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第6章:統治の継続
しおりを挟む午前9時。永田町、衆議院予算委員会室。
今朝0時に「議員ID」を割り当てられた男女が座っていた。
昨日までは学習塾の講師、清掃員、百貨店販売員だった人々だ。
委員長席に座ったのは、前日まで漁港で働いていたという「前田義文」ID。
「本日は、令和16年度一般会計予算案について、質疑を行います……ええと、質問のある方?」
与党議員ID席に座った「佐久間京子」IDが立ち上がる。
「防衛予算について、昨年比で増額と聞いておりますが……その、どの項目が……」
参事官がプロンプターを肩越しに差し出す。
総理大臣IDは、千葉県のバス運転手だったという「山科翔太」ID。
「我が国の基本方針として、この制度によってすべての国民が、政治に直接参加する機会を得られていることを、私は誇りに思います」
誰も拍手しなかった。
午後の審議では、かつての与党議員に対する“裏金供与”の疑惑が取り上げられた。
「昨年末、“滝川幹事長”が、外部業者から見返りとして寄付された1,200万円の処理について、記録には“個人献金”とある。これは明らかに脱法的な処理だ」
官邸では報道官IDが言葉を濁した。
「その記録に不備があることは確認しておりますが……現在のID保持者は当該行為と関係がございません」
SNSは瞬く間に炎上し、主要ニュース番組も特集を組んだ。
証拠が揃うと、国会への証人招致が行われた。
招致された男性は、その日初めて「滝川幹事長」のIDを引き継いだ若年のアルバイト経験者だった。
「私はこのIDを本日初めて受け取った者です。…ただ、制度により責任を負う立場にあると理解しています」
その答弁を最後に、翌日の朝刊は「滝川IDが辞職」を報じた。
実際に辞職届を提出したのは、次にIDを引き継いだ人物だった。
内閣支持率は急落。連日ワイドショーやネットニュースで制度への不信が語られた。
与党幹部のIDが切り替わるたび、対応方針はブレ続けた。
ついには衆議院の解散を決定。
0時に発表された総理大臣IDの声明により、総選挙が正式に決まった。
だが、翌朝そのIDはすでに別人に切り替わっていた。
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