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第9話 至高の日常

破局 Episode:08

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「――借りるぞ」

 俺も黙って差し出す。
 燃えてるヤツにとどめ刺すにゃ、やっぱ長剣のほうがいい。

 先輩が剣を振り上げる。

 ――って待てっ!

 こいつが、懐から出そうとしてるの……!!

 容赦なく先輩がとどめを刺したにもかかわらず、石が淡緑色に輝き始めた。
 俺と、どっからか来たタシュア先輩、それに倉庫から出てきたルーフェイアの言葉が重なる。

「やべぇっ!」
「――シルファっ!」
「いけない、その石っ――!!」

 ルーフェイアのヤツが言うとおり、こんなもんが発動しちまったら良くてフロア全体、悪けりゃ病院自体が吹っ飛ぶはずだ。

「早くここから離れなさい、呪石です!」
「なにっ?!」

 まずルーフェイアのやつが、続いてシルファ先輩が、魔法を発動させた。

「エターナル・ブレスっ!」
「ルス・バレーっ!」

 その間に俺は前へ出る。

 ――出来るか?

 いや、ムリでもやるしかねぇ。

 石の魔力に俺を合わせて、強引に押さえこんだ。
 淡緑色の光が不安定に明滅し始める。

 どういうわけか俺は、生まれつきオプション?が幾つかついてた。例の念話能力もそうだ。
 なかでもいちばん重宝してるのが、魔力を外からコントロール――まぁある程度だけだけど――するやつだった。

 っても相手がこれだけデカい魔法じゃ、瀬戸際でほんのちょっと食い止めんのが精一杯だ。
 なにをどう考えたって、そう長くはもたねぇだろう。

「早く、今のうち……!」

 俺が言う後ろで、タシュア先輩がなんだか聞いたことのねぇ魔法を唱え始めた。

「無念の声が響く闇の底にて、其は黄泉の回廊を迷わん。開け、黒き審判の門――」

 けど、なかなか発動しない。もともと手間取る魔法なのか、それとも相手が発動しかけのせいなのか……。

 俺のほうの体力と魔力が、凄ぇ勢いで削られてく。
 立ってるだけで、ほとんど目いっぱいだ。

「ダメだっ、もう持たねぇっ!!」

 そん時だった。

 ――ルーフェイア?

 いきなりこいつが、俺と石との間へ飛び出す。

「な――?!」

 ルーフェイアのやつが動いたことより、一瞬見せた表情に俺は凍りついた。

 ――あいつじゃねぇ。

 見かけはそのまま、でも完全に中身は別モン……。
 そして気配は、精霊。

 不意にその姿が、石と一緒に消えた。同時に俺はいきなり、かかってた圧力から開放される。

「ルーフェイアっ!!」

 膝をつきそうになりながら、必死にあいつと精霊との気配を探った。
 どこにいる? どこへ行った……。

「――上かっ!」

 遥か高みにあいつを見つける。
 倒れそうだったのも忘れて、俺はナースステーション飛び出して、階段を駆け上がった。
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