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第10話 空(うつほ)なる真実

孤島にて Episode:01

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 ◇Sylpha

 ルーフェイアに連れられて来た島で、もう数日が過ぎた。

 どうかと訊かれたら、「快適」と答えると思う。

 宿泊場所として提供された屋敷の一室は、ホテルの極上の部屋よりも上等だ。
 食事もそれに見合ったものだし、ビーチは占有に近い。

 他の人が、居ないわけではない。

 ルーフェイアが来る前に言っていたとおり、泊まりに来ている人をビーチで見かける。
 ただ私たちの居るのとは、別の建物を使っているとのことで、あまり顔をあわせることはなかった。

 ルーフェイアは、いま居なかった。
「家がこの島を所有している」というだけあって、ここではいちおう主人になるらしい。

 そのせいか、時々ここの従業員(?)らしき人から相談を受け、何かをしに行く。

 ただ私の見るかぎり、ルーフェイアはここの従業員に、かなり好かれているようだ。
 大人しいうえに優しい子だからだろう、皆に愛されている。

 そんな子がシエラに居なければいけない理由を思って、少し辛くなった。
 もしあれほどの戦闘力がなければ……こういうところで愛され、何一つ不自由の無い生活をしているだろう。

 だが一方で思う。それは本当に、幸せなのだろうかと。

 もちろんルーフェイアやタシュアのような育ち方が、いいとは思わない。
 だが何も知らず何の不自由もないというのも、幸せとは少し違う気がした。

 空を見ると、陽が少し傾いている。
 のんびり出来るのはいいが、独りがやっぱり嫌で、私は屋敷へ戻った。

「お帰りなさいませ。グレイス様なら、裏庭のほうに行かれましたよ」

 私の姿を見つけて、若い女の人が話しかけてくる。

 ここは以前行ったアヴァンの公爵家と違って、働いている人たちが気さくだった。
 慇懃なところもないし、私を見ると気安く声をかけてくれる。

 だがせっかく教えてもらったのに、「裏庭」と言うのがどこか分からなかった。
「裏庭」と言うからには、この建物の裏手なのだろうが……。

 けれど私が言うより早く、向こうのほうから言ってくる。

「あ……申し訳ありません、『裏庭』だけじゃ分かりませんよね」

 不思議な事にここでは、問うより先に答えが返ってくることが多かった。
 それだけ、訓練されている人たちなのかもしれない。

「そちらに、この屋敷を回り込んでる、道がありますよね?」

 言って彼女が、私の左手を指し示す。
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