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第10話 空(うつほ)なる真実

ルアノンにて Episode:06

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「そんなこと言ったって、ルーちゃんが来たのよ? 早く出てらっしゃいってば」
「え?」

 こんどはばたばたと音がして、イマドが出てきた。
 エプロン姿が、妙に似合っている。

「シルファ先輩がこいつ、連れてきてくれたんですか?」
「いやその、連れてきたというか……」

 どちらかといえば、誘拐ついでに寄っただけだ。
 何かを察したのか、イマドは面白そうに笑ったが、追求はしてこなかった。

「先輩、あがってってくださいよ。いまちょうど、メシ作ってましたし。
 ルーフェイア、魚じゃねぇけど、ガマンしろよな?」

「あ、うん、平気」

 座らされた私たちに、手際よくお茶とお菓子とが出される。

「……ほんとに慣れてるんだな」
「休みのたんびに来て、毎日やってたら、イヤでも上手くなりますって」

 ちょっと気の毒になってくる。

「あの女の人は……やらないのか?」
「叔母さんですか? 任せるほうが怖いです」

 その答えに、なぜか納得してしまった。

「仕事なら、一流なんですけどねー」
「まぁ、それならいいんじゃないか?」

 自分でも釈然としないまま、いちおうフォローしてみる。

 ルーフェイアは不満そうだった。
 イマドが働かされているのが、気に入らないらしい。

 この子にしては珍しく、怒ったような調子で言う。

「イマド……へいきなの?」
「テキトーに手抜きしてっから、平気だって。終われば遊んでるしな」
「そうなんだ」

 あっさりと丸め込まれて、ルーフェイアがうなずいた。
 やはりこの辺のあしらい方は、彼は上手い。

「で、なんでここ来たんです? 渓谷でも見に?」
「ああ」

 ここへ来て大渓谷を見ないほうが、おかしいだろう。

「んじゃ、俺も行くかな」

 イマドの言葉に、ルーフェイアの表情が輝いた。

「ほんとに?」

 二人の様子が、見てて可愛らしい。
 ならばここに居る間、少しでも多くいっしょに居させてやろうと、私からも持ちかける。

「イマド、行けるなら、案内を頼みたいんだが……。叔母さんには、私から話をするから」

「いや、いいですよ、自分で言いますから。
 てかふだんから、『ここに居る時くらい遊んでろ』って怒られてるんで、叔父さんたち喜びますって」

 要するにこの料理だのは、見かねてイマドが勝手にやっているだけらしい。

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