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第8話 言葉ではなく

追跡 Episode:12

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「傭兵稼業やってたら、このくらい当たり前でしょうが」

 だいいちシュマーでの訓練には、こーゆーのまでカリキュラムに入ってるしね。

「そうなの……?」

 ってそういえば、この子受けてないんだっけ。
 どうもうちの実家は信用できないから、この子は最初っからあたしが、戦場連れ出しちゃったものねぇ。

「ともかく、あたしはこれで稼いでるの」
「太刀振り回すのと尾行って、関係あったんだ……」
「――それは違うだろ」

 違うかしら?

「え、おばさんってば現役なんですか?」
「そうよ♪」

 ナティちゃんが興味津々って顔で訊いてきた。

「へぇ……なんか面白い話ってあります?」

 シーモアちゃんも学院生なだけあって、話訊きたがるし。

「面白い話? そぉねぇ……」

 正規軍に振り回された話なら山ほどあるんだけど。
 とりあえずいちばん傑作だったの、あの話かしら?

「いつだったかな、ロデスティオの傭兵隊――ってあたし、ここがいちばん多いんだけどね、そこが例によってアヴァンへ侵攻した時があって……」

 お嬢ちゃんたちが身を乗り出してくる。

――話甲斐あるわぁ♪

 けど、話さないうちに腰折られちゃった。

「母さん、そんな話してる場合じゃないでしょ……」
「え? あ、なんの話だっけ?」

 さっぱり覚えてないんだけど。

「……場所を突きとめたって話……だと思うんだけど……」
「そうだった?」

 こう言ったらルーフェイアの方も不安になっちゃったらしくて、困った顔してイマドのほうを向いてるし。

「俺だってしらねぇって。
 シーモア、結局ここで何の話するんだ?」

「あんたら……」

――なんだ、結局誰も知らないんじゃない。

 知らないこと訊かれても、困るのよねぇ。

「と、ともかくね、まずつきとめた場所を教えてもらえない?」

 妙にレニーサ慌てて、どうしたのかしら?
 でもつきとめたの、あたしじゃないし。

「ディアス、どこだったの? 騒ぎの場所からは遠くなかったみたいだけど」
「錆びビルの隣のホテルだ」

 なにそれ?
 錆びたビルなんてお目にかかったことないわ。って違う違う、その隣か。

「そこが丸ごと、ですかね?」

 ダグくんが腑に落ちないって表情で、ディアスに尋ねる。
 もっともディアスときたらいつものごとく黙ったままで、代わりに答えたのがレニーサ。

「丸ごとってことはないでしょうね。なにせあそこの支配人、あたしの知りあいよ」

 確かにレニーサの知り合いなら、何かあったら情報が入るでしょうね。
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