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第9話 至高の日常

動揺 Episode:04

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「ねぇ、シエラへの派遣要請……出たの?」

「派遣要請でございますか? 少々お待ちを――ええ、もうユリアス政府から内密に要請があり、学院側も派遣を決定したそうです」

「え、もう?」

 これには驚く。

 まだ事件が明るみに出てから、そう時間は経っていないはずだ。
 それなのに、この時点で派遣が決まってるなんて……。

 もちろんいろいろ準備なんかもあるから、今すぐ派遣とはならないだろう。
 けどかなり早い時点で、ここへ上級傭兵の先輩たちが来るのは間違いない。

 ――誰が、来るんだろう?

 これほどの事件となると、あるいは総出かもしれない。

「それにしてもユリアス政府も学院も、案外対応が早いですな」

 ドワルディが感心する。

 もっともユリアス政府にしてみればシエラしか頼れないだろうし、学院もまさか国内の事件で、派遣をためらうことなんてできなかったんだろう。

 ただ逆に言えば、もう政府は突入を覚悟したと言うことだ。
 あとは、犯人たちがどう出るかだった。

 ――どうなるんだろう。

 かといって、そう簡単に人質を解放してくれるとは思えないし……。

 考え出すときりがなかった。
 確かに中には上級傭兵のタシュア先輩やシルファ先輩がいるから、出来る限りのことはしてくれるだろう。

 でも、何もかも当てにするわけにはいかない。
 それに突入になった時、うまく同調できないかもしれなかった。

 こういう突入と言うのは意外だけど、ただ攻撃してもだめで、事前に綿密な計画を立ててそのとおり実行される。
 けど中の先輩たちには、これを知る方法がない。魔視鏡も通話石も、たぶん押さえられてしまっているはずだ。

 もちろんタシュア先輩が、ミスをするとは思えないけど……。

 でも連絡が取れれば、他にも中の様子を知って適切な作戦を立てることも出来る。

 ――使える装備、ないかな?

 シュマーの手持ちのもので、いい方法がないかと考え込む。

「なにか、問題がございますか?」
「うん……連絡、できないかなって……」

 そう答えると、ドワルディが一瞬だけ怪訝な表情になった。
 あたしが悩んでることが、意外だったみたいだ。

「中にいらっしゃるお友達の皆さまに、でございますよね?」

 彼が確認してくる。
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