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第10話 空(うつほ)なる真実

ルアノンにて Episode:07

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「あらあら、何のお話?」

 いったん診療所のほうへ行っていた女性――要するにイマドの叔母さん――が、戻ってきた。

「これから、どこか出かけるの?」
「今日じゃなくてさ、先輩たち、明日渓谷行くって。俺も行ってくる」

 これを聞いた叔母さんの顔が、ほころんだ。

「いいじゃない、是非そうしなさいよ。あなたったらいつも家の中で何かしてばかりで、ちっとも遊びに行かないんだもの」

「しょっちゅう来てんのに、いまさらこの町でどこ見るんだよ……」

 親子のような言い合い。
 けっこう上手く、イマドはやっているようだ。

「ともかくよかったわ。少しは子供らしく、遊ばなきゃダメよ」
「幼稚園児かよ」

 二人のやり取りを、可笑しそうにルーフェイアが聞いている。

「そうしたら、明日の用意しなくちゃね。お弁当作って、飲み物用意して……」

 さっきも思ったが、イマドの叔母という人は、ほんとうに他人の話を聞かないようだ。

「マット要るかしら? あ、走竜のことも誰かに言っておかなくちゃ」
「頼むからおばさん、何もしないでくれ……」

 いつも振り回されているらしいイマドが、半分諦め顔で、それでも注文を出した。

「あら何を言ってるの? せっかくルーちゃんや先輩も来てるんだもの、こういうときこそ腕によりをかけてやらなくちゃ」
「だから、それをやめてくれってば!」

 殆ど悲鳴に近いところを見ると、『任せられない』というのは、本当なのだろう。

「えっと、あの、渓谷を見ながらどこか適当な店で、食べようと思っていたので……」

 つい、助けに入る。

「あらそうなの。じゃぁお弁当は要らないわねぇ」

 叔母さんが残念そうに言って、申し訳ないがちょっとほっとした。

「予約とかも、俺やっから。ゲルニドさんとこなら、よく知ってっし。
 てか叔母さん、下降りなくていいのかよ。まだ診療時間、終わってねぇじゃん」

「そういえば、そうだったわ」

 イマドに言われて、初めて思い出したらしい。
 この人が慌てて、部屋を出て行った。

「なんだか、すごい人だな……」
「振り回されっぱなしですよ」

 そう言うイマドの言葉には、実感がこもっていた。
 とはいえそれでも休みのたびに、遊びに来ているというのだから、やはりここが好きなのだろう。
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