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第8話 言葉ではなく

証拠 Episode:11

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「ったく、いらんこと言いやがって。
 ほら、別にいいんだよ。死んだ娘を思い出しただけなんだ。あの子もこれが好きでね、よく欲しがってたもんだから」

「そんな……」

 話を聞いて、よけい悲しくなってしまった。

 あたしと同じくらいで死んでしまっただなんて、ボスはとても辛かったはずだ。
 なのに、そんなことを思い出させてしまうなんて。

「こりゃ困ったな。頼むから泣き止んでくれないか?」
「――ごめんなさい」

 泣きながら謝る。
 泣くのもやめたほうがいいのだろうけど……自分でも情けないけれど、申し訳なくて可哀想で、涙が止まらない。

 隣でイマドが、笑いながら立ち上がった。

「すいませんこいつ、メチャクチャ泣き虫なんですよ」
「ありゃ、そうだったのか」

 なんだかヒドいことを言われる。

「もー、かなりすごくて、学院でもしょっちゅうこうなんです。それに一回泣き出したら、そう簡単に止まんないですし」
「イマド、ひどい……」

 さすがに抗議する。ホントのことだけど、人前で言われるのはさすがにイヤだ。

「なら泣くなって」
「ごめん……」

 思わず謝ったけど、まだ涙は止まらなかった。
 そのようすを見ていたボスが、笑い出す。

「けど、泣いてるのも可愛いなぁ。うんうん、可愛い」

 この人まで、母さんみたいな言い方だ。

「いまどきこの辺じゃ、そうやって泣く子もいないしな。いいじゃないか、子供らしくて」
「そですかね?」

 イマドが答えてる横で、必死に涙をぬぐう。
 泣いてるのが「可愛い」なんて、言われるあたしは面白くない。

「よしよし、可愛いからやっぱり、何かあげよう」
「い、いいです……」

 断って、それ以上泣かないようにガマンした。
 イマドやボスや他の人がまた笑ったけど……ここで泣いたらまた言われるだろう。

「とりあえずこいつ、向こう連れてきますね。つか、俺ら寝たいですし」
「おう、悪かったな。お嬢ちゃんのこと、慰めてやってくれ」
「はい」

 イマドがあたしの腕を引っ張った。

「ほら、行くぞ」
「――うん」

 あたしも立ち上がって続く。
 後ろからレニーサさんもそっとついてきてくれて、いちばん奥の部屋にベッドを用意してくれた。

「さ、これで寝られるわよ。
 そんなに泣いて疲れたでしょう? ゆっくり寝なさいね」

「――はい」

 その言葉に甘えてベッドへもぐりこむ。
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