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第10話 空(うつほ)なる真実

再び学院にて Episode:01

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 ◇Tasha side

 最初に目に入ったのは、変わりばえのしない天井だった。
 起きだして、着替える。

 壁面の棚を埋め尽くす本と、机と、その上の魔視鏡二台。
 寝室というよりは、仕事場か書斎の隅で寝ている、と言ったほうがいいだろう。

 ロデスティオから戻ってきて、すでに数日。
 残った休みをタシュアは、手に入れた資料や情報を読み漁り分析するのに、費やしていた。

 わざわざ行った甲斐はあった、そう思う。

 予定を延ばしてなお時間が足りないくらいだったが、それでも当時の貴重な話を直接聞くことができたし、狙っていた「物」や書類も手に入った。
 これらを手がかりに、うまくやれば事態を変えられるだろう。

 そもそもが、後ろ暗いところのある相手だ。
 突付けば必ず何か出る。

 あとはこちらが、どれだけ追い込めるかだった。

(と言っても、すぐにはムリですか)

 焦るつもりはないが、かといって、あまりのんびりもしていられない。

 物事というのは時間と共に風化することを考えると、既に10年以上が過ぎている現在、時間的にぎりぎりと言っていい。

 だが調べたり分析しなくてはいけない事が多いし、場合によっては他人の手も借りなくてはならない。
 とても今日明日というわけにはいかなかった。

 顔を洗って、飲み物を淹れる。

 この部屋に、とりたてて思いいれがあるわけではない。
 とはいえ慣れた場所は旅先と違い、やはり気が楽だった。

 いつもどおりに用意していつものように飲みながら、ふと思い出す。

(シルファは、今頃どこにいるのやら)

 学院を出る前に話したきり、ずっと会っていない。

 旅先からも何度か連絡したが、話ができたのは最初の1回だけだ。
 2回目以降は、「旅行に出ている」というのが、学院側の答えだった。

 帰ってきてからも姿を見かけないとなると、長期の旅行なのだろう。
 どこへ行ったかは知らないが、楽しんでいれば、と思う。

 そう考えるうち、ふと思い至る。

(1人で旅行に、出たのですかね……?)

 自分が勧めたのもあって、今まで疑問にも思わなかったが、シルファは1人が苦手だ。
 そんな彼女が、自分だけで行くだろうか?

 だが誰かを誘ったというのも、にわかには信じがたい。
 なにしろシルファは、人が苦手なのだ。
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