上 下
372 / 743
第8話 言葉ではなく

証拠 Episode:03

しおりを挟む
「そんなわけで、なぁんか役人街の住人が絡んでるのはわかったんだけどね。
 ただそれが、どこの誰で何の目的かはさっぱり」

 うんうんとみんなもうなずく。

「ウワサの中にそれ系の話、何かなかった?」
「あったぜ」

 にやっとゼロールさんが笑った。

「コーニッシュ大佐がどっかの犯罪組織とつるんでるってウワサが、最近聞こえてきてるそうだ」
「コーニッシュ大佐? あの陸軍の?」

 あたしもびっくりして顔を上げる。
 ロデスティオ軍のコーニッシュ大佐といえば、軍の中でもトップクラスの実権の持ち主だ。

「ということは、大佐が庇護してるせいでファミリーはやりたい放題、ついでになにをやってもお目こぼし……ってとこかしらね?」
「それなら話の辻褄が合うな」

 レニーサさんや切れ者のガルシィさんも納得したみたいだ。

「つまるところファミリー連中はなんやかやと手を回してもらって、大佐はその見返りに大金をもらう。資金源はおおむね麻薬。
 ついでにいろいろ邪魔なクリアゾンなんかをファミリーが潰す手助けをして、もう一段双方で甘い汁、と」

「確かにクリアゾンが潰れりゃ、その隙にシティを牛耳れるしな」
「しかも警察やら軍やらは、反抗分子がいなくなって喜ぶってわけだ」

 みんな、話の筋道が見えてきたらしい。

「それにしてもこのシティの偉いさんは、やること汚ねぇな」
「汚いと言うよりあれは、気が乗ったかどうかと利益があるかどうかで動いてるな」

 誰もが酷評する。

「けどコーニッシュ大佐ったら穏健派だから、ほかとは違うと思ってたのに」

 憤懣やるかたないって調子でつぶやいたのは、ナティエスだ。

「でもナティ、あの大佐、昔はワサールのテロ組織を片っ端から潰してたって言うよ」

 ここまで軍の信用がない国も、そう多くはないだろう。

「ま、偉いやつなんて誰でも同じってことさ。

 そしたら、そのコーニッシュ大佐をどうにか叩きのめして……」

「――ねぇ、そのウワサ、ホントなの?」

 怒りに燃えてたみんなに水をさしたのは、母さんだった。

「さぁな。でも、火のないところに煙は立たないとも言うし」
「そりゃそうだけど……」

 どうもこの話に納得できないらしくて、顎に手を当てて考えこんでいる。
しおりを挟む

処理中です...