」
いやいや!本気で捉えられてる?
その言葉を言うルイス王子の目は本気だった。
これは本当に私に好きな人が居たら絶対に殺すに違いない。
私はこれはまずいと思い、慌てて訂正した。
「ルイス殿下、怖いですわ!冗談です!本気になさらないでください。好きな人なんていませんわ!」
私がご機嫌取りにルイス王子の腕に抱きつくと、ルイス王子は笑顔になった。
「驚かさないで。思わず本気にしそうになったよ。」
そう言うルイス王子は目は笑っていなかった。
ルイス王子は私の顎を持ち上げキスをしてきたので、私は瞳を閉じそれを受け入れた。
次の日は仮病を使い、ルイス王子と会わないようにした。
ルイス王子はお見舞いに何度も来てくれた。
「一目アリアに会いたいんだ。」
私は会いたくないんです。
その度にネネに対応してもらった。それも限界のようだった。
「アリア様、これ以上は私には無理です····」
ネネはちょっとげんなりしていた。ルイス王子の顔がかなり変化してきており、今にも強行突破しそうな雰囲気になっているらしい。
仕方なく次にきた時には部屋に入れた。
私はベッドの上でルイス王子を迎えた。
「そんなに体調が悪いのかい?」
「ごめんなさい。風邪を引いたみたいで···ゴホッ!ゴホ」
わざとらしく咳をした。
「ルイス殿下に移してはいけないと思いまして。ゴホッ!」
そんな私を見て、ルイス王子はおでこに手を当て
「熱は····ないみたいだね。大丈夫かい?」
あるわけないですわ。
とは言えないので無難に答えた。
「はい。喉風邪みたいで····」
「そうか。可哀想に。医者には看てもらったのかい?」
「はい。薬を頂いております。」
嘘だけど。
「ならいいが。」
ルイス王子は心配そうに私を見つめ頬を撫でる。
その顔を見ていると少し罪悪感が出てきて胸を締め付けられる。
····ダメ!ダメよ!アリア!
私は心の中で首を振った。
「あれが黒ヒョウのピューマかい?」
部屋の隅でこちらをじっと見つめているピューマを見てルイス王子は聞いてきた。
「はい。とてもいい子なんですよ。おとなしいのですの。」
「そうか····迫力があるな。」
「はい。もっと大きくなるそうです。」
「そうだな。私も一度だけ偶然に黒ヒョウを見たことあるが、ピューマの何倍もある大きさだった。ピューマは連れてくるのかい?」
あっ、お嫁に行く時にですね。お嫁に行きたくないですが····
「はい。連れて行くつもりです。もし許可が降りなければ婚約は無しに····「大丈夫だ!」」
ルイス王子は私の言葉を遮った
「連れてくるがいい。我が国はそんなに心が狭い国ではない。人を襲わないのなら大丈夫だ。父上に何を言われようが私が何とかするから安心するといい。」
心強い言葉をルイス王子はくれた。ちょっと感動しちゃった。
さてそろそろいいわよね。相手は十分したわ。私はそう思い次の言葉をルイス王子に言った。
「ルイス王子には風邪が移っては行けませんのでもうお引き取りください。お見舞いありがとうございました。」
私が少し頭を下げると、ルイス王子は哀しそうに私をしばらく見つめて立ち上がった。
「アリアが元気になるまで滞在したいのだが、無理をしてこちらに来たのでどうしても明日、リンカーヌ王国に帰らなければならない。すまない。」
全然問題ないのでお帰りください!
「いえ·····お忙しい中で来て頂いたのに、お相手もできず申し訳ありません。ゴホッ!」
「明日は出来れば見送って欲しい。」
「勿論ですわ。ですがこちらの部屋からになると思いますが。ゴホッ!」
「分かった。」
ルイス王子は軽く私のおでこにキスをしてから、部屋を出て言った。
私はそれを見届けてから、ベッドに寝転んだ。
「疲れたわ·····」
私は瞳を閉じていたらいつの間にか寝ていた。
それからの後にルイス王子よりお見舞いの花束が贈られてきた。綺麗な薔薇の花束だった。
次の日に、ルイス王子がリンカーヌ王国に帰国する時には自室のバルコニーから手を振り見送った。ルイス王子は馬車に乗る時に何度も私を見上げて手を振り返してくれた。
それから数日後にルイス王子からお手紙がきたのと同時にお父様のところにも書簡が届いた。
私たちはその手紙の内容を見て驚いたのだった。
1
あなたにおすすめの小説
側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!
花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」
婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。
追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。
しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。
夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。
けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。
「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」
フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。
しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!?
「離縁する気か? 許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」
凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。
孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス!
※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。
【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
断腸の思いで王家に差し出した孫娘が婚約破棄されて帰ってきた
兎屋亀吉
恋愛
ある日王家主催のパーティに行くといって出かけた孫娘のエリカが泣きながら帰ってきた。買ったばかりのドレスは真っ赤なワインで汚され、左頬は腫れていた。話を聞くと王子に婚約を破棄され、取り巻きたちに酷いことをされたという。許せん。戦じゃ。この命燃え尽きようとも、必ずや王家を滅ぼしてみせようぞ。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる