719 / 743
第10話 空(うつほ)なる真実
そして、学院にて Episode:06
しおりを挟む
「ようやくご帰還?」
もう一人ディオンヌの後から来たのは、シェリーだ。
同じ上級傭兵で、ディオンヌを通じて知り合った。
「ずいぶんゆっくりだったわね。もうとっくに、休みは終わってるわよ?」
「ああ。現地で急遽、任務が入ったんだ」
私の答えを聞いて、ディオンヌがうなずいた
「なるほどね。でも考えてみりゃそうよね。シルファのカレシじゃあるまいし、消えたりするわけないものねー」
酷い言いようだが、否定できないところが辛い。
ディオンヌとは対照的に、いつも冷静なシェリーが口を開いた。
「ところで、シルファ。タシュアと別れたって本当かしら?」
言葉の意味が分からず空回りする思考で、なんとか聞き返す。
「……誰が?」
「シルファが」
「……誰と?」
「タシュアと」
余計に分からない。
「……なぜ?」
「わたくしに聞かれても困るわ」
「そ、そうだな。すまない」
何がどうなっているのか私にも分からないのに、シェリーに分かるわけがない。
ただ彼女自身は、何か納得したようだった。
「その反応なら、ただの噂にすぎないってところかしら」
そんな風に訊かれて答える。
「そうだな。別れたつもりはないな」
「ん、それならいいのだけれど。じゃぁ、タシュアが年上金髪美人人妻と不倫しているっていうのも、根も葉もない噂なのね」
今度も思考が空回りしかけたが、少し考えてどうにか理解した。
どうも私が出かけていた間に、かなりややこしいことになっているらしい。
「その人妻に心当たりはあるが……その人は、私とタシュアの依頼人だぞ」
「あらそう、やっぱりね。そんなことだろうと思ったわ」
「え、じゃぁやっぱりあれ、誰かの勘違いだったんだ」
幸いディオンヌとシェリーは、あっさりと分かってくれた。
そのことがなんとなく、嬉しくもあり誇らしくもある。
「――シルファ、旅行中何かいいことでもあった?」
私の態度に気づいたのか、シェリーが今度はそんなふうに訊いてきた。
「前のあなたと、少し違うわね」
「いいことかどうかは分からないが、いろいろあったのは間違いないな」
本当に、いろいろあったと思う。
出かける前はこんなことになるなんて、自分でも想像もしていなかった。
もう一人ディオンヌの後から来たのは、シェリーだ。
同じ上級傭兵で、ディオンヌを通じて知り合った。
「ずいぶんゆっくりだったわね。もうとっくに、休みは終わってるわよ?」
「ああ。現地で急遽、任務が入ったんだ」
私の答えを聞いて、ディオンヌがうなずいた
「なるほどね。でも考えてみりゃそうよね。シルファのカレシじゃあるまいし、消えたりするわけないものねー」
酷い言いようだが、否定できないところが辛い。
ディオンヌとは対照的に、いつも冷静なシェリーが口を開いた。
「ところで、シルファ。タシュアと別れたって本当かしら?」
言葉の意味が分からず空回りする思考で、なんとか聞き返す。
「……誰が?」
「シルファが」
「……誰と?」
「タシュアと」
余計に分からない。
「……なぜ?」
「わたくしに聞かれても困るわ」
「そ、そうだな。すまない」
何がどうなっているのか私にも分からないのに、シェリーに分かるわけがない。
ただ彼女自身は、何か納得したようだった。
「その反応なら、ただの噂にすぎないってところかしら」
そんな風に訊かれて答える。
「そうだな。別れたつもりはないな」
「ん、それならいいのだけれど。じゃぁ、タシュアが年上金髪美人人妻と不倫しているっていうのも、根も葉もない噂なのね」
今度も思考が空回りしかけたが、少し考えてどうにか理解した。
どうも私が出かけていた間に、かなりややこしいことになっているらしい。
「その人妻に心当たりはあるが……その人は、私とタシュアの依頼人だぞ」
「あらそう、やっぱりね。そんなことだろうと思ったわ」
「え、じゃぁやっぱりあれ、誰かの勘違いだったんだ」
幸いディオンヌとシェリーは、あっさりと分かってくれた。
そのことがなんとなく、嬉しくもあり誇らしくもある。
「――シルファ、旅行中何かいいことでもあった?」
私の態度に気づいたのか、シェリーが今度はそんなふうに訊いてきた。
「前のあなたと、少し違うわね」
「いいことかどうかは分からないが、いろいろあったのは間違いないな」
本当に、いろいろあったと思う。
出かける前はこんなことになるなんて、自分でも想像もしていなかった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
17
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる