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第5話 表と裏
遭遇 Episode:01
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◇In Library
ふっと気配を感じて、その男子生徒は顔を上げた。
長身で、整った顔立ちに紅い瞳。
腰まである髪は珍しい銀色――前髪の一房だけ瞳と同じ紅色――で、それを一度うなじのところでまとめて、さらに三つ編みにしていた。
掛けられた縁のない眼鏡が、いかにも知的な感じを与える。
名は、タシュア=リュウローン。
おそらく学内でも、知らぬものはいないかという有名人だ。
物腰は穏やかで、言葉遣いも丁寧。
しかもその態度は上・下級生を問わず変わることがない。
だが。
「人が本を読んでいる時に、横からのぞかれることがどんなに迷惑か、想像もできないのですか?」
言葉こそ丁寧だが、その声は氷よりも冷たい。
実はこのタシュア、その容姿以上に「毒舌家」ということで知られている。
とうぜん覗きこんでいた、金髪碧眼、妖精のような雰囲気の華奢な美少女――つまりルーフェイア――も、その毒舌の餌食となった。
「あなたが同じようなことをされた時のことを、考えてみなさい」
「すっ……すみません」
おそらく悪気などまったくなかったのだろうが、タシュアにそう言われて、ルーフェイアがすくみあがる。
「謝るのでしたら、最初からやらなければいいでしょう」
「ご、ごめんなさいっ!!」
たちまちその瞳に、涙があふれた。だがタシュアは言葉を止めない。
「なんでも泣けば済むと思ったら、大間違いですよ」
「…………」
必死に泣くのをこらえようとしている少女を、タシュアは冷たい視線で見返す。
たまたま居合わせた生徒たちが、この成り行きを心配そうに見ていた。
だが恐れをなしてか、口を挟む者はいない。
と、そこへ図書館とは思えないほどの声が響いた。
「ちょっとタシュア、なに下級生いじめてんのよ!」
「誰もいじめてなどいません。礼儀を失しているのを指摘してあげただけなのですから、むしろ感謝してほしいくらいですね。
それにロア、あなたも図書館でそんな大きな声を出すなど、上級生の態度とはとても思えませんが?」
「なんですって……!」
いっぱつで完全に頭に血が上ったロアに対し、タシュアは嫌味なほどに冷静なままだ。
ふっと気配を感じて、その男子生徒は顔を上げた。
長身で、整った顔立ちに紅い瞳。
腰まである髪は珍しい銀色――前髪の一房だけ瞳と同じ紅色――で、それを一度うなじのところでまとめて、さらに三つ編みにしていた。
掛けられた縁のない眼鏡が、いかにも知的な感じを与える。
名は、タシュア=リュウローン。
おそらく学内でも、知らぬものはいないかという有名人だ。
物腰は穏やかで、言葉遣いも丁寧。
しかもその態度は上・下級生を問わず変わることがない。
だが。
「人が本を読んでいる時に、横からのぞかれることがどんなに迷惑か、想像もできないのですか?」
言葉こそ丁寧だが、その声は氷よりも冷たい。
実はこのタシュア、その容姿以上に「毒舌家」ということで知られている。
とうぜん覗きこんでいた、金髪碧眼、妖精のような雰囲気の華奢な美少女――つまりルーフェイア――も、その毒舌の餌食となった。
「あなたが同じようなことをされた時のことを、考えてみなさい」
「すっ……すみません」
おそらく悪気などまったくなかったのだろうが、タシュアにそう言われて、ルーフェイアがすくみあがる。
「謝るのでしたら、最初からやらなければいいでしょう」
「ご、ごめんなさいっ!!」
たちまちその瞳に、涙があふれた。だがタシュアは言葉を止めない。
「なんでも泣けば済むと思ったら、大間違いですよ」
「…………」
必死に泣くのをこらえようとしている少女を、タシュアは冷たい視線で見返す。
たまたま居合わせた生徒たちが、この成り行きを心配そうに見ていた。
だが恐れをなしてか、口を挟む者はいない。
と、そこへ図書館とは思えないほどの声が響いた。
「ちょっとタシュア、なに下級生いじめてんのよ!」
「誰もいじめてなどいません。礼儀を失しているのを指摘してあげただけなのですから、むしろ感謝してほしいくらいですね。
それにロア、あなたも図書館でそんな大きな声を出すなど、上級生の態度とはとても思えませんが?」
「なんですって……!」
いっぱつで完全に頭に血が上ったロアに対し、タシュアは嫌味なほどに冷静なままだ。
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