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第3話 葛藤

転機 Episode:03

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「じゃぁそしたら、次の授業からやってみよっかー」

 次の授業っていったら、午後の実技だ。内容はたしか、自衛のための格闘技。

「なにを……するの?」
「んー、要するにこういうのって、勢力図がが変わればいいんだよね」

 ミルがちょっと考え込みながら言う。
「どう説明すればいいか」を考えてるみたいだ。

「えーっとだからね……こういうのって誰か、中心になってるのがいるでしょ?」

 イマドたちがうなずいた。
 あたしは気づかなかったけど、みんな分かってたらしい。

「じゃぁさ、どうしてこういうふつうじゃダメなこと、やれちゃうか分かる?」
「本人が、そういう性格だからじゃ?」

 ヴィオレイの答えに、ミルは首を振った。

「それもあるけどね、それだけじゃできないよ。
 ひとりでやってたら、その人のほうが“おかしい人”になっちゃうから」

「――そういうことか!」

 納得がいった顔で、イマドが声を上げる。

「けど、どうやるつもりだ? 切り崩すったって、ちょっとやそっとじゃできねぇだろ」
「女子はねー。でもさ、今回って男子は日和見だから~」
「そりゃそうだけどよ、だからってすぐ、どうにかなるもんじゃねぇぞ?」

 二人の話に、ついていけない。

「あのな……オマイら二人、何の話してんだ?」

 イマドの友だちがそう言って、ちょっとほっとする。
 分からなかったのは、あたしだけじゃなかったみたいだ。

「えー、こんなに説明してんのにー?」
「してないしてない」

 たいへんな話のはずなのに、なんだか笑ってしまうようなやり取り。

「だからね、切り崩す話なんだってば~」

 ミルは自信満々だけど、あたしたちは顔を見合わせるばかりだった。

「ワケわかんね……」
「というか、ミルの言うことだから、最初から理解とか無理だってば」

 ひどい言われようだ。
 だけどこれがふつうなんだろうか? イマドは当たり前って顔をしてるし、ミルのほうは完全受け流しだ。

 ――彼女、強いな。

 そう思った。
 周りを気にしないで、自分のスタイルを貫けてる。

「ともかくさー、やってみようよ? おもしろそうだし。
 それにもう、毒流してきちゃったーし。上手くいったらいまごろ、仲間割れかも?」

 楽しそうに、くすくすと笑うミル。

「――しゃぁねーな。
 ほかに選択肢、いまんとこねぇし。やるだけやってみっか」

「そだな。このまま何もしないじゃ、ルーちゃんいつまでもこのままだし」

 みんなの意見がだいたい一致した。

「じゃぁ決まりね!
 そしたらさっきも言ったけど、次の授業からやってみよ!」

「だからさっきも聞いたけど、何すんだよ」

「んー、わかんなーい。でもそのときになったら、ヒラメくと思うんだ。
 ともかくお昼お昼!」

 ミルの言うことはなんだかいい加減で、ちょっと不安な気はする。
 でも、何かが少しだけ動くかもしれない、そんな感じがした。

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