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第9話 至高の日常

日常 Episode:03

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「そう言えばイマドは、いつ帰ってくるんだ?」

 なんとはなしに訊く。

「えっと、今日の午後帰ってくるんです」

 嬉しそうにルーフェイアが答えた。
 当人は全く自覚していないのだろうが、やはりイマドの傍がいいらしい。

「じゃぁこのあと、ケンディクまで行くのか?」
「はい」

 その答えを聞いて、私は少し考えこんだ。

「そうしたら……ケンディクまで一緒に行くか?」

 ルーフェイアの表情が一瞬だけ輝く。
 ただ遠慮深いこの子は、またすぐにうつむいてしまった。

「どうした?」
「いえ……その、迷惑、ですから……」
「いいんだ」

 きっぱりと言い切る。

「今日はもともと、このあとケンディクへ出て、買い物をしようと思っていたんだ」

 こう口添えすると、ようやくルーフェイアが安心した顔になった。

「シルファも甘いこと」
「でも、どうせ行くんだ。それに駅までだし」

 きっちりと突っ込んできたタシュアに、いちおう言葉を返す。

 ルーフェイアはひとりを嫌がる子だ。だからもう慣れているケンディクでも、あまりひとりでは行きたがらない。

 だが、その気持ちはよく分かった。
 私も……やはりひとりは、苦手だから。

「イマドはいつ頃、駅に着くんだ?」

 尋ねると、ルーフェイアが顎に手を当てちょっと首をかしげて――癖らしい――から答えた。

「えぇと……確か、12時半過ぎには着くって……」

 思わず時計を見る。
 が、状況を理解したのはタシュアのほうが早かった。

「――次の連絡船に乗らなければ、間に合いませんよ」
「え、あ、すみません!」
「誰も謝れとは言っていませんが」

 またタシュアに突っ込まれて、ルーフェイアの瞳に涙がにじむ。

 ――でも。

 私以外は誰も気付いていないだろうが、これで案外タシュアはルーフェイアに甘い。
 確かにいつも泣かせてはいるが、逆に言えばそれだけ相手をしているということだ。

 私の他にタシュアがこうやって多少なりとも相手をするのは、知るかぎりではこの子だけだろう。
 だいいち今も突っ込みながらだが、ちゃんと間に合う時間を教えている。

「とりあえず、まだ時間はあるだろう?
 ほらルーフェイア、食べてしまった方がいい」

 このまま泣いていて食べはぐるのも可哀想だから、そう言ってうながす。
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