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第8話 言葉ではなく

戦闘 Episode:05

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◇Rufeir

「あんたたち、なに民間人に刃向けてるのっ!」

 母さんの怒声と共に銀光が閃いた。
 剣をはじき飛ばされて、兵士が膝をつく。

「ずいぶん強い人だな」

 くっついてきたゼロールさんが感心した。 

「うちの両親、いちおう現役で傭兵稼業こなしてますから。
 ――大丈夫ですか?」

 答えながら、兵士に素手で立ち向かおうとしていた男の人に駆け寄った。

「た、助かったよ。もうダメかと思った」

 男の人の後ろには奥さんと、抱きかかえられた赤ちゃん。
 ゼロールさんがすかさず写影に撮った。

「女房と子供を、スラムの外へ出そうと思っただけなのに、途中でこいつらに出くわしちまって……」
「おっさん、もう出るのはムリだよ。早く家へもどった方がいい」
「シーモア?」

 声に振り返る。
 炎色の髪をした、見慣れた姿があった。

「こっち、終わったよ♪
 あれ? ルーフェイアじゃない」

 ナティエスもどこからか出てくる。

「二人とも、どうしてここにいるの?」

「そんなびっくりした顔しなさんなって。
 ボスなんかに言われてね、スラム中に知らせてたのさ」

「あ、それで……」

 どうりで辺りが静かだったわけだと納得する。

「けどよ、この状態で知らせたって無意味じゃねぇのか? よほどのバカじゃなきゃ、見りゃわかるぜ」

「別にただ『来た』って、言ってるわけじゃないからね」

「――?」

 それ以外に、何を伝えてるんだろう。

「はい、お喋りはそこまでね。やることが山積みなんだから」

 一通り兵士を蹴散らし終わった母さんが、もどってきた。

「連中いったん引いたから、次は本格的に来るわ。あたしはディアスの方へ回るから、ここは頼んだわよ」
「わかった」

 さっき父さんから聞いた話では、このスラムで人形を持ち出せそうな広い通りは、ここともう一本しかないのだという。

「イマド、連絡役お願いね。
 んじゃ向こう、片づけてくるから」

 それこそ片づけものをしてくるような調子で、母さんの姿が路地へ消えた。

「緊張感とか、カケラもねぇ人だよな」
「だから、言わないで……」

 イマドの言葉に思わずため息をつく。
 しかもあれで、意外にも失敗しないっていうのが……。
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