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第2話 抱えきれぬ想い

新入生 Episode:05

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(まぁ、ボクも少なかったけどさ……)

 たった独り戦場に残されたあと、運良く保護されてここへ来たロアは、ほとんど荷物らしいものはなかった。

 少女の両親や家族がどうしたのか聞いてみたかったが、それを踏みとどまる。
 もし自分のような目に遭っているのなら、聞くのは酷というものだ。

 わざと知らぬふり、明るい顔をして荷物を運び込む。

「これなら整理は簡単だから、手伝わなくてもいいね?
 そのへんのキャビネットとか、空いてるのは勝手に使って大丈夫だから」

「はい」

「よし、いい返事。じゃぁ後は……施設の案内、かな? 教材はまだだろうし。
 どうする、今から行こうか?」

 荷物を整理しなくて済むぶん、時間が空いてしまっている。

「あ、はい。お願いします」

 少女は素直にうなずいた。
 こうなると見かけとあいまって、可愛さが倍増する。
 いつしかロアは、ルーフェイアを自分の妹のように思い始めていた。

「よし、じゃぁ行こう」

 少女を従えて部屋を出る。

「向かい側が男子寮は聞いた?」

 ロアが問いかけると、金髪の後輩はこっくりとうなずいた。

「夜とか、間違えちゃダメだよ。何されるか分かんないからね」
「あ、はい……」

 まだそういうことはよく分かっていなそうだが、いちおう釘を刺す。
 これだけの美少女だ。何か起こってからでは遅い。
 そのまま並んで寮を出た。

「食堂は……分かるもんね。向かいは診療所。
 え? 知ってるんだ?」

 まだ行ったワケもないのにとよく訊くと、ここへ来てすぐひと騒動起こしたという。

「最速記録だろうなぁ、それ」

 こういう学院だからけっこう荒事も多く、生徒や教官がケガをすることは確かにあるが、「入学のサイン直後に学院長に怪我をさせた」というのは、さすがに言い伝えられていない。

「すみません……」
「あ、気にしない気にしない。銃口なんか向けた学院長が、悪いんだし」

 この場合はどうみても、自業自得だろう。

「それにしても学院長、銃なんて使ってんだ。
 あんな古臭い武器、ここじゃたいして役にたたないのに」

 魔法を効率よく物に付与させる方法が見つかって以来、技術は日進月歩だ。
 武器も当然――というより真っ先にその洗礼を受け、旧来の飛び道具はたちまち時代遅れになってしまった。

 見かけは軽装でも、戦闘行為に携わるものはいまはみんな、魔法の防壁を身にまとっている。
 これを破って相手に傷を負わせるには、魔力の込められた武器が必要だ。

 だが手に持って使うタイプの武器と違い、飛び道具は術者の手を離れるため、持っている魔力が弱い。
 そのため防壁を破れず、食い止められるケースが多かった。
 この結果、武器の主力は再び、近接武器に戻ってきている。
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