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第9話 至高の日常

掌握 Episode:04

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 シュマーの一族は子供の死亡率が高い。
 それも戦死ではなくて、病死してしまうケースが多かった。

 というのも、一族が持つ強靭な体質が、一方で適合しきれなかった子たちを、死なせてしまうのだ。
 もちろん今も必死に治療法が研究されている。でも原因も症状もさまざまで、決定的なものはなかった。

 ――早く、方法が見つかるといいのに。

 発症したが最後、かなりの確率で死んでしまうという点では、この子たちよりも重症だろう。
 そんなことをいろいろ考えながら、人質になっている子たちの相手を続ける。

 と、ドアが開いた。
 その向こうのに見えたワゴンに、子供たちの瞳が輝く。

「おかしだ~っ!」
「だめっ、静かにっ!」

 とっさに制止した。
 ただでさえ犯人たちはイラついているはずなのに、騒いだりしたらよけい刺激してしまう。

「今、ちゃんと分けてあげるから、待って」

 ワゴンの上には哺乳瓶のほかに、コップに入ったミルク、ビスケットやキャンディーなんかがたくさん載っていた。

 一緒にあるサンドイッチに、見覚えがある。
 シルファ先輩が持って行ったものだ。

 中を見ると、ちゃんと数が減っていた。
 だとすると食べたのは、イマドだろうか? もしかすると、タシュア先輩と2人、少しだけ食べたのかもしれない。

 どっちにしても余らせておいたのを、看護士さんが患者さんから食料を集めた時に、渡したんだろう。

 ――あっちもお腹、空かしてるかも。

 今日は夕食は出てないし、サンドイッチも食べきってない。だったらきっと、足りないはずだ。

 あとでこれが片付いたら、どこかで夕食にしたほうがいいかもしれない。
 そんなことを考えながら赤ちゃんから順に哺乳瓶を渡して、残る食べ物を他の子に分ける。

 それからコップのミルクを配ろうとして――あたしは気づいた。

 数が合わない。

 哺乳瓶の数は4つ、コップの数は14。
 けどここにいるの子供は、あたしを含めて15人だ。しかも哺乳瓶を使う子を除くと、11人分で足りる。

 だとすれば、この3つは――。

 全部のコップをざっと見て、あたしは確信を持った。
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