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第3話 葛藤

誤解 Episode:08

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「ルーフェイア、私、デザート取りに行くから、食べるならいっしょに行きましょ」
「あ、はい」

 エレニアに声をかけられ、少女も立ち上がる。
 質問ではなく提案の形を取るあたり、彼女もいいかげん慣れてきたと、ロアは思った。

 おとなしいうえに日常生活全般でズレているルーフェイアには、こうして道を作ってやり、選ばせたほうがスムーズだ。
 何より彼女ひとりでは、「選べない」という致命的な問題もあった。

 2人が仲良く話しながら、離れていく。

「今日はなににする?」
「えっと……」

 その後ろ姿を見送るロアの視界に、低学年らしい女子の集団が入り込んできた。

 ――昼食に似つかわしくない、異様な雰囲気。

 一様にルーフェイアのほうに視線をやるさまは、どこか殺気立っている。
 ロアは考え込んだ。

 面倒見がよく美人のエレニアは、後輩に人気がある。
 いわゆる「お姉さま」として憧れられるタイプだ。
 そのエレニアに、親しげにルーフェイアがくっついているから、妬まれたのか。
 
 一団の中心は、赤い髪の子のようだ。
 他より少し背が高いうえ、堂々とした振る舞いで、遠目にも目立つ。

「先輩、エレニア先輩ついてんだから、いくらルーフェイアのヤツがボケてても、平気ですって」
「違うってば」

 それもたしかに心配だが、今はそれよりもあの一団のほうが気になる。

「さっきから何見てんです?」
「うん、あの集団なんだけどさ」

 指差した先を見て、男子3人が口々に答えた。

「あれ、ウチのクラスの連中ジャン?」
「Bクラスの女子も、いっしょじゃないかな」
「だな」

 訊けばルーフェイアたちと同じAクラスの女子と、合同授業でいっしょになることが多いBクラスの女子、両方合わせた一団らしい。

「なんで、あの子たちいっしょに……?」
「女子ども、数があんまいねぇから、合同クラスともよくつるんでますし」
「それは分かるってば」

 気になるのはそんなことではなく、なぜ彼女らがみな、同じような敵意を見せるのかだ。
 エレニアのファンというだけならいいのだが、ルーフェイアと同じクラスというのが引っかかる。

(まさか……)

 イヤな予感がした。

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