上 下
199 / 743
第7話 力の行方

任務 Episode:10

しおりを挟む
 ――ルーフェイア、すごすぎ。

 あのレア防御魔法って意外とむつかしくて、ちゃんとダメージ止められるくらいに使いこなせる人って、教官でもほとんどいないの。

 それに使いこなせても、息止めてられる間くらいしか持たないし、範囲も小さい子がやっとくらい。
 しかも一回使っちゃうと、空間の属性バランスが大きく崩れるとかで、同じ場所じゃしばらくの間使えなくなっちゃう。

 でも発動してる間は、その効果範囲内なら、ほとんど無敵っていい魔法だった。
 だから昔は、イザってときに盾や兜にかけたって言う。

 そんな魔法を、砲弾の外殻にかけたら。

「中の火薬が爆発しても、砲弾自体が炸裂しなきゃ、不発といっしょってことか……」
「そういうことだ」

 あたしたち、なぜか小さくなっちゃってるルーフェイアの肩叩いた。

「すごいじゃない、ルーフェイア。おかげでみんな助かったんだね」
「それは……周辺の魔力の条件、良かったし……砲弾も少なくて、早くから見えたから……」

 褒めたのにルーフェイア、ますます小さくなっちゃってる。

「あと、先輩たち……殿下かばいながら防御フィールド、作ってたし……」

 ほんとに彼女、自慢とか自信とかどっかに落としてきた感じ。
 これだけのことしたんだから、もっと堂々としてればいいのに。

 これって言い換えたら、それだけのことをあの一瞬で見抜いて、それにあわせて行動したってこと。
 あたしたち、ぜんぜん気づかなかったのに。

 そして思った。
 ルーフェイアが少年兵あがりってことは聞いてたけど、それって……こういう場所だったんだ、って。

 こんなことが、日常茶飯事の場所。
 それってあたしでもちょっと自信ないのに、ルーフェイアみたいなおとなしい子には、どれだけ辛かっただろう?

 だったらちょっとくらい泣き虫でも、しょうがないのかも。

「――ルーフェイア」

 けどわいわいやってるあたしたちの間に、シルファ先輩の厳しい声が割って入った。

「ひとつだけ、約束して欲しい。二度とこんなことは……するんじゃない」

 ルーフェイアが、きょとんとした表情になる。

「何か、問題が……?」
「何か、じゃないだろう!」

 シルファ先輩が声を荒げて、あたしたち思わず身をすくめた。
しおりを挟む

処理中です...