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第1話 憧憬

再会 Episode:03

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 町ん中は、通りも含めてほとんど人影はなかった。
 外出禁止令なんかは出てねぇけど、やっぱ状況が状況だから、みんな家にこもってる。

 けどこれも、明日辺りには解消だろう。
 一階が診療所を兼ねてる家まで戻って、俺は呼び鈴を押した。

「はいはい、今開け――あらら」

 叔母さんがドアを開けかけて、あんまり驚いてなさそうな顔でびっくりする。
 このへん、いちばん上の姉貴とそっくりだ。

「可愛いわねぇ。
 どこで拾ったの? あたしこんな子、欲しかったのよねぇ」
「叔母さん……」
「あら、違った?」

 どっと疲れる。

 ――ってか看護士なんだから、見りゃ状況分かるだろに。

 ただこの人の場合、ほとんどが本気だからかなり怖かったりする。
 叔父さんの方は慣れっこだから、まるっきり気にもしねぇで、奥の診療室へルーフェイアのやつを寝かせた。

「ふむ。やっぱり眠ってるだけみたいだな。
 ――ところでイマド、この子があの、ルーフェイアって娘なのか?」
「そだよ」

 ずいぶん迷いはしたけど、結局俺はあの日火事場であったことを、叔父さんたちにはぜんぶ話した。
 だからネミを助けたのがこいつだってのは、知ってる。

 ただ直接見たわけじゃねぇから、叔父さんはイマイチ信じられないみたいだった。

「そうか、こんな子がなぁ……」
「すっげぇ強かったけどな」

 あいつにして見りゃ炎の中も、そのヘンの道路と大差ない気がするし。

「まぁいい、ともかく今は診るのが先だな。お礼ならあとから、ゆっくりできるだろう」

 叔父さんがその辺から、いろいろ要りそうなモンを出す。

「ほらほら、あなたいつまで居るの?」
「え?」

 ぼーっと眺めてっと、叔母さんが妙なことを言い出した。

「だってこいつ、ホントに……」

 当人がケガないって言ってたから、たぶん平気だろうけど、やっぱ心配だ。
 でも叔母さん、ぜんぜん違う理由だった。

「女の子に興味があるのは分かるけど、やっぱりだめよ?」
「ちっ、ちがっ――!」
「はいはい大丈夫、分かってるわよ」

 結局誤解されまくったまま、俺の部屋じゃなくて待合室(なんでだ?)へ追い出される。

「ちょっと待っててね、すぐ終わるから」
「………」

 なんか言う気力も失せて、俺はその辺のソファに座り込んだ。

 備え付けの通話石が着信の合図を出したけど、無視する。
 だいいち遊びに来てるだけの俺が出たって、話がこんがらかるだけだ。

 ――あいつ、何してたんだろな。

 戦ってたってのは、だいたい分かる。けどその中で、あいつは何を見てきたのか。

 あの時、泣き出しちまったルーフェイア。
 ガッコで何するのかも、友達がどんなものかも知らずに、ただ戦う毎日。
 けどそれが、あいつにとっての日常で……。

 ンなことをぼんやりいろいろ考えてたら、奥から叔父さんが顔を出した。
 後ろになんか叔母さんも一緒で、診療材料一式抱えてる。

「イマド、すまん、留守番しててくれるか?」
「いいけど叔父さん、こんな時間にどこ行くんだよ?」

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