上 下
248 / 743
第7話 力の行方

帰還 Episode:01

しおりを挟む
◇Rufeir

「よ。どだったんだ?」
「あ、イマド」

 あの大騒動から一週間ほどして、あたしたちはようやく、学院へと戻ってきた。

 ちなみにいきなりテロで始まった建国祭のほうは、殿下の誘拐事件に絡んで速攻で首謀者が捕らえられた――ただし重体――こともあって、警備は強化したもののそのまま続行された。

 さすがに追悼のセレモニーが追加されたけど、それだけだ。
 むしろそれを、テロリストを非難したうえで、亡くなった方々を称える方向で使っている。

 ふつうの国なら中止しそうなものだけど、この辺は古い国のメンツなんだろうか?
 それとも単に、こういったクーデター騒ぎに慣れてるだけなんだろうか。

 なんだかな、と思う。

 被害を受けた人にしてみたら、どれだけ称えられても意味なんてない。
 なのにそれをやるのは政治、つまりは被害者よりよほど多い、「それ以外の人たち」の都合なんだろう。

 式典自体は伝統ある国なだけあって、雅やかな式典のオンパレードだった。
 というか、あれでも犠牲者に配慮して、少し抑え気味だったっていう。だとすると、例年はもっと華やかなんだろう。

 ――そういえば殿下、どうしてるかな?

 救出後、どうしたわけか殿下のあたしたちへの対応は完全に変わった。
 見下すようなこともなくなったし、警備を兼ねながら、あちこち連れて行ってくれたくらいだ。

 別れぎわに来年の建国祭にもみんなで来るよう、ずいぶん説得されたし。

 けど肝心の学院の方は、授業のレポートがたまっていたりと、楽しんできたツケが回ってきている。

 ――みんなで手分けしてやれば、早いかな?

 ただそうすると、どういうわけか、あたしの分が多くなるのが……。

「数学と物理、まとめといてやったぜ」
「ほんと? ありがと」

 何事も手回しのいいイマドが、ノートを差し出した。
 開いてみると確かに、休んでいた間のの授業が、わかりやすくまとめてある。

 でもざっと最後まで見てみて、敵地で包囲された気分になった。

「こんなに、進んじゃったの……」

 追いつけるかどうか自信がない。
 ふだんだってついていくのに必死なのに、引き離されてしまったら、追いつけなくて落第するんじゃないだろうか?

しおりを挟む

処理中です...