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第9話 至高の日常

不審 Episode:14

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(それにしても……)

 キエーグ場で倒れたルーフェイアの「理由」を思い出して、タシュアは考え込んだ。

 精霊というのは所詮、人に「取り憑く」存在でしかない。
 だからこそ所有者の精神を喰らい、無理矢理自分の居場所を作る。

 だがルーフェイアは――完全に逆だ。
 普段から彼女が精霊を外さないことには気づいていたが、まさか外せないとは思いもしなかった。

 確かに念話を外せば身体機能が通常に戻るため、一時的に身体がついていかなかったり、感覚が混乱したりということはある。
 とは言えそれは、あくまでも一時的なものだ。時間が経てば元に戻る。

 その辺りから見ても、ルーフェイアの反応は異常としか言いようがなかった。

(あれではまるで……)

 念話しているのではなく、共生していると言っていい。

 ――シュマーのグレイス。

 代々傭兵をしているシュマー家に産まれる、少女。
 産まれながらにして強大な魔力と戦闘力とを備えると言うが、それ以外にも間違いなく何かがある。

 だがそれが何なのかは、さすがに見当もつかなかった。

 シュマー家に関しては、タシュアは他の人間に比べればかなりの情報を持っている。
 一年程前に、偶然ネット上でクラッキングの練習をしていたルーフェイア――どうも同室のロアに教わったらしい――を見つけて後を尾けているうち、シュマーの内部ネットに辿りついたのだ。

 その後侵入にも成功し、暇を見つけてはもぐりこんでいる。

 ――既に侵入者がタシュアだということは、ばれてはいるのだが。

 ただそれでも何もないところをみると、どうやら分かった上で放置されているようだった。

 それはそれで気に入らない。

 だが何かするほどの気にもならなかった。
 こちらが何もしない限り放っておいてくれるというなら、それを最大限に活用するだけだ。

 ともかくそんな経緯で、タシュアはシュマーに関する知識は人並み以上だった。

 だが意外にも内部ネットでさえ、グレイスやシュマー家自体に関する情報は少ないのが実情だ。

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