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第10話 空(うつほ)なる真実

学院にて Episode:03

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 そうこう考えているうちに、船が港についたらしい。

 止まった連絡船から、急いで降りる。
 買うものの中には細かいものも多いから、急がないと夜になりそうだった。

「えぇと……」

 いちばん買いたいのは、服だ。

 孤児が多い学院では、そういう子供たちにはきちんと、お小遣いをくれる。
 だがその額はそれほど多くはなくて、文房具などのこまごました物を買うと、ほとんど残らなかった。

 当然服などそう簡単には買えなくて、みんな制服や先輩からもらったもので、間に合わせている。
 だから……。

 上級傭兵になってから貰うようになった給料は、大部分は立てた予定のために使ってしまったけれど、まだ少しは残っている。
 その中からやりくりしてでも、新しい服が欲しかった。

 メインストリートを、ゆっくりと歩いていく。

 ――あ♪

 ウィンドウに、素敵な服が飾られているのに気が付いて、立ち止まった。

 水色のタンクトップに、薄紫の半袖ブラウス、それに白のスラックス。
 どれもシンプルなのに、とてもセンスがいい。

 だが付けられている値段は、全く手が出なかった。
 もっと安いところへ行って、似たようなものを探すしかない。

「おや、うちに何か用かい?」
「え……?」

 ため息をついて行こうとしたところへ、後ろから声をかけられた。

「どれか、気に入ったものでも?」
「いえ、その……」

 男の人で、この店のオーナーらしい。

 ――どうしよう。

 欲しいのは確かだが、買うわけにはいかなかった。
 ここでこれだけ使ってしまったら、他のものが買えなくなってしまう。

 でも、いきなり断るのも……。

「あれ、もしかして君、シルファって言わないかな?」
「どうして、それを……?」

 この人とは、初対面だ。
 だいいち大人の男の人など、フォセ先輩以外は学院の教官しか知らない。

 けどこの人は、そんなことはお構いなしだった。

「そうかそうか、やっぱりなぁ。
 うちのミルから聞いちゃいたけど、こうして見るとほんとに美人さんだ」

「ミル……?」

 ミルと言えば確か、ルーフェイアと同じクラスの仲良しだ。

「あれ、知らないかい?」
「ミルドレッドでしたら……知ってますが……」

 よく私が作ったケーキを、ルーフェイアと一緒に美味しそうに食べている。
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